何気なく過ごしている毎日にも危険は背中合わせだ。例えば信号が青だから『さぁ渡ろう!』と横断歩道を歩きだしても、脱法ハーブなどを吸引して意識朦朧で運転している車が突進する可能性もある。工事現場の足場が崩れて倒れだすこともある。電車内で若者に注意をしただけで命をも奪われることもあったし、昭和の時代には日本海の海外沿いを歩いていて北朝鮮に拉致され、かの国に強制的に連れ出された悲しい事実もある。
身分証明書を四六時中携帯している人もいれば、今の時代、不況や社会から取り残されてホームレスになってしまって、身分証明書すら携帯できない人もいるだろう。身分証明書は基本的には公的機関が発行したものが身分証明とされるが、パスポートが身分証明になるからと毎度持ち歩く人は少ない。また運転免許書を持ち合わせていない人もいる。健康保険被保険者証も身分証明として通用するが、写真がないため本人確認が即できない。では、身分を証明するものがない場合、もし事件に巻き込まれたらどうすればよいのか?
”指紋”なのだ、人間とサルにしかない指紋がキーになるのである。
『指紋は語る―“指紋の神様”と呼ばれた男の事件簿』 は、警視庁の鑑識課に30年在籍し、有楽町3億円事件、よど号ハイジャック事件、オウム事件などを手掛け、”指紋の神様”と呼ばれた塚本宇兵氏著書の実に興味深い一冊である。
その中に個々の指紋が世界にひとつしかない特徴を活かして、身分証明というか万が一に備えて自己のDNAを犯罪捜査に協力しやすくする方法も記されている。
勿論、そのような危機はない方が良いに決まっている。しかし、物騒な昨今、何が起きるかわからない。だからこそ、ちょっとした道具と短時間で”DNA採取”と言えば大袈裟すぎるが、残す方法があると言う。
用意するもの
・HBのえんぴつ
・紙片
・シール、コーティング用のセロハン
1)紙片に鉛筆の芯を擦りつけ、黒鉛で2センチ角の範囲を塗りつぶす
2)その黒鉛を指先にまんべんなく付着させる
3)指先が黒く汚れたらシールの粘着面に指紋を押捺し、その上にセロハンを貼りつければ完成
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”指紋の神様”の著者は『あとは氏名と生年月日を記入し、用心深い人は。自分の髪の毛を一本抜いて、テープで貼っておきましょう。こうしておけばDNAの捜査も可能です。あとはどなたか、信頼できる人に保管しておいてもらいましょう』とアドバイスされる。
指紋は”終生不変”で、同じものがこの地球には存在しないからこそ、個人識別のこの小さな指紋が我々の生活に活用されることが可能だそうだ。
実行するかしないかは個人の自由だが、知っておくには損がない指紋のありがたい話なのである。