ブラック企業対策について、徹底した取り締まりがなされていないと批判が集まっていた、厚生労働省が動いたようだ。
7月22日の朝日新聞の報道によると、厚生労働省は、国税庁の納税データを利用して、法令で定められている厚生年金未加入の法人を割り出して指導を強化すると明言した。極めて画期的であり、かつ異例の措置である。
本紙においても、厚生年金への加入義務がありながら、加入を怠るブラック企業の実態をレポートした。
詳細は、ブラック企業で働いていたら日本年金機構から差し押さえ予告が来た をご覧いただきたい。
記事をご覧いただくとおわかりいただけると思うが、企業側が、法令を無視して、意図的に厚生年金に加入しなかった場合、年金事務所が取り締まることが難しい法令のジレンマがある。国民も、日本年金機構の従事者も困惑しているのが現状だ。
こういった法令の隙間をついて、ブラック企業は、本来支払うべき社会保険料を滞納したり、責任を回避しようとする。
今回、厚生労働省が、国税庁のデータを利用することに踏み切ったのは、法令を回避するブラック企業の捕捉のためである。
国税庁は、納税の違法滞納者や、租税回避について捜索能力が高く、かつ、確実に取り締まった上で、未納付の税金を回収するメソッドを持ち合わせている。そのことをブラック企業も熟知していて、納税だけはきちんと行うケースが多い。
ところが、監督官庁が捜査能力が弱い労災保険、雇用保険、厚生年金、健康保険については、企業の加入義務の回避、保険料負担を回避しようとするケースがとみに増している。
労働関係・年金関連の監督官庁は、これらの情報を把握しづらい。加えて、告発を受けても取り締まりの手が回らないほどマンパワーが不足している現状がある。
今回、異例とも言える国税庁との連携を厚生労働省がとったということは、法令で義務づけられている働く人の保険の加入の指導の強化、保険料の適切な納付を徹底的に厳しくするということの現れである。今回の措置で、かなりの問題が解決に導かれるだろう。
国税庁のデータを利用すれば、所得税から正確に保険料が計算できるから、未納や、労働者から徴収した保険料の着服などといった違法行為について、企業側は厳しい措置を求められる。また、ブラック企業問題で大きな問題とされてきた、賃金の未払いについても、国税庁から客観的な情報が提出される以上、ブラック企業は不正を行うのが、困難になるだろう。
いすれにせよ、働く人の間に秩序が戻る日が近づいたと考えてよいが、依然として我々も、法令に違反する企業から被害を受けないように留意することが極めて重要だ。