太陽嵐(solar storm)とは、太陽で非常に大規模な太陽フレアが発生した際に太陽風が爆発的に放出され、それに含まれる電磁波・粒子線・粒子などが、地球上や地球近傍の人工衛星等に甚大な被害をもたらす現象である。
フレアが発生すると、多くのX線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子が発生する。またフレアに伴い、太陽コロナ中の物質が惑星間空間に放出される(コロナル・マス・エジェクション(CME))ことが多い。高エネルギー荷電粒子が地球に到達すると、デリンジャー現象、磁気嵐、オーロラ発生の要因となる。
もし、巨大フレアが発生したらどうなるのだろうか?過去にあった地上の電波に影響をあたえたり、大停電が起きたりする以上のことが起きる可能性はあるのだろうか?
1989年にカナダで起こった太陽嵐では、600万人が停電の影響を受けた。フレアにより発生したオーロラ内部ではプラズマと磁場との相互作用で大電流が流れ、それによって生じた磁力によって変圧器のコイルに大きな誘導電流が生じる。その結果、変圧器が壊れて停電になったのだ。
フレアが生じると、約8分で可視光とX線、その後30分から2日で高エネルギー粒子線(放射線)、2~3日後にプラズマ(CME)が地球に届く。予測は、過去のデータから法則性を見つけて発生の確率を算出していくが、その規模や、方向、時期を予測することは簡単ではない。X線の強度や太陽表面の変化を正確に捉えることで、フレアによる地球への被害に備えることができる。
大停電を起こす規模の巨大フレアは1年に1度の頻度で発生するが、多くは地球とは異なる方向で起こるため、その規模や、方向、時期を予測することは簡単ではない。2012年に起きたフレアが、地球のそばをかすめた。もしこれが直撃したら、現代文明は破壊され、18世紀に後退させるほどの威力があるものだったと、米航空宇宙局(NASA)が7月23日に発表している。
NASAによると、2012年7月23日に地球の軌道上を駆け抜けた太陽風は、過去150年間で最も強力なものだった。しかし、何が起きているかを理解している人はほとんどいなかったという。
「もしも、(この太陽風の)発生がほんの1週間前にずれていたら、地球は集中砲火を浴びていただろう」と、米コロラド大学(University of Colorado)大気宇宙物理学研究所(Laboratory for Atmospheric and Space Physics、LASP)のダニエル・ベーカー(Daniel Baker)教授は語る。
その太陽風は、これまで知られている中で最大規模だった1859年の「キャリントン・イベント(Carrington Event)」と呼ばれる宇宙嵐に匹敵するものだったことが分かった。