ライター・B級フード研究家のノジーマこと野島慎一郎です。食べるのも好きですが、飲み会も大好きです。
昨年も11月から12月にかけて、連日のように忘年会とかこつけて飲み歩いていました。
そんなたくさんの飲み会の中でも、特に印象に残ったのは、お酒大好き芸人の武井志門さん(元デスペラード)と行った東京・立石での昼飲みでした。
伝説のもつ焼き屋・立石「宇ち多゛」
武井さんは下町の出身ということもあって、立石には頻繁に飲みに行っているそう。武井さんのYouTubeやSNSの投稿を見ていても、立石の話題は頻繁に登場します。
その中でも20年以上通い続けているというのが、伝説のもつ焼き屋とも称される「宇ち多゛(うちだ)」という店。
「宇ち多゛(うちだ)」は昭和21年に創業した老舗で、平日でも開店前から2時間並ぶことも珍しくないという超絶人気店なのです。
もうその佇まいからして歴史と風格が感じられるし、名店のオーラをビンビン放っているのですが、その長い歴史の中で培われた独自のルールや文化が存在。その攻略難易度はラーメン二郎よりも圧倒的に高く、前情報なしではおそらく注文をすることはおろか、店内に足を踏み入れることさえできないかもしれません。
「宇ち多゛」の主なルールと注文方法
・入店前の飲酒は厳禁。その日は入店禁止となる
・店頭や店内での待ち合わせは厳禁
・全席禁煙
・カバンは下ろしてから入店すること
・スーツケースの持ち込み禁止
・店内での会話禁止(小さな声は可)
・長時間のスマホ操作、読書は厳禁
・料理以外の写真撮影は厳禁
・注文時に「すいません」と話しかけてはいけない
・ある程度の時間が経過したら退店すること(長くても50分)
一部はローカルルールというか、暗黙の了解的なことも含まれていますが、これだけでも相当厳しいことが伝わるかと思います。正直ビビる。
並びがすごいから待ち時間に缶ビールをプシュッ、なんてことをしてしまったら即ゲームセットですよ。そんなの、知らずに行ってたら絶対やっちゃうもんなあ……。
しかも、料理の注文方法もまた難しい。
店内にあるメニューはこの1枚だけ。看板商品のもつ焼きが2本で250円なことはわかりやすいですが、どんな部位があるのかは一切書かれていないのです。
部位については武井さんがYouTubeにまとめていた「タケモン的『宇ち多゛』マニュアル」がとてもわかりやすくて大変助かりました。
こちらの画像が「宇ち多゛」にある部位と、その味付けと焼き方の種類。こちらを組み合わせ「カシラタレヨクヤキ」といった具合に注文をします。ラーメン二郎の「ニンニクヤサイアブラマシマシ」といった感じの“コール”とそっくり。
ただし、二郎では「全部普通で」と言っても通りますが、「宇ち多゛」では仕組みを知らないとそもそも注文ができないので何も食べられません。これは似て非なるもの……!
2時間半待って「宇ち多゛」店内へ!
そんな前情報にビビりつつ、ついに「宇ち多゛」に行ってきたわけです。当日は平日だったのに、集合時間は開店2時間前の12時! しかもすでに長蛇の列! みんなちゃんと仕事してるんでしょうか。
さらにこの日は仕込みが遅れたらしく、開店時間は14時半に変更。寒さに耐えながら2時間半待ち続け、ギリギリで開店と同時に店内に入ることができました。うしろにはまだ並んでいたので、きっと入店まで3時間以上待った人もいたはず……!
席について瓶ビールで労をねぎらいつつ、最初に食べたのは「シンキ(オス)」と呼ばれるコブクロとテッポウのセット。こちらは希少部位の一種で、いつも早い段階で完売することが多いそう。しかもこの日は先着順で残念ながらありつけなかった「ツル」「ホネ」といった希少部位もあるのだといいます。
▲超希少部位「ツル」の写真。武井志門さん提供
つまり、希少部位を確実に食べるには開店と同時に入店する必要があり、そのためには平日でも2時間前後並ばないといけないということ。いやはや、本当にすごい世界だ……!
こちらの「タンナマ(アカイトコ・オス)」もまた希少部位。ボイルされたタンに醤油とお酢をかけて提供されるのですが、ムッチリとしながらも柔らかく、肉々しいのにサッパリとした絶妙な味わい。なんだコレと思いながらもそのウマさに心を掴まれ、「宇ち多゛」ワールドに引き込まれていきます。
オーダーは武井さんに完全に委ね、僕は次から次へと提供されてくる串をウマいウマいと食べるだけなのですが、どの串もウマいだけでなく、サイズがドデカい!
これはいろいろ食べたいなら絶対に1人よりも複数人で行くべきですね。外で待っている間に会話もできるし、トイレに行ったりもできるし、快適な要素も増えるはず。
焼酎+うめシロップのうめ割りもスゴイ
