このところニュースの経済面を騒がせている仮想通貨『ビットコイン』。ビットコイン取引サイトでは、わずか2カ月あまりで取引価格が10倍以上に急騰し、時価総額にして1兆5000億円にも達した。
10月からのビットコイン相場を引っ張ってきたのは中国の個人投資家たち。10月14日にネットサービス大手の『百度』がビットコイン決済に対応することを発表して以来、投機熱が加熱。テレビや新聞でも「ビットコインで家が建った」という億万長者の誕生が報じられるほど異常な盛り上がりを見せ、世界で流通するビットコインの3分の1以上が中国経由で売買されるようになっていると観測されていた。
ところが、この3日間で状況は一変。12月5日に1ビットコイン(以下BTC)=1240ドルの高値をつけた後、取引価格が急落し、7日午後には一時1BTC=576ドルの最安値を付けた。わずか3日間のうちに半額以下になってしまったというわけだ。
この暴落の引き金を引いたのは、中国の中央銀行である中国人民銀行が「ビットコインは通貨として市場で流通・使用することはできない」との通知を発したことと、それを受けて『百度』がビットコインによる決済の停止を発表したことだ。当局に冷水をぶっかけられた中国人投機家たちがいっせいに投げ売りを始め、ビットコイン相場の暴落を招いた。中国人が主導してきたビットコインバブルが弾けたのだ。
ビットコインには価値を裏付けるものがないため、もともと本質的に不安定な仮想通貨ではあった。また、暗号通貨であるビットコインは利用者の追跡が難しく、海外への違法な送金や脱税、犯罪組織の資金洗浄に利用されているという指摘もかねてより繰り返されてきた。共産党政府と人民元を信用していない中流層以上の中国人にとって、ビットコインへの投資は“リスクヘッジ”の意味もあったことだろう。しかし、共産党政府がそのような抜け道を容認する期間はごく短かった。対する中国人民の逃げ足の速さも素早かった。さすが「朝令暮改」「上に政策あれば下に対策あり」の成句が生まれた国だけのことはある。
7日17時頃の、世界最大のビットコイン取引サイトのチャートと板の模様。為替というよりも典型的な仕手株の崩壊チャートになっている。数千万円分の“爆弾”が次々に落ちてきて、阿鼻叫喚の様相であった。24時間市場が開いていて値幅制限もないため、資金の逃げ足も速いのだ。最近あちこちで買い煽りをしていたのがいったいどんな連中だったのかも気になるところ。