2026年2月14日、武蔵野公会堂で開催された「第4回アニムサ祭」にて、『機動警察パトレイバー EZY』第1話「トレンドは#第二小隊」がついにお披露目された。
上映後のトークライブには出渕裕監督、J.C.STAFFの松倉友二チーフプロデューサー、そして新生特車二課第二小隊から久我十和役・上坂すみれさん、天鳥桔平役・戸谷菊之介さんが登壇。
1988年のOVA第1話から38年——あの特車二課第二小隊が、令和の世に新たな物語を刻み始めた瞬間を、ファン歴38年の担当ライターがこの目で見届けてきた。
『機動警察パトレイバー』NEW OVAシリーズからセレクション上映も
「機動警察パトレイバー EZY&SELECTIONS アニメ上映会&トークライブ」は2部構成で開催され、13:00スタートの第1部では、当日はセレクション上映として旧作『機動警察パトレイバー』NEW OVAシリーズ第3話「史上最大の決戦」が上映されたほか、『機動警察パトレイバー EZY』第1話「トレンドは#第二小隊」の最速上映が行われた。上映後のトークライブには出渕裕監督、久我十和役・上坂すみれさん、天鳥桔平役・戸谷菊之介さんが登壇。
続く15:00からの第2部では、セレクション上映として旧作『機動警察パトレイバー』NEW OVAシリーズ第12話「二人の軽井沢」を上映。第1部に続き『機動警察パトレイバー EZY』第1話「トレンドは#第二小隊」の上映が行われたほか、トークライブには出渕裕監督、上坂すみれさん、戸谷菊之介さんに加え、J.C.STAFFの松倉友二チーフプロデューサーも登壇し、『機動警察パトレイバー EZY』の制作秘話が語られた。
1部・2部ともに好評を博した旧作のセレクション上映について、選出を担当した出渕監督はトークライブで「(前提として)アクションと『パトレイバー』だからこそ出来るお話を選んだ」と語り、1部で上映された「史上最大の決戦」は「グリフォン(ライバル機体)が登場するスタンダードなアクションもの」として選出されたとのこと。
第2部で上映された「二人の軽井沢」については「好きだから」とストレートな理由を語り、会場を笑いの渦に巻き込んだ。当初はシリーズで初めて出渕監督が脚本を担当したNEW OVAシリーズ第14話「雪のロンド」が候補として挙がっていたが、「自分で脚本と絵コンテを担当したものは外そう」ということで、後藤隊長役の大林隆介さんと南雲隊長役の榊原良子さんの二人芝居が多くのファンを魅了した「二人の軽井沢」を選んだと語り、ファンの共感を呼んだ。
実はこの「二人の軽井沢」は映像の完成前にセリフを収録し、収録したセリフに合わせて映像を制作するプレスコ方式で制作されており、シリーズでも異色な作品となっている。
出渕監督が「あの作品はプレスコじゃないと録れないですよ。声が裏返っているところとか、被っているところとか」と、制作過程について解説すると上坂さんと戸谷さんからは感嘆の声が。
シリーズのファンを公言してきた上坂さんは南雲隊長役の榊原さんの演技について「めちゃくちゃ可愛い!」と想いを語り、「後藤隊長が好き」と語る戸谷さんからは「(大林さんは)本当に素敵な演技をされますよね」と、あらためて後藤隊長の魅力を語ってくれた。
『機動警察パトレイバー EZY』第1話の内容は? 新旧ファンが楽しめる理由(ネタバレあり)
※以下、作品の内容に関わる記述がございます。
多くのファンが待ち望んでいた『機動警察パトレイバー EZY』第1話「トレンドは#第二小隊」の気になる内容は、クリスマスの吉祥寺を舞台に商店街の老人たちが巻き起こすドタバタ劇に巻き込まれた新生第二小隊の活躍を描いたストーリー。
出渕監督が「いい意味で既視感のある」と語る『EZY』。第1話における新生第二小隊の活躍のあちこちに、旧シリーズが持つ新しくも懐かしさを感じさせる東京の町並みや、メンバーたちが持つ個性の輝きを感じることが出来た。
往年のファンはもちろん、本作で初めて『機動警察パトレイバー』の世界に触れる新たなファンにもシリーズの魅力を存分に味わってもらえるのではないかと思える内容に加え、サプライズとして旧作から整備班のシバ・シゲオが歳を重ねた姿で登場!
