CIAの未完の対テロ心理作戦『デビルズ・アイズ』。その”悪魔”の作戦の全貌とは

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子供の頃に慣れ親しんだものや怖がったものは強いイメージを伴って成長した時の人格形成に影響を与える。例えば、家族が私のいたずらやわがままを諫めるため、私は子供の頃にラフカディオ・ハーン/小泉八雲の『耳なし芳一』をことあるごとにおどろおどろしく聴かされた。何か悪いことをしたり、わがままを言うと、母親が物語を語りだし、「芳一…芳一…」と芳一を呼ぶ霊のまねをして私の耳を掴むのだった。そのため、小さい頃から怪談が苦手だった私は、大きくなってもホラーやオカルトに強くなることはなかった。

この芳一のように子供の頃に嫌悪感を抱いたものは成長してもなかなか消えない。 従って、この心理を有効に利用すればものごとを有利に進めることもできるだろう。

それを作戦として思いついたのが他でもないアメリカの『アメリカ合衆国中央情報局』、つまり『CIA』である。アメリカの『Washington Post』によれば、この情報機関は2005年にこのような心理を逆手に取った対テロ作戦に使おうと考えていたらしい。その作戦のコードネームは『デビルズ・アイズ』。デビルズ・アイズ ─『悪魔の目』作戦だ。このような名前をつけるのだからとても恐ろしい作戦に違いない。いったいどのような作戦だったのか?

その計画とはなんと当時のイスラム過激派組織『アル・カイーダ』の司令官『オサマ・ビン・ラディン』のアクションフィギュアを作って、子供達にばらまくというものだった。しかしながら、聞いただけではそんなに恐ろしい作戦には聞こえない。むしろ子供達にアクション・フィギュアを配るだなんて夢のある話ではないだろうか。

いや、待て。CIAが仕掛けた作戦だからそんなかわいい計画のわけがない。きっと人形の中にハイテクなチップが入っていて、子供達の脳に何らかの影響を与える仕掛けが仕掛けられているのでは?

実は何を隠そう、このビン・ラディンは顔がスターウォーズに出てきた暗黒卿『ダース・モール』にトランスフォームするのだ!どんなふうになるのかは記事の終わりに掲載したリンク先(1)で確認できる。当然であるがこれはダース・モールを意識しているわけではなく、あくまで”悪魔に変身するビン・ラディン”ということをご理解頂きたい。CIAはこのおもしろいおどろおどろしいアクション・フィギュアを子供達に渡して”ビン・ラディン=悪魔”というイメージを幼い頃からその子やその家族に刷り込もうと画策していたらしい。ところが、記事によれば計画自体が中止になってしまったらしい。そのため、このとき生産されたビン・ラディン・アクション・フィギュアは結局、3体しか存在していないそうだ。

なぜ計画を断念せざるをえなかったのか。(1)のCIAのスポークスマンによれば「このフィギュアのサンプルをプレゼンしたら、CIAがこの計画を続けることを拒否し、これらのビン・ラディン・フィギュアを配ることも生産することもしなくなった」からだそうだ。CIAの上層部をも恐れさせるとはまさに悪魔の所行だと言わざるをえない。皮肉なことにプレゼンの段階で”悪魔の目”が光る結果となってしまった。

ちなみに今サンプルはどうなっているのかというと、このビン・ラディン・フィギュアは少なくともCIAの本部に一体あるとWashington Postは述べている。あと一体はシンガポールのフィギュア収集家Jing Yang氏の手元にあると、オランダのオンライン新聞『Volkskrant』紙が伝えている(2)。

イスラム関係のニュースでいうと、今日は二つ大きな出来事があった。1つはイラクで過激派が『イスラム国』の独立を宣言したこと。2つめは、パキスタンでイスラム過激派を掃討する作戦が展開されたということだ。残りの1体のビン・ラディン人形はきっと、亡きアラブ人司令官の代わりに変わりゆくイスラム世界を眺め続けているに違いない。”悪魔の目”を光らせて。

 

参考文献:

(1)Washington Post『CIA hatched plan to make demon toy to counter Osama bin Ladin

(2)Volkskrant.nl『Duivelse Osama bin Laden-pop moest kinderen bang maken

せっしーと申します。海外のへんぴなところのニュースを拾い読みするのが好きです。また、言葉の勉強を趣味としていて、同時に語学書のレビューもしています。 語学書のレビューはこちらから:http://houtobyoudou713.wix.com/kotobakoarchive アメブロでもブログしています(語学、哲学中心):http://profile.ameba.jp/rafgeymirid/

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