拝啓、「いなべ市」「員弁郡」の教育委員会殿
生徒の立場
たとえば、数学の授業中に、
「いいかい、このBの角はAの2倍なんだ。だから、Aの角をXとおいたら、石川くん、Bはどうなる?」
「えっと、2倍」
「それを、数学の言葉でいうと」
「かける2」
「だから?」
「Xの2倍」
「それを、数学のことばで言うと」
「Xかける2」
「だから?」
「X2]
「でも、文字と数字はどちらを先に書くの?」
「2X」
「そう、正解」
「だから、・・・・」
こんな授業をしていたら、私の経験から分かるのは、他の生徒から苦情が出たり、ご父兄から「石川くんを退塾させてください」と電話が入ったり。言われなくても、成績優秀な子から塾をやめ始める。だから、多くの塾では、授業中に石川くんを指名しなくなる。
無視され続ける石川くんは、塾をやめるだろうが、多くの他の子にやめられるより塾への打撃は少ない。
塾・予備校の立場
ここは三重県の北部なので、熱心な子たちは名古屋の河合塾に通う子もいる。河合塾では、授業中は質問ができないのでチューターが補完することになっている。
地元では、名古屋大学が最高峰なので名大の学生アルバイトがチューターをしていることが多い。でも、私の指導させてもらっている旧帝受験生の子は「あのチューターでは質問に答えてもらえなかった」と言って帰ってくる。
私は、名古屋の7つの大規模予備校や塾で14年間講師をさせてもらったけれど、いつも上級クラスの担当だった。他の先生方は、上級クラスを嫌う方が多かった。質問が難しいのですよね。
「同じ給料なら、少々アホくらいの生徒相手に適当にやった方がラク」と言うのだ。生徒も、旧帝卒くらいでないと先生をバカにしたりするから、「餅は餅屋」なのだ。
だから、そういう大規模塾に行けば石川くんタイプも大丈夫なのだ。
この世は、いろいろ違う人がいる。塾もいろいろある。需要と供給の関係がある限り、様々に流動していくのが生々流転のこの世なのだ。
社会主義が多くの人の支持を得られないのは、全員同じ型に押し込めようとするからだろうと思う。人は、みんな違うから楽しいのだ。私の中学生時代は、男子は全員「丸坊主」を強制された。全員同じ「学生カバン」を強制された。
今の時点では、とんでもない非常識だろう。
同じように、今の時点では皆が従っている「強制クラブ」も「班による指導」も、違い将来「とんでもない非常識」となるに違いない。
いくら、鳥越さんたちが左派教育をめざしても、大多数の日本人はついていかないだろう。
保護者の立場
大学進学率が50%を越えて久しい。生徒の保護者の半数は大卒だ。そのうち、2程度は猛烈に受験勉強をした人たちだ。そういう親は、自分の息子や娘が通う塾で、上記の石川くんのような授業が行われていたら、絶対に許さない。
内職したり、アルバイトしたり、生命保険を解約し、何とか教育費を捻出してみえる保護者が多い。その貴重なお金が、役にも立たない授業に消えたら許せるはずがない。
ここには、エイスウ、秀英、東進など知名度の高い塾があるのだから、真剣な保護者はそちらに行ってもおかしくない。ところが、私の塾のような個人の無名塾が30年間黒字続きという状態だ。
貴重なお金を知名度が高いというだけの理由で支払うほど保護者は甘くないということだ。
アホっぽい生徒ばかりを指導している講師は、どうしてもコスチュームや髪型に目が向く。タブレットを渡しておけば満足する生徒は、ナマの授業も、DVDの授業も、ネットの授業も何も学習効果が変わらないことが分からない。
オモチャで喜ぶ幼児と同じなのだ。
ところが、賢い生徒は、そうはいかない。賢い生徒はボロボロの服を着ている講師でも、話す内容がハイレベルだと喜んでついていく。教室も立派なビルである必要がない。
成績アップの秘密
私は、勉強や添削は寝っ転がってしている。机も要らない。服も要らない。勉強とは、そういうものだろう。集中力だけが全てなのだ。本気で勉強したことがない人に語っても伝わらないが、学食や制服など論外。問題集や参考書もどうでもいい。
集中力、理解力が全てとは、そういうことだ。
語って伝わるのは、本気で勉強している子だけ。勉強の理想的な空間とは、自習室や図書館のアレなのだ。ムリに不良と「班」を組まされたら勉強どころじゃない。
イジメを受けそうなら、クラブをやめる自由もないなんて、生徒は奴隷か。
それに、中学校だけ順位づけをしないママゴト遊びをさせて、高校に行ったら順位を廊下に貼られるなんて、困る。教師の自己満足につきあう余裕はない。自分の学力順位くらい教えてほしい。
とりあえず、
1、「班」の解体。他の県の中学生のように一斉授業にする。
2、強制クラブを自由化。できないなら、弾力的な運用。
3、自分の成績くらい情報開示をしてもらう。でないと、受験校を決められない。
この3点は、緊急に実施してもらいたい。これは、塾生の声の代弁なのだ。
英単語は高校卒までに6000語は覚えなければならない。数学は、2000題は解かないといけない。ノルマは、毎日8語の英単語、数学は毎日、大問を2題か3題解。
それを実行しているのは、2%くらいの子だけだ。大多数は、「クラブで忙しい」「そんな高校生活はイヤだ」と言う。
旧七帝に入学できるのは100万人くらいうちの2%くらいだから、だいたい実行している子と数字が合う。通学で1時間かかる子が、クラブをしながら旧帝に合格なんて、特殊な才能のある子以外はムリ。
ところが、この事実を口にすると反発をくらう。だから、四谷学院のように「55段階をやれば」とか、公文の「やっててよかった」のような耳障りのよいCMばかりを流す。
ここ三重県でも、エイスウが「ハイブリッド授業」と言っている。コンシェルジュが導くそうだ。
私は、どんな職業も会社も違法でなければ存在意義があると思うし、否定する気はない。需要があり、供給がある。経済の法則にすぎない。ただ、教育の法則は経済の法則に反することが多い。
東大や京大が、塾のように誰彼かまわず受け入れるわけがない。必ず、選抜する。それも、激しい選抜だ。少数精鋭でなければ、良い授業はできない。これは、気に入らなくても変えようの無い真実だ。
言っておくが、私は自塾を宣伝するつもりでこれを書いていない。そんなことをしなくても、厳しい生徒や保護者には選んでもらえる。
四日市高校は、データ提供が早いので本年(H28)のものですが、桑名高校と川越高校は昨年度(H27)のデータです。生徒数は年度により差があるので概数です。
○合格者数○ 四日市高校 桑名高校 川越高校 生徒数 合格率
○桑名市○
1, 光陵中学校 16 49 3 180 38%
2, 陵成中学校 17 42 7 200 33%
○いなべ市、員弁郡○
3,員弁中学校 1 15 7 80 29%
4,東員第二中学校 1 19 9 110 26%
5,藤原中学校 2 10 3 60 25%
6,北勢中学校 5 17 6 120 23%
7,東員第一中学校 2 19 5 120 22%
8,大安中学校 4 8 8 140 14%