『機動警察パトレイバー EZY』の舞台となる2033年の特車二課でシゲさんがどんなポジションにいるのかは、5月の公開をお楽しみに!
第1話上映後のトークライブで上坂さんはご自身が演じる久我十和について「(最初は旧シリーズの)野明さんの後継者みたいなキャラかなと思っていたら、性格に太田さんを感じて(笑)。1話で使ってもらえるかわからないけど『こっちは警察だぞ!警察!』というアドリブを入れたんですけど、使ってもらえて嬉しかったです」と語り、「前のキャラに寄せて演じているというわけではないんですけど、どのキャラにも元祖第二小隊のキャラクターたちが持つイズムが感じられてファンとしても嬉しいです」とシリーズへの想いを熱く語ってくれた。
一方、十和とコンビを組む桔平役の戸谷さんはオーディションの段階で第二小隊のメンバーたちがどんな人生を過ごし、第二小隊に入隊してきたのかなど、詳細な設定が作られていたことに驚いたとのこと。これまでのシリーズではメンバーの入隊から物語がスタートしてきただけに、新生第二小隊のメンバーたちがどんな過程で入隊してきたのかは気になるところ。
出渕監督からは、膨大な設定資料は主にシリーズ構成の伊藤和典さんが中心になって作り上げられたことが語られ、『機動警察パトレイバー EZY』の公開前にも関わらず、膨大な資料をもとに「続編を作る気はある」と続編への意欲も語られ、会場から大きな拍手が送られた。
『機動警察パトレイバーREBOOT』が原型? 新生第二小隊のデザイン秘話
『機動警察パトレイバー』のコミックを担当された漫画家のゆうきまさみさんによるアイデアメモからスタートした『パトレイバー』。
ゆうきさんのアイデアメモを目にした出渕さんがアニメ化に向けて動きだし、やがてキャラクターデザイナーの高田明美さん、脚本家の伊藤和典さん、1988年スタートの初期OVAシリーズ『アーリーデイズ』(1~6話)で監督を務めた押井守さんが加わり、原作者集団・ヘッドギアが誕生。以降、38年に渡り様々なメディアでの展開が続き、ついに新たなアニメシリーズがスタートする。
トークライブの冒頭では、ヘッドギアのメンバーから伊藤和典さんと押井守さんからのメッセージが寄せられ、戸谷さんと上坂さんがメッセージを代読した。
【脚本・シリーズ構成:伊藤和典さん】
『パトレイバー EZY』はTVシリーズからNEW OVAへの時間線上にある話です。
30年の時を経て、あいかわらずドタバタしている隊員たちに懐かしさや親しみ。あらたな面白みなどを感じていただければ幸いです。
私としては、アーリーデイズから劇場版へと流れる別の時間線を統合できないものか、という想いもあったりするのですが…… そういうの、いかがですか?
【押井守さん】
だいたい想像がつくような気がするんだけど…
ちょっとだけ期待しています。
ブッちゃん頑張れ!
