海や港で、必ずと言っていいほど見かける灯台。もしかして素通りしてない? 実は、日本には約3300基の灯台があるのだが、中にはレジャースポットと言っても過言ではない“そそる”灯台が多数潜んでいるのである。
今回は、灯台の熱烈なファンであり、国内外の灯台を訪れる傍ら、フリーペーパー『灯台どうだい?』の編集長を務める不動まゆうさんに突撃。これからの行楽シーズンにおすすめの灯台を紹介していただいた。交通アクセスが便利なところばかりなので、ぜひ気軽に足を運んでみたい。
直径3.03mの巨大望遠レンズが美しすぎる「犬吠埼灯台」(千葉県)
サスペンスドラマのロケ地としてもお馴染みの「犬吠埼」だが、こちらの灯台はともかくロマンチック。太陽が沈んだ瞬間――、日没とスイッチするように走る線光が、筆舌に尽くしがたいほど美しいとのこと。
また、内部の資料館では国内最大級のレンズが鑑賞できる(上写真/レンズ直径3.03m)。まるでアート作品のような美しさだが、表面がスリット状になっているのは、遠くまで光を飛ばす「超望遠レンズ」を極限まで軽くするための匠の技なのだ。
ちなみに灯台が自動化する前は、「灯台守」という職員が住み込みで灯台を動かしていた。光が届かない悪天候の日などには、ブオォォォーと耳をつんざくような爆音を発する霧笛で合図をしていたそうだ。現在、登録有形文化財として保存されている「霧笛舎」(写真手前)も内部の見学ができる。
また近隣のホテル「太陽の里 別邸『海と森』」では、大浴場や個室の露天風呂からも灯台が望める。月と灯台が織りなすコントラストを眺めつつ、人生を賭けて海を守り続けた灯台守たちの物語にも思いを馳せてみたい。
世界でも珍しい“ホテルに生えた? 灯台 ” 「神戸メリケンパークオリエンタルホテル灯台」(兵庫県)
さて、灯台はどこでしょう?
ホテルの右肩、ロゴの脇に小さく見える……アレです。
「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」14階に、ちょこんと生えたような灯台。どことなくキノコの赤ちゃんを連想させるが、もちろんオブジェなどではなく海上保安庁から認可を受けた公式灯台としてきっちり活躍中。世界でも珍しいホテルに建った灯台なのだ。
もともとは神戸の象徴になるようにと、歴史ある「オリエンタルホテル」の屋上に建てられたものだが、1995年の阪神・淡路大震災でホテルが全壊。しかしその後、姉妹ホテルとして開業予定だったこのホテルと共存する形で息を吹き返すこととなった。同じ階のステーキハウスでは灯台や港を眺めつつ、美食を堪能することができる。
風を切りフェリーで瀬戸内探訪 「男木島灯台」⇔「赤灯台」(香川県)
瀬戸内海のさわやかな風を感じながら、灯台を巡るのもまた一興。香川県の「男木島(おぎしま)灯台」と「赤灯台(正式名称:高松港玉藻防波堤灯台)」なら、フェリーで一度に見学が可能だ。
こちらはフォトスポットとしても魅力的な男木島灯台。
高松湾の赤灯台は、周囲の景観とマッチするように設計された“デザイン灯台”。
ボディがガラスでできているため、夜に姿を現す紅色のライトアップはムード満点だ。ガラス製の灯台は、世界でもここに一つしかないらしい。
日本人が感謝される灯台の数々(台湾)
台湾で使われている灯台には日本人が建てたものが多く、今でも観光に行くと現地の人から「日本人のおかげだよ、ありがとう」と感謝されるそうだ。
こちらの「高雄(カオシュン)灯台」はイギリス人技師が設計し1883年に完成したものだが、後に日本政府によって改修。現在の屋根には風速計があり、漢字で「東西南北」の文字が記されている。灯台業界的には珍しい形なんだそう。
小さな展示室があり、中に入って見学することもできる。さすがにレトロな雰囲気。
スターバックスコーヒーのマグカップにもなっている。
台湾に点在する灯台の地図。数えたら30カ所以上あったが、歴史的な背景もあってそれぞれ個性が豊かそうだ。
灯台の「色」には理由がある
最後に不動さんから教わった、灯台の「色」についてのトリビアをひとつ。
「灯台って白一色が多いと思いますが、あれは暗闇で目立って少しでも船に見つけてもらうためなんです。一方、雪が多い地域は白だと周囲に溶け込んでしまうので、赤白のボーダー模様などにして工夫を凝らしています」
あなたの最寄りの灯台はどこだろうか? 様々な場所に出かけて、各地のデザインを見比べるのも面白いかもしれない。
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※フリーペーパー『灯台どうだい?』は、全国の登れる灯台のほか、海事系博物館やカフェなどにも設置されている。また、灯台ファンの集い「第12回灯台フォーラム2015」は5月30日(土)横浜波止場会館にて開催。両者とも詳しくは「灯台どうだい?」ホームページで
(写真協力:不動まゆうさん)