NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公・黒田官兵衛。その黒田官兵衛を祀った神社が福岡県にはあります。
よく知られているのは福岡市にある光雲神社(福岡市中央区西公園13-1)でしょうか。黒田官兵衛と長政親子を祀り(「光雲」の名前は二人の戒名から採ったそうです)、境内には『黒田節』で有名な母里太兵衛の銅像もあります。また福岡市で行われている官兵衛ツアーの訪問地の一つとなっています。
今回紹介するのは、福岡県北九州市八幡西区の黒崎地区にある春日神社(北九州市八幡西区藤田1-10-44)です。光雲神社よりは知名度は劣りますが、江戸時代に黒田家ゆかりの人間が黒田親子を祀ったという大変由緒のある神社です。
黒崎地区はJR黒崎駅を中心として発展した、工業および商業地区で、産業用ロボットで有名な安川電機の本社があることでも知られています。
江戸時代の初期には筑前六端城の一つである黒崎城が置かれて、黒田三家老の一人井上周防之房(九郎右衛門。大河の『軍師官兵衛』では高橋一生さんが演じておられます。)がこの地を治めました。 また江戸時代を通じて長崎街道の筑前六宿の一番東の黒崎宿として栄えた宿場町でもありました。(黒崎湊からは大坂行きの船も出ていたと言います。)
春日神社は黒崎宿の中心、長崎街道が直角に折れ曲がった場所の低い丘の上に鎮座しています。(その丘は日吉神社が祀られていたことから、昔は『比叡山』と呼ばれていたこともあったようです。)
八幡の歴史を記した『八幡市史』によりますと、以前はここから山手に入った鳥野という場所にあり、『鳥野春日神社』と呼ばれていたようです。(朝廷からも位階をもらうほどの神社だったとか。)
中世には、この地域を支配していた麻生氏(麻生太郎財務大臣はこの麻生氏の血を引いているという説もあるようですが、正確なところは不明です)が、藤原氏を先祖としていたことから(藤原氏の氏神は奈良の春日大社)この春日神社を篤く信仰していました。
関が原の戦いで功績のあった黒田長政が筑前国に領地を与えられると、黒崎には井上之房が入り、筑前黒田藩の東の守りとして黒崎城を築き、また黒崎の街を整備しました。この時、井上之房は鳥野にあった春日神社を現在の場所に移転して黒崎の守り神としました。
井上之房は寛永年間(1624年~1645年)、春日神社に藩祖である黒田長政を合祀しました。(『相殿』とありますので、春日の神様と一緒に本殿に祀られたのだと思います。)
寛永年間といえば、黒田藩を揺るがせた『黒田騒動』の起こった時期です。『黒田騒動』は藩主黒田忠之(筑前黒田藩二代・黒田長政の息子で官兵衛の孫)が幕府に対して謀反を企んでいるとして、家老の栗山大膳(栗山備後利安の息子)が幕府に訴えた御家騒動です。『黒田騒動』で井上之房は黒田藩の代表として、栗山大膳と江戸で対決しました。その結果、黒田忠之に謀反の疑いなしとして黒田藩は存続を許されました。
おそらく井上之房は黒田藩の安泰を願い、春日神社に藩祖の黒田長政を祀ったのでしょう。こうして春日神社は『黒田大明神』とも呼ばれるようになりました。
長政の父親である官兵衛が春日神社に祀られたのは、長政が祀られてからしばらく後のことで、寛延年間(1748年~1750年)のことだそうです。筑前黒田藩の第6代藩主・黒田継高が命じて長政の父親である官兵衛も合祀しました。黒田継高は、官兵衛の本名である孝高の「高」を名前に入れただけあって、官兵衛に対する尊敬の念が強かったのだと思われます。
その後、文政12年(1829年)には、黒田官兵衛・長政に仕えた功臣、いわゆる『黒田二十四騎』の掛け軸が春日神社に納められました。この黒田二十四騎の掛け軸には、肖像画の上に「国祖黒田大明神二十四騎・井上周防之房神霊」などと書かれており、神様として祀られたことがわかります。つまりこの春日神社は、黒田官兵衛・長政親子だけでなく、黒田二十四騎も祀られている日本で唯一の神社なのです。
そんなこともあって、黒田藩の藩主は参勤交代の途中、必ず春日神社に参拝したとのことです。
このように由緒正しい神社なのですが、春日神社があまり知られているとは言えません。(余談ですが、北九州市内に勤めている私の義兄も「官兵衛を祀っている神社が黒崎にあるとは今年初めて知った」と言っていたぐらいですから…)
黒田二十四騎画像が公開されていた今年のお正月の三が日こそ参拝者で賑わっていましたが、基本的には地元の方だけが参拝する、静かな地域の守り神という感じの神社です。
でも、黒田官兵衛・長政親子と黒田二十四騎を御祭神として祀る由緒のある神社であり、本殿の左手にある社務所では黒田官兵衛のお守りが授与されています。ぜひとも歴史好きの方に参拝していただき、黒田家の歴史に思いを馳せてほしいものです。
福岡県おすすめ観光情報・春日神社
http://fukuokakanbe.jp/info/?id=38