松本人志が、19日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)を卒業した。というより、「自主降板」と言ったほうがいいだろう。ちなみに卒業を決めた理由は、番組内での発言を切り取るネットニュースの乱発によるストレスがあったと話していた。
その席で松本は、「『ワイドナ』のほうが『サンジャポ』(TBS系『サンデー・ジャポン』)よりコア視聴率(13歳~49歳)でダブルスコアで勝っているのに、(ネットニュースでは)ずっと“サンジャポに負けている”と書かれていた」と嘆いていた。
だが彼が言う「コア視聴率」、そして「個人視聴率」が重視されるようになったのは2020年4月からのこと。それ以前は「世帯視聴率」が重要な指標だったため、本当はコアで優勢だったとしても、それを伝える記事の書き方としては、『サンジャポ』のほうが勝っているという表現は決して間違っているわけではない。
また、「ダブルスコアで~」という主張も、もともとあの『ワイドナショー』という枠は、若者が比較的見ていた『笑っていいとも!増刊号』(同系)の枠を譲り受けたもので、下地はあったと言える。対する一方の『サンジャポ』は『サンデーモーニング』のメインであるM3(男性50歳以上)、F3(女性50歳以上)の顧客がそのまま見ていることもあり、すでに『ワイドナ』とは最初からターゲット層が違うため、争う土俵にない。
さて『ワイドナ』に戻る。松本はエンディングで、「『サンジャポ』の皆さん、来週からは(視聴率的に)ボロ勝ちすると思うんで。僕が抜けた『ワイドナショー』は屁みたいな番組」と、痛烈な締め方をしていた。果たしてコア視聴率に変動はあるのか?
レギュラーコメンテーターとして務めて来た松本に異変が生じたのは昨年4月のこと。なんと彼が隔週出演となったのだ。それ以降、彼が不在の週でも世帯・個人ともに変わらないという報道もあったが、それは「含み」をもたせた言い方で、明らかに数字は下がっていた。もちろんコア視聴率も下がっていってはいた。
だが、かといって『サンジャポ』に流れている気配もなかった。つまり極論を言うと、あの時間、今まで松本ありきの『ワイドナ』を見ていた視聴者は、テレビそのものを消してしまっているのだ。そんな「ワイドナ離れ」は今後も続くだろう。
1つ言えるのは、松本人志は『ワイドナショー』へ登板したことで数年、タレント寿命が延びたように思う。『ワイドナ』出演がなければ、若者世代への訴求もないまま終わっていた可能性もあるからだ。
そんな、彼にとっても大切な番組は、その「発言」こそが命だった。何を言うのか自然とネットニュースが取り上げるようになった。そんなネットニュースから番組を知った視聴者もいるだろうし、見始めた人もいるだろう。だがその発言を、ある程度限られた字数で紹介するネットニュースが彼の卒業を早めてしまったのだとしたら、これほど皮肉で哀しいことはない。
いずれにしても、これから同番組は『ワイドナショー』という名を借りた、普通のワイドショーとなり、次第に求心力を失って行くだろう。