3月14日のJRグループダイヤ改正により、人気の豪華寝台特急列車が姿を消したり、廃止を免れたものの期間限定での延命だったりと、鉄道ファンは最後の勇壮を写真におさめようと必死のようだ。西の代表格であるトワイライトエクスプレスは3月12日の発車分をもって廃止。東はといえば、定期列車の北斗星が編成を変えて夏ごろまで臨時列車格下げで何とか延命。カシオペアは引き続き臨時列車として運行されるが、夏以降の運転計画は発表されていないので、いずれにせよ機関車けん引の客車寝台特急は遠からず廃止の運命となっているようだ。
上野と札幌を結ぶ寝台特急北斗星とカシオペア。この2つの列車は通常は最新型のEF510形電気機関車が客車をけん引している。しかし、検査が重なる等の理由で機関車が不足し、一時的に旧型のEF81形電気機関車が2日前に代役として上野を出発したから大変だ。2日前に代走で出発したEF81が今度は上野行きで戻ってくるからだ。札幌行は上野発が19時過ぎなので写真を撮影することは難しい。しかし上野行きは首都圏に午前中に到着するので撮影は十分に可能だ。しかも、EF81の中でもお召列車指定機の81号機だから、撮り鉄さんは気が気じゃない。そんな情報を得た著者は、首都圏で気軽に撮影ができる場所として東十条駅付近を教えてもらい、早速出かけた。
雨が降る寒い中で線路沿いに列を作る撮り鉄さんたち。通称”お立ち台”と呼ばれる超有名撮影地のようだ。傘で雨をしのぐ人、レインコート持参で気合を入れて待つ人、雨ざらしでカメラだけをかばう人、様々だが、いかんせん撮影する場所がすでにない。撮り鉄さんが居並ぶ線路わきの道路で、2列目から望遠レンズで先頭を抜くしか手はなさそうだ。
少し遅れてやってきた寝台特急カシオペア。EF81-81号機でピカピカに磨かれている。現在ではお召列車が走るとしても専用の電車があるので出る幕はないのだが、それでも御召し指定機を外されたわけではないので、いつもピカピカだ。
あっという間に通過していったカシオペア。終点の上野はすぐそこだ。
しかし約半数の撮り鉄さんがまだ残っている。今度は寝台特急北斗星がやってくるからだ。こちらは通常のEF510形電気機関車だそうだ。
約1時間後、カシオペア目当ての撮り鉄さんが帰っていったので場所にかなりの余裕ができ、編成全体を撮影することができた。
この北斗星も、3月13日発車分で定期列車としての役目を終え、4月から編成を組み替えて臨時列車として、おそらく最後の務めを果たすことになる。
寝台列車には何度も乗車したが、長い時間をかけて遠くまで走る列車に揺られるのは、毎時300キロを超える新幹線や、LCCが台頭する航空機では到底味わえない”旅情”や”非日常”が確かに存在する。
さまざまな旅人の思いを乗せて走る寝台特急列車。3月14日からは定期列車として走るのは東京と高松・出雲市を結ぶ寝台特急電車のサンライズ瀬戸・出雲だけになる。
電車は加速もよく、スピードも出せるので通勤電車の邪魔にならないばかりでなく、運行も客車列車と比較して楽なのでしばらくは生き残ると思われるが、客車ほどの旅情はないというのが鉄道ファンの意見の大半なようだ。
もし北海道に行く機会があれば、夏までのラストチャンスとなりそうだが、北斗星やカシオペアの寝台券争奪戦に参戦してみてはいかがだろうか。なお、臨時列車となるので時刻表で運転日を確認するのをお忘れなく。寝台券の発売は運転日の1か月前の午前10時からだ。発売から1秒以内にカタがつく、文字通りの”争奪戦”なので諦めたら負け。寝台券争奪戦からすでに旅は始まっている。それも旅の楽しみの一つだ。
※写真はすべて著者が撮影したもの。