イラク戦争回顧録『ネイビーシールズ最強の狙撃手』がベストセラーとなった事は記憶に新しい。その著者であり”史上最強のスナイパー”と称えられ、敵からは悪魔と恐れられたクリス・カイル氏が殺害されたというショッキングなニュースが伝わってきた。
カイル氏を殺害したのは、イラク従軍経験のある元海兵隊員のエディー・ルース容疑者(25)。ルース容疑者は従軍によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていたとみられる。事件発生の2013年2月3日、カイル氏と友人はルース容疑者を伴いテキサス州の射撃場にPTSDを発症する元軍人を支援する団体の活動の一環として訪れた。カイル氏はルース容疑者に射撃訓練を行わせていたところ、突然ルース容疑者が発砲しカイル氏は帰らぬ人となってしまった。
カイル氏は1999年に海軍に入隊。その後ネイビーシールズチーム3に配属され、スナイパーとして認められた。2003年にイラク戦争が勃発すると2009年までの間シールズの隊員として、4度イラクに派兵。イラクの武装勢力の戦闘員150名以上を殺害。国際テロ組織アルカイダ系の武装組織幹部は当時、カイル氏に多額の懸賞金をかけていたという。正確な狙撃が現地のテロ組織に大打撃を与えた。
退役後は民間軍事会社を立ち上げ民兵や傭兵の養成に尽力。その得た資金の一部を元に退役兵、PTSDに悩む帰還兵を支援するNPO団体『FITCO Cares Foundation』を立ち上げる。社会復帰に向けた活動を精力的に取り組んでいた。アメリカでは帰還兵による凶悪な事件が多発。その影に、PTSDに苦しむ多くの若い兵士の実態があり社会問題となっている。今回の事件は戦争経済に支えられたアメリカという大国の暗部が内部から蝕んでいる事実が垣間見える悲しい事件だ。
※写真引用元:http://tfxamcml.blog.fc2.com/blog-entry-77.html