現在、ベーシック・インカム(BI)が話題となっています。2016年6月にスイスでBIに関する国民登場が行われ、否決となり、また2017年1月からはフィンランドで試験的な導入が行われています。スイスでのBIは収入の低い人たちの毎月の収入を毎月約30万円まで保障する制度です(※NHKの報道によるとスイスの物価は高いので、日本の物価に換算すると約15万円程度になるということです)。フィンランドの制度は2年間、失業者2000人に対し毎月約7万円を試験的支給する制度です。上記制度の共通点は富裕層を中心に徴収した税金や年金を廃止した財源を貧困層に分配するというポリシーに基づいていることです。本論ではこのような制度を拠出型BIと定義したいと思います。
拠出型BIと非拠出型BI
私はBIについて上記のような拠出型に加え、将来、非拠出型の制度が可能となるのではないかと考えています。ヒントとなるのは中東カタールでの国民サービスの事例です。カタールは秋田県ほどの国土に約230万人が暮らす国家です。230万人の内、国民は約30万人で、国民の一人当たりのGDPは9万ドルを超え世界トップクラスの裕福な国として知られています。経済の源泉となっているのが、天然資源であり、LNGの輸出量では世界の32%を占めています。このような環境に恵まれ、カタールでは税金が非常に安い(所得税や消費税がないなど)にも関わらず医療費、水道代、電気代、大学までの教育費が無料となっています。つまり、カタールでは天然資源が豊富という恵まれた状況下で非拠出型(かつ現物給付型)の国民サービスを実現しているといえるでしょう。
今後、AI、IOT、ロボット技術を中心にテクノロジーの進化は急速に進み、労働生産性は飛躍的に向上すると考えられています。それはつまり、製造やサービスの労働コストが抑えられ、多くの商品やサービスが一層コモディティ化し安価で供給されることを意味します。例えば、食糧生産は画像解析技術の向上とAI、ロボットを組み合わせることでコストが劇的に下がる可能性があります。水道代、電気代に関しては太陽光や熱発電などのエネルギー技術の革新が期待されています。医療費と教育費に関してはAIやバーチャル技術を取り入れることで基礎的なサービスを無料に近い形で提供できる可能性があります。
将来、労働者の労働時間の短縮と商品とサービスのコモディティ化という社会フェーズに至り、非拠出型のBIが検討されるのではないでしょうか。
【画像】自主撮影