百合の作品は限定された場所だけの存在でなく様々な媒体を通じて手に入るようになりました。
漫画、小説に限らず、演劇や音楽、ゲームやアニメーションなど、多くの場所で私たちはそれを見出すことができます。一方、SNSだけでは、広大な百合関連の作品の情報から発信者のメッセージを隅々まで拾い上げることが困難です。
また、読み手は、多くの話題作に紛れて、『自分にみあった百合』を見逃してしまっている可能性もあります。
『もう少し、届けたい』『もう少し、知りたい』。『ゆりがたり』は、百合の創り手と受け取り手の『もう少し』をつなげるために生まれたシンプルなインタビューマガジンです。とりとめなく話す雰囲気を伝えるためにwebマガジンではなく『文字ラジオ』と称することにしました。
どうぞ、よろしくお願いします。
☆この記事はnoteに掲載していた記事の再掲です。
百合メーカー/フェチの拡散
☆本日は好きなことを、好きなものとか。あとちょっと普段どんなふうに…
「生きてるのかですよね」
☆生きてるかですね(笑) 聞きたいですね。今年に入って『初恋シグナル』と『鎧塚さんをバブらせたい』と『ぼくは、百合なお姉ちゃんを応援しています』と百合メーカーと…百合メーカーは広く拡散されていましたね。
「絵柄を好きって言ってくれる人がいてくれて嬉しいなと…」
☆私もあおと先生の絵を百合メーカーでいじれるのが嬉しくて遊ばせて頂いてます。
「嬉しいです。みんなに喜んでもらえるものを、って思って。最初「Picrew」で百合を作ったら楽しいんじゃないかと思っていたんです。私が描かなくてもいいかな、誰かやるかなと思っていた時に同居人がアイコンメーカーで百合を作ったら面白いんじゃないかと提案してくれて。『それめちゃめちゃ思ってた!』って。『やってみたら』って背中を押してもらえて。丁度『百合姫』の担当さんと打ち合わせする機会があって、『まだ秘密なんですけどそういうことしようかなって思ってます』と伝えたら、その担当さんが『すごく面白いことをやろうとしてませんか、気を楽にしてやられては』と言ってくれて。それが嬉しくて。あ、そうか、気を楽にしてやればいいんだなと。私、力が入ってしまうタイプなので『気合をいれてやるぞ』となってしまう。リラックスするといいかもと言われて、肩の力を抜いて出したら…皆さん喜んでくださって嬉しかったです」
☆私も嬉しかったです。連載をもっているような作家さんがフリー素材を提供してくださるって思わないじゃないですか。もちろんプロで画像メーカーを使ってくださる人もいるかもしれないけれども、まさかあおと先生の百合でやってくださるって…。あおと先生のキャラ造形はめちゃくちゃかわいいと思っています。パーツがひとつひとつこだわりがあってフェチ感があって。バニーちゃんとかほくろとか。
「フェチを感じて頂けるのは嬉しいです」
☆最初百合メーカーがツイッターのタイムラインに流れてきて、やってみようかなと思ったら、絵があおと先生で、こういう試みをやるんだ、楽しそうにやられているなっていう驚きがありました。
「そうですね。完全に趣味の、私が楽しいからやるっていう気持ちでやりました」
☆それがファン的に嬉しいです。良かったですよね、あんなに広まって。
「嬉しかったです。みなさん楽しそうに遊んでくださって。自分では全然想像してなかったパーツの組み合わせを見て、センスがあるな、と」
☆作りこんだ設定を百合メーカーのイラストと一緒に呟いてる方がいますよね。
「そうなんです。面白いなと思って」
☆あれは本当に幸せです。癒されます。
「感無量です、そう言って頂けると。ひとときでも楽しんでもらえたらいいなと思います」
☆今は『スマートフォンで何かやる』っていう感じがあるので、そこでああいうツールをもつ、フリー素材をつくったり、そういうことをやっていく方って増えてると思うんですね。あおと先生のフェティッシュな感覚がマッチしていてありがたいなあと思いました。
『ぼくは、百合なお姉ちゃんを応援しています』/お隣のお姉さんと実のお姉さんが百合!
