人生の結末(2)~福祉施設のある日の光景

  by サイキッカー  Tags :  

前回からの続きで、僕が経験した看取りの風景について色々と。
と言っても、僕が経験したのは就職した年に遭遇したそれしかないので、20年近く前の話になるだろうか。
細かい事は覚えていないのだが、確かその入所者が永くないとの話が出た時点で本来的には病院で対応して貰う予定だったのが、色々な事情があって、その時だけ施設で看取る事になったと記憶している。ここ数日がヤマとの医師の見立てで通常一人の夜勤を二人体勢にして二日目くらいの夜だったと思う。
休日の夜、施設から本人が亡くなったとの連絡を受け、職員全員が集合したのだ。
恥ずかしい話、直接人の死に関わったのはこの時が初めてで、まったく抵抗がなかったと言えば嘘になるが、どう対応していいのかと言う迷いがあったのは確かだ。
いざ遺体と対面すると、「つらいつらい」と過ごしていた日常が嘘の様にとても穏やかな表情であったのに少しだけ安心した。様子を見に来たら既に亡くなっていたそうで、本当に眠るように逝ったと付き添って様子を見ていた寮母が話していた。いわゆる「虫の知らせ」は感じなかったそうだ。
ひとしきり、故人を前に思い出等を話した後、当時の看護師が「送ってやる用意しなくちゃね」と脱脂綿を持って来て遺体の口や鼻の穴に詰め始めたのには焦った。
その後に遺体の浴衣を着せ替える事もやらされた。右前か左前の違いはあったにしろ仕事でやっていた事だったので、意外に違和感はなかったが、「あんた、若いし力あるんだから」と遺体を抱き抱えて、仮通夜する為に集会室へ運ばされたのはエグかった。けして重くはなかったが、いい気持ちはしなかったのは事実だ。不謹慎だが、死体にかんかん踊りさせた落語を思い出してしまった。

それに死後硬直で指を胸の所で組ませられないのには参った。ワカサギを弄っているような感覚だ。
その後、故人の身内が来るまで待機して、解散となったのだが、身内と事務で話していた内容の多くが金銭にまつわる事に終始していた所に現実を見た気がする。
これが僕が関わった、最初で最後の看取りの光景だ。
現在では色々と変わって来ているので、次回はその辺りの事を少しばかり。

 社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネージャー) 介護福祉士の介護三大資格を修得。 敷居の高い、未だに謎のベールに包まれている介護、福祉の世界を身近でわかりやすく伝えたいです。 熱く武道、特撮も語れる空手家でもあります。

ウェブサイト: http://ameblo.jp/psykicker000/entry-11432464122.html

Twitter: psikicker00