サンゴに新たな敵が出現
美しい沖縄の海。サンゴと色とりどりの熱帯魚が泳ぐ姿に目を奪われてしまう。2014年3月5日、沖縄海岸国定公園から、新たに慶良間諸島国立公園が指定された。
その理由はケラマブルー”と呼ばれる透明度の高い海やサンゴ礁が高密度に分布していること、ザトウクジラの繁殖地であること…などである。
サンゴ(珊瑚)は、刺胞動物門花虫綱に属する動物(サンゴ虫)のうち固い骨格を発達させる種である。宝石になるものや、サンゴ礁を形成するもの、軟らかなものなどがある。
サンゴはオニヒトデの食害や海水温上昇などによる白化現象で減っている。2000年以降はさまざまな病気の増加もサンゴの減少を加速した。
サンゴに近い仲間のソフトコーラルを大量死させる糸状の細菌シアノバクテリアが繁茂する仕組みを、琉球大学熱帯生物圏研究センターの山城秀之教授らが解明した。
舞台は沖縄本島の西約40㎞にある、慶良間諸島国立公園の中、阿嘉島南端の沖。何とソフトコーラルの中で、小さいエビがバクテリアの塊を育て、その中で生活しながら食べていることがわかった。
サンゴの敵、細菌大量繁茂の謎を解く
研究したのは、沖縄本島の西約40㎞にある座間味村の離島、阿嘉島(あかじま)南端の沖、水深約20mのきれいなサンゴ礁に生息するソフトコーラルの1種、アミメヒラヤギ群体。カラフルなダイダイ色で、ダイバーらに人気がある。その群体の4分の1にシアノバクテリアがいた。この細菌が繁茂して表面を覆うと、アミメヒラヤギは窒息して死んでいく。
米フロリダ半島沖のカリブ海で富栄養化が原因になって、細菌によるソフトコーラルの大量死の報告がある。しかし、沖縄の阿嘉島の海域は栄養塩類の濃度が低くて、流れも速く、水質汚染が原因ではなかった。研究グループはシアノバクテリアの生態を詳しく調べた。細菌の塊の多くは直径数㎝の円柱状からなり、それぞれが体長約3㎝のツノナシテッポウエビの巣になっていた。中に入ったエビは、巣を構成する細菌を食べていた。
細菌は通常、冬に消えていくが、このシアノバクテリアは一年中繁茂していた。共生するツノナシテッポウエビがアミメヒラヤギの枝にシアノバクテリアを結わえて巣を作るため、年中の繁茂を可能にしていた。またシアノバクテリア自身が、アミメヒラヤギの枝にアンカー(くい)を打ち込んでいた。打ち込まれた先端は髪の毛の根のように膨らんでしっかりと固定していることも初めて突き止め、大量繁茂の謎を解いた。
山城秀之教授は「このソフトコーラルを大量死させるシアノバクテリアは阿嘉島沖で15年ほど前に出現し、あちこちでソフトコーラルを腐らして脱落させていく。細菌によるサンゴの死滅が広がっている。よく調べれば、世界のほかのサンゴ礁でも起きている可能性はある。対策は、ダイバーが見つけたら、エビと細菌の塊を取っていくしかないが、それだけでは追いつかない」と話している。(サイエンスポータル 2014/08/18)
サンゴの危機
サンゴの生育環境には悪化がみられている。悪影響を与えている要因としては自然的要因と人為的要因がある。人為的要因としては、生活排水や家畜糞尿の流入、赤土の流出などがある。
自然的要因には、オニヒトデによる食害、近年では熱帯産の巻貝であるヒメシロレイシガイダマシによる食害が知られている。そして、白化現象だ。
沖縄県八重山諸島近海や世界遺産に認定されたサンゴ礁であるオーストラリアのグレートバリアリーフでは海水温の上昇が原因とみられるサンゴの白化現象が発生し、大きな問題となっている。
サンゴは海水温が30度を越すと、サンゴと共生する褐虫藻が減少し、白化現象が発生する。サンゴは、この褐虫藻の光合成に頼ってエネルギーを補給しているが、これが失われるとサンゴは白化し、長期間続くとサンゴは死滅する。
この被害が顕著であった1998年と2007年はマスコミからも大きく取り上げられ、サンゴの危機が全国に報じられた。この海水温上昇の原因は地球温暖化が関係しているとされているが、1998年と2007年は東南アジアからフィリピンの東沖の海水温が上昇するエルニーニョ現象が発生しており、八重山諸島近海の海水温も平年より高い状態であり、30度を越す海域も例年以上に広かったことも原因として挙げられている。
また、日焼け止めに含まれるパラベンなどの成分が引き金となり低濃度でもサンゴの白化を誘発することが確かめられており、また、藍藻に有害なウイルスの増殖の誘発が同時に確認されているという。 しかし、サンゴの専門家であるRobert van Woesikによれば、この研究は実際の環境を反映しておらず、サンゴは白化を起こすほどの濃度にさらされないだろうとしている。(Wikipedia)
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