☆『ぼくは、百合なお姉ちゃんを応援しています』(以下『ぼくゆり』)ですが、いつ頃から立ち上がったんでしょうか。
「『明日、きみに会えたら』(以下『明日きみ』)が終わったあと、次の作品に入る前に担当さんが替わってちょっとバタバタして、インターバルが結構長くあって。どうしよう、と。でも、『ぼくゆり』ではもともと第三者視点の百合を書きたいと思っていて。『ナチュリーズ』に収録されている『ゆりのおねえさん』…あの作品のちゃんとした部分を描きたいなというのがあって。なかなか難しい試みだと言われていたんですが、担当さんの協力もあってこのような形になりました。一年間か一年半くらい前でした」
☆インターバルがあったのは漫画家さんとしては大変だったと思うんです。けど、何となく時代的に色んな百合が入ってきてオッケーな風潮が今はあって、そこに『ぼくゆり』はマッチしてるなって私は思ったんです。昔は第三者視点の百合が新しすぎて難しいとか、読者には早いというのがあって。小さい男の子視点で『ゆりのおねえさん』自体がすごい好きで、いいなと思ったのは普通に街中で暮らしていて…近所にいるお姉さんがいて。小さい男の子だからわからないだろうけれど、その二人が、実はラブラブなんだろうなという。見えない部分を想像させるところがきわどい。もし女の子だったら入ってきて二人に関係してくるかもしれないんですが、男の子だから距離感があって。「街中にいる二人」という感じがすごいいいなと。『ぼくゆり』が始まって、あれをやってくれるんだ! と。直接のお姉ちゃんと隣のお姉さん、めちゃくちゃキュンキュンくるキャラでかわいい。本当にあおと先生の描くキャラはかわいいです。
「嬉しいです、とても」
☆『ぼくゆり』主人公の咲希(さき)と雫(しずく)のキャラが固まるまでのこだわりはありましたか?
「最初、雫のキャラは怖い…というか、すごくむっとしていて、近寄りがたい一匹狼のイメージでした。本心はみんなと仲良くなりたい、でもうまくできなくて、怖がられてしまってどうしよう…みたいなキャラでしたね」
☆今とは逆ですね。どちらかというと今は羊ちゃんみたいな感じですよね。
「ですです。元は上手に意思疎通ができない、コミュニケーションがとれないキャラでした」
☆変化のきっかけはあったんですか?
「当時の担当さんから、もう少し読者の方に応援してもらえるようなキャラクターにした方がいいかもとアドバイスを受けまして。確かに!と思い、今の雫のキャラになりました」
☆咲希ちゃんの魅力はどういったところでしょうか?
「天真爛漫なところですかね。誰とでも仲良くなれるというか…でも、人の気持ちに敏感で、聡いキャラとして描いています。咲希の心情や過去のことなども作中で明かせたらと思います」
☆それはすごく楽しみにしています…!
『初恋シグナル』百合パート “しの&あすか編” ノベライズ/愛をもって描くということ
※収録の当日は、丁度あおと先生が『初恋シグナル』8話の最後のお仕事にあたられていた日でした。
☆ノベライズ、お疲れ様でした。
「お疲れ様でした。一緒にお仕事させて頂いているメンバーの皆さんが大好きで、玉置先生ももちろん、パルソラの岡田さんやfavaryさんも…終わってしまうのが寂しいです」
☆私は初めての共同制作で、しかも挿絵があおと先生で…。岡田さんも百合を好きな方ですが、チーム作業は初めてでfavaryさんからの監修も含め緊張しました。あおと先生は、どうでしたか?
「挿絵のお仕事が初めてだったんですが、岡田さんから『あおと先生の作品が好きなので』とお声をかけて頂いたことが本当に嬉しかったです。お仕事もなくて困っていた時だったので…ご縁があってよかったなと」
☆そうだったんですね。最近私は漫画家さんのお仕事が途切れた瞬間というのが気になるようになっているんです。同人誌で活動されているとか、そういう方もいると思うんですが。漫画が一番好きで漫画をやっていきたいという方が、その間どうしているのか気になって…どうしても本当はそういう人にスポットを当てたほうがいいだろうなというのがあります。
「すごくいい試みだと思います!」
☆『note』で『ゆりがたり』を始めた狙いはそのあたりにもあります。話を戻しますが、『初恋シグナル』については何名かの候補を岡田さんが挙げてくれた時に、『百合姫』で連載されていた方が…難しいだろうなあと思っていたんです。
「どんなお仕事でも『あおと響先生に』って言ってもらえると、ぜひやらせてほしい!と思います。いろんなお仕事をしたいです」
☆そうだったんですね。受けて頂けた時はものすごい嬉しくて、「まじか!」という…報せを受けた時に「まじか」と。私は絶対無理だろうと思っていたんです。今回初めて『初恋シグナル』でがっちりチームを組んで、挿絵を受けて頂いて、やりとりをして監修を受けてっていう…チームプレイじゃないですか。リレーションでやってみた時に、がっつりやっていくなかで信頼関係を育まれてその中にあおと先生が入っているのが私はすごく嬉しくて光栄だなと思って。
「こちらこそ光栄です」
☆『明日きみ』が終わって結構間が空いてどうなったんだろうと思ってたんです。「どうなっているんだろう」という漫画家さんは結構いるんですけれど、その中でもう一回百合漫画を描いてくださらないかなっていう方だったので、自分の仕事相手になるのがびっくりしつつも嬉しいと思って。もしかしたら別のことをしているんじゃないかな? とも思っていたので。担当の岡田さんがつながりをつくってくださって、すごく百合が好きな方なので、よくつなげてくださったみたいな感じで。
「そうなんですよね。結構奇跡ですよね」
☆奇跡ですね。仕事のなかでつながりを続けるってあるんだなと、初めて思えて嬉しかったんです。それまでは記事を書いて出して、これを書かせてくださいっていうことで終わる。作品作りでちゃんとやらせていただくというのは…みんなでひとつのものをつくろうというのは全然違うなという。思い入れも違いますし、その心構えは学ばせて頂いたところがあって。既にあおと先生は連載もされていたし『百合姫』でも何年か携わっていたその経験がプロとして学ぶところがあるだろうなと思ってやっていたんですけれども。『初恋シグナル』で…どうでしたか? やりづらいとかありませんでしたか?
