無残に壊されてしまった「浅草の大仏」こと聖観音菩薩坐像(台東区登載文化財)。ビニールシートが被せられている(撮影・筆者)
お堂の仏像が無くなってしまった出世地蔵尊(撮影・筆者)
同じく商徳地蔵尊も破壊された(撮影・筆者)
三体あった内、真ん中の仏像が破壊された子育地蔵尊(撮影・筆者)
破壊前の出世地蔵尊像(浅草大百科より http://www.asakusa.gr.jp/spot/spot2_07.html)
全く罰当たりな話である。浅草寺で11日未明、サウジアラビア人の国費留学生が暴れ、台東区文化財の浅草の大仏こと「銅製聖観音菩薩坐像」など4体が破壊されるというショッキングな事件が発生した。容疑者は直後に逮捕されたが、境内には破壊されてビニールシートを被せられた仏像や、主を失ったお堂が並び、参拝者からは「とんでもないことだ」「宗教が絡むと恐ろしい」と、口々に憤りや悲しみの声が上がっている。尚、本堂(観音堂)内などの仏像は無事であった。
NHKニュースによると、
11日未明、東京・浅草の浅草寺で境内の仏像4体を壊したとして、サウジアラビア人の留学生の男が器物損壊の疑いで警視庁に逮捕されました。
逮捕されたのは、川崎市に住む慶応大学の大学院生で、サウジアラビア人のモハマド・アブドゥラ・サード容疑者(31)です。
警視庁によりますと、サード容疑者は11日午前0時半前から1時ごろまでの間、東京・浅草の浅草寺で、境内に置かれた仏像4体を台座から落として壊したとして器物損壊の疑いが持たれています。(NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20140611/k10015153801000.htmlより)
「浅草の大仏」こと聖観音菩薩坐像、石像の地蔵菩薩像が被害に。
浅草寺によると、被害にあった仏像は以下の4体。
1、聖観音菩薩坐像(小沼長政ら作、孝山義道寄進、享保5年[西暦1720年]完成、台東区登載文化財)
2、出世地蔵尊半跏像(年代不明)
3、商徳地蔵尊坐像(年代不明)
4、子育地蔵尊立像3体のうち1体(年代不明)
いずれも、再建できるかどうかは現在調査中であるという。
破壊された仏像の中でも、「聖観音菩薩坐像」はネット上では「浅草の大仏」といわれており、ひそかなブームとなっている大仏巡りのファンに人気がある、2メートル近い立派なものであった。製作年もハッキリわかっている貴重な仏像である。浅草寺には大仏といわれる「丈六仏(じょうろくぶつ、人間より巨大)」は4体あるが、今回被害にあったのはそのうちの1体。寺によると、「浅草寺は関東大震災や東京大空襲で被害を受けているので、(旧国宝の観音堂は空襲で焼失)、残っている仏像はどれも貴重なもの」だという。事実、都内23区にある江戸時代の大仏となると、浅草寺以外には天王寺の釈迦如来座像(天王寺大仏)くらいしかない。他の像は焼失後などに再興したものが多いのである。
記者が取材に浅草寺を訪れた所、参拝客からは口々に、
「宗教がからむと恐ろしいよね。(破壊したのは)国費留学生だっていうじゃない…」
「とんでもないことだ。いつもお参りしているのに」との憤りと恐怖の声が上がっていた。
容疑者の動機は明らかではない。容疑者は「ほかの寺でも仏像を壊したことがある」と供述している(NHKニュースより)。
ネット上では、イスラム急進派(過激派)の大仏破壊との関連性を指摘する声もある。2012年には、急進派のイスラム指導者のモーガン・ゴハリ氏がエジプトの民間テレビ局の番組で、「崇拝されている、あるいは崇拝されている疑いのある偶像、地球上で1人でも崇拝者がいる偶像は、破壊する必要がある」(http://www.cnn.co.jp/world/35024363.html)という主張を行っている。ゴハリ氏はタリバンの大仏破壊にも加わっていたという。現時点ではサード容疑者と急進派の主張との関係は明らかではない。警察が動機を調べている最中である。
いずれにせよ、元々日本の文化を学ぶために留学したのに、日本の古くからの文化財でもあり、信仰の対象でも有る大仏を破壊するようなことは、どう考えてもひどい話ではないだろうか?
(画像は筆者撮影及び、浅草大百科より http://www.asakusa.gr.jp/spot/spot2_07.html、BSフジ「古寺名刹こころの百景」番組webページより http://www.bsfuji.tv/meisatsu/bn/40_1004.html)