『ラヴィット!』火曜日(TBS系)、『今夜くらべてみました』『上田と女が吠える夜』『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)、『ホンマでっか!?TV』『トークィーンズ』(フジテレビ系)……気づけばやたらとテレビで見かける若槻千夏。
彼女の場合、単に「なんとなく人気だから」という業界人にありがちなミーハー起用ではなく、しっかり「あの人でなければならない」という強力な“ご指名”をされてブッキングされている。しかもどの番組も、毎回爪痕をガッツリ残すのではなく、ソフトタッチでありながら、しっかり仕事をしてくれる。制作側の指示をきちんと受け入れつつ、出過ぎた真似はしない。それでいて番組を盛り上げてくれる。インパクト先行のたまに食べたいラーメンではなく、毎日食べても飽きの来ないラーメンといった感じだ。
17歳のデビュー後にバラエティを席巻した後、2006年、突如として活動休止を発表。理由は長年の疲労が蓄積し、体調を崩したから、さらに“おバカキャラ”を求められすぎてテレビを嫌いになったというのもあったようだが、休んだキッカケの1つに、当時全盛を誇っていたベッキーの存在があった。「私はベッキーにはなれない」と敗北感を喫したのだという。
そんな彼女は、もう一度テレビの世界に戻りたいと、2015年の年末に本格復帰する。対してベッキーがスキャンダルに見舞われたのは翌2016年1月のことだ。偶然かもしれないが、何か運命的なものさえ感じてしまう。
いずれにしても若槻にとって、一度、芸能界を“対岸”から見る時間は貴重なものだったはずだ。休んでいた間は1日6時間テレビを見ていたという。ここで自然と、どこにテレビが向かっているか読み切り、業界のポジショニングを見定めるようになったに違いない。
“猿岩石”で人気を博した後、辛酸をなめた有吉弘行にしても、レギュラー10本が一気になくなり、タレント活動から遠ざかったヒロミにしても、やはり自分と、それを取り巻く環境を冷静に見る空白期間は必要なのだろう。
さて、そんな若槻の代名詞が、自身でメモしている“タレント名鑑”だ。MCなど共演者の印象や、何が地雷ポイントなのか、さらには楽屋への挨拶の有無など、収録のたびに事細かく書くそうだ。これらを次の収録に生かすことで、単にテレビマンから信頼を勝ち取るだけではなく、共演者からも「やりやすい」と思ってもらえるようになる。つまり2つの信頼を積み重ねることで、復活したあとも生き残っていると言えよう。
「タレントはいいよなぁ、好き勝手なこと言って、美味しいもの食べて……」と、うらやむ人がいるが、なかなかどうして、それなりに大変な仕事なのだ。