「全然ないですよ。いつも文章頂いてニヤニヤしていました。玉置先生の文章は情景がすごく浮かびやすかったです。こういう表情をしているんだろうなとか、こういう構図で描こうかな、など…色々思い浮かびました。すごく好きな文章です」
☆光栄です、本当に。
「いえいえ」
☆岡田さんも言っていたんですけど、どうしてあおと先生はここまで行間を読めるのかみたいなことを言っていたんです。挿絵を頂いた時によくここまでこの行間を読み取って出してくださるなというのを。あおと先生と決まって、どういう感じでディレクションをしていきたいかという話が出てきて。希望を出させて頂いた時、とにかくあおと先生の漫画は表情がいいので、表情がわかるようにしてくれたらいいなとお話して。でも私なんかがリクエストを出していいのかという気持ちだったんですよ。作品上場面がわかる説明挿絵もいれて頂きつつ、表情がわかるようにして頂ければというお話をしたんです。描いて頂くものがまずカラーじゃないですか。カラーって、こんなにいいものなんだという。頑張って文章を描くとあおと先生のイラストを共有してくれるという本当にご褒美状態で。
「お仕事を受けた当時、”初恋シグナル”という作品をお預かりするという気持ちだったんです。しのとあすかって、人様のキャラクターじゃないですか」
☆そうですね。お預かりしてますね。
「人様の子だから違う観点で愛でられる、違う観点でこの子たちのことを愛せるなって思いながら制作をしているんです。生みの親御さんからお預かりして私なりに解釈をさせて頂いて、それが作品になることは素晴らしいことだと思っていて」
☆私もです。公式の設定があって、そこから外れないようにしのとあすかの新しい魅力を引き出さなきゃという気持ちがあって。半分以上イラストの力もあると思うんですが4話あたりからノベライズの魅力が出るようになったという感触が個人的にあるんです。7話の、あるイラストを見た時に、原作にはない場面だというのもあるんですが、すっっっごくありがたくて…。
「私もその場面はすごく力が入りました。しのが自分達のそういう姿を想像してドキドキするって、こういう感じかなって。あたたかい雰囲気にするか、神秘的な雰囲気にするかと迷った時に、岡田さんにどちらがいいか聞いたら神秘的な方をとってもらったんです」
☆そうだったんですか。
「私もそっちがよかったんです」
☆そうだったんですね。
「そういった意味で、一緒に仕事している方たちと意識が同じ、感じているものが同じだと嬉しいなと思いました。できあがったものを玉置先生に見て頂いて、そういう風に感じて頂けるのは嬉しいです」
☆7話のあのイラストだけ真っ先に岡田さんは共有してきたんですよ(笑)
「嬉しいです…!」
☆あれを見て私もう本当に…ああもう生きていて良かったっていう。本当に神秘的だというのもありますし、聖域というか。原作がすごく気持ちの流れを大事にしながらやっていくじゃないですか。ノベライズはそれをダイジェストでやる感じだったんですよね。別の方のつくったキャラクターを公的にお預かりするのが初めてで、最初何をどうしていいか…というのがあったんです。あおと先生は元々その子たちが身近にいて、その子たちを取り込んで描かれていたという感じですか。
「そうですね。想像力というか、愛をもって描くということが大事だと思うので」
☆すごい伝わってきます、すごくかわいがっているっていうのが。
「難しくなかったです。そういった意識で描くのが新しい試みだったので、楽しかったというのもありますし。どういう風にしようかなぁと毎回楽しみながら試行錯誤していました」
☆すごく伝わってきました。色々な服を着せて頂いたりとか、私も浴衣の場面を要求したりとか(笑) ありがとうございました。
「浴衣は実際、原作の挿絵にないですよね」
☆本当は二人に着せたかったんですけれど、原作にはあすか側が浴衣を着てくる時間がないんですよね。
「でもそれもまたいいなと」
☆わかります。私服と浴衣もまたいいですよね。
「萌えを見出すことが好きなので。私はここが好きだからこういう風に描こう。私が文章で感じたしのとあすかの空気感や距離感を、読者の方に捉えてもらいたいというのが『初恋シグナル』ではいっぱいあったので楽しかったですね」
☆ちょっと大変だったけど楽しかったですね。
※この項のみ文面を一部修正しています。
あおと響先生:作品リスト
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