NHK教育テレビの人気番組だった『できるかな』。1970~1990年まで放送され続けた長寿番組で、主演のノッポさんとゴン太くんが、さまざまな素材で工作をしていく内容となっている。『できるかな』を観て育った昭和世代の子どもたちは少なくないはず。
ノッポさんが遺した言葉
そんなノッポさんを演じていた高見のっぽさんが、2022年9月10日に亡くなっていたとの情報が報じられ、多くの人たちが悲しんでいる。そんなノッポさんが遺した言葉が注目されている。
その言葉は、YouTubeに「あの頃小さかった人たちへ 高見のっぽさんからメッセージ」とのタイトルで掲載されており、2023年5月現在、50万再生を突破している。以下は、ノッポさんが動画内で語っている言葉である。
<ノッポさんの言葉>
「子どもって言うと、十把一からげっていうか、ね、ひとまとめに言っちゃうでしょ。ところが、ひとりひとり、とっても賢いんですよ。自分の人生の中で、どの時代が賢くて、鋭くて、いい人だったかというと、私の場合は5歳なんですよ。
5歳は、今の私の80のじいさんよりも、本当に賢くって鋭い一番の時代だから、子どもっていうかたちで、十把一からげにできないんですよ。だから私はその人たちと付き合うときに、「これはきっと私より賢いんじゃないか」と思ってるから、自分の一番の最高の礼儀……、たとえば名前を聞くときだったら、初対面ですよ。「大変恐れ入りますが、あなたのお名前をお聞かせ願えますでしょうか」って言いますからね。自分の小さいお子さんを本当の一人前として扱うように努力しなければなりません。
だから何か命令するときも、相手が小さければ「これをしなさい」なんて言わないほうがいい。「これをしていただきたい」って言う。「切なる母親の願いです」とかってやってごらんなさい。私の母親はやりませんでした。父親は私が生まれたときから尊敬していました。自分よりもこの赤ん坊の方がいい人間だと思ってました。これを一生続けてくれました。私はそんな人間じゃなかったけれど、私はこの父親のそばにいるとき本当に安心してました。ダメなときでもダメとは思わない人がここにいるんですから。こんないいことなかったです。申し訳なく思いながら、でもそれゆえに私は、本当にある意味でこのオヤジがいるときは気楽に過ごせた。一生ね。文字通り、一生ですよ。
母親も別に嫌いじゃないですけど、母親はそうじゃなくて、ガガガガッて厳しかった。でねオヤジは私を買いかぶって買いかぶって死んでいきましたから。それは申し訳なく思っているけど、でも半面、ものすごいありがたいオヤジだったなって、これはあります」
「僕を小さいころに観ていて、今は大きくなって、お父さん、お母さんになっていらっしゃるでしょう。そして小さいお子さんをお持ちでしょう。その小さいお子さんにとってあなたはいいお父さんですか? いいお母さんですか? どうか、いいお父さんお母さんになってください」
尊敬と思いやりの連鎖
子どもを「自分より下で能力が低い」と思っている大人がいるなか、子どもに対して大人やそれ以上に尊敬の念をもって接し続けたノッポさんのお父さん。それが一生続いたというのだから、その気持ちは本物だったのだろう。その思いはノッポさんに伝わり、そしてノッポさんから視聴者に伝わる。まさに尊敬と思いやりの連鎖といえる。
その思いは受け継がれていく
ノッポさんは天国へと旅立ったが、彼の存在は多くの人たちの思い出として残り続けるだろうし、その思いは受け継がれていくだろう。ありがとう、ノッポさん。
※記事画像はフリー素材サイト『写真AC』より