突然の大雨に困り果てたとき、雨宿りした店の軒先の傘立てがふと目に入ったとしよう。常識がある人ならば「自分も傘を持って出れば良かったな」「どうせ雨宿りするなら傘を売っているコンビニに飛び込めば良かった」と自分の不手際を責めて後悔するだろう。
ところが、驚いたことに世の中には「あ、ここに傘がある。ラッキー」とばかりに持っていってしまう“傘泥棒”が少なからずいるのだという。傘を持っていった経験があるという人は「泥棒なんて人聞きの悪い。ちょっと借りただけ」などと言っていたが、「では返したのか」と問うと返していないという。泥棒じゃないか。
そもそも傘というのは雨が降っているときに必要なものであり、後で返したから良いというものでもない。傘泥棒をされた人はちゃんと傘を持って出たにも関わらずぬれて歩かなければならないという理不尽な目に遭うことになる。それだけでも十分な被害だ。
自分がぬれて歩きたくないと思うのなら、どうして傘の持ち主もぬれて歩きたくないということに思い至らないのか。思い至ったならどうして本来の持ち主が割りを食うことがいかに理不尽かに気づかないのか。バカなのか。バカなんだろうな。
何度か傘泥棒の被害にあった友人は、盗まれてもせめて被害額が最小で済むよう安いビニール傘を使うようになったという。ビニール傘だと尚更軽い気持ちで盗んでいく泥棒が増えそうだけどな、と思ったので名前を書いておくようアドバイスしたが、どれほどの効果があるかは謎だ。
同じようなことで“自転車泥棒”がある。ユニコーンに同名の名曲があるが、そんな素敵な話ではない。こちらは傘と比べて高額であることが大半だし、さらに防犯のために取り付けたチェーンを切ってまで持っていく輩がいるというのだから驚きだ。最初から盗む気マンマンてことだろう。
自転車に乗っている人のほとんどは自転車がないと困るから乗っている。例えば自宅が駅から少し離れているとかバス酔いがひどくて乗れないなどの事情を抱えている。自転車は傘と違って、なくなったからといってコンビニで買うわけにもいかない。
こうした話になると「チェーンひとつ程度で防犯したつもりになっている被害者の自衛意識が足りない」などとトンチンカンなことを言い出す人がいるけれども、違法駐輪していたならいざ知らず、きちんとルールを守って駐輪して防犯のためにチェーンまでつけていた被害者が、何故さらなる意識向上を求められなければならないのだろうか。責められるべきは盗人であって盗まれた側ではないはずだ。
参考までに。
「自転車の盗難…どんな懲罰になりますか?」2007年06月03日『教えて!goo』
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3054185.html
傘泥棒、自転車泥棒、双方に共通しているのは、盗まれた人が理不尽に困るということに思い至らない想像力の欠如と自分さえ良ければいいという自己中心的な性格。どちらも非常に恥ずかしいことだ。
「傘くらい」「ちょっと借りただけ」なんていうのは盗人猛々しい言い逃れに過ぎない。過去にやらかした経験がある人は猛省してほしいものである。
梅雨の時期が迫っている。突然の雨に降られても傘泥棒などしなくて済むよう、かばんに1本折りたたみ傘を入れておく習慣をつけておくことをオススメする。
画像:足成より引用
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