以上です(笑)
押井守さんのコメントを代読した上坂さんはネットでまことしやかにささやかれている『上坂すみれの別名が押井守』という説に触れて、会場の笑いを誘いつつも、MCを担当したアニメライターの小林治さんから押井さんが監督を務めた2014年スタートの実写版『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』公開時に行われた出渕さんと押井さんの長時間におよんだトークライブの様子も語られた。
実は『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』よりも先に始動していたという『EZY』。
松倉さんによると「かなりの難産だった」とのこと。これまで監督が2回も交代しており、最終的に松倉さんから出渕さんに「この企画はキーマンになる人がいないとまとまらない」と監督就任を打診。出渕監督体制のもと、ついに完成へと至ったとのこと。
新生第二小隊については、キャラクターのベースとして、2016年に『日本アニメ(ーター)見本市』のEXTRAとして公開された『機動警察パトレイバーREBOOT』がデザイン元になっているとのことで、『REBOOT』に登場した1号機の搭乗者の男性隊員が桔平の、1号機バックアップの女性隊員が十和のデザイン元になっているとのこと。『日本アニメ(ーター)見本市』では全てのキャラクターを山寺宏一さんと林原めぐみさんが演じられていたため、『REBOOT』でも1号機の搭乗者を山寺さんが、バックアップを林原さんがそれぞれ演じられた他、女性の隊長も林原さんが演じられた。
林原さんが演じられた女性隊長がデザイン元になっていることもあり、『EZY』でも第二小隊隊長の佐伯貴美香を林原さんが演じられているが、実は林原さんは旧シリーズにテレビレポーターの桜山桃子役で出演されていた。
出渕さんは『EZY』の中で、佐伯貴美香が「昔、テレビで活躍していたレポーターの声に似てますよね」と言われるシーンを考えていたそうだが、これは林原さんに却下されてしまったとのこと。
紆余曲折を経て、制作された『EZY』。
制作は、出渕さんとは、劇場版3作目の『WXIII 機動警察パトレイバー』で総監督を務められた高山文彦さんを介して、古くからの付き合いだという松倉さんが所属するJ.C.STAFF。
J.C.STAFFのハイクオリティなCGは新たなイングラムはもちろん、指揮車やレイバーキャリアなどのメカにとどまらず、なんと第1話に登場する吉祥寺の町並みもCGで再現されているとのこと。
パトレイバーの醍醐味とも言える新しくもどこか懐かしい東京の町並みを最新のCGで描きながらも、セル画で描かれていた旧シリーズの質感さえも感じさせる技術は往年のファンも驚愕の出来となっていた。
『機動警察パトレイバー EZY』続編はある? 出渕裕監督が意欲を語る
1部、2部ともに上映会とトークライブで2時間近くの大ボリュームで実施された「機動警察パトレイバー EZY&SELECTIONS アニメ上映会&トークライブ」。
第2部のラストで出渕監督は「『パトレイバー』らしさって何だろうって考えた時、リアルさも大事なんですけど、初心に返って考えてみると楽しさこそが主軸だった」と語り、シリーズの展開については「『パトレイバー』は常に今の10年後を描く意識で制作している。旧作のキャラクターもリアルタイムでそれだけ歳を重ねていると思っていただけると……それ以上は言えません(笑)」と旧作のキャラクターたちが『EZY』に登場することについて含みを持たせた。
十和役の上坂さんは、シリーズのファンとしてあらためて熱い想いを語りつつ「『EZY』をきっかけに過去作にハマっていただけたら嬉しいなぁと思いますし、いろんな人が見てくれたらグッズがたくさん出ますし(笑)。そして、私はグッズを買い、コスプレ衣装を買い、新たな展開へと繋がるのではないかと思います」と締めくくった。
出渕監督から、あくまで個人の想いとしつつも続編の制作に関して意欲的なコメントも飛び出したトークライブ。
松倉さんからは「実現のためにはみなさんの並々ならぬ応援が必要」とも語られたが、往年のファンはもちろん、『EZY』で『パトレイバー』に触れる新たなファンの力も結集して、末永いシリーズ展開が実現されることを祈っている。
© HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
(執筆者:斎藤ゆうすけ/90年代のアニメとゲームを愛するライター。系放送作家&シナリオライターとしても活動。ゲームやアニメ、小説や漫画原作などシナリオの企画・制作も多数担当。専門学校でメディア論やシナリオ講座の講義も。https://x.com/saito_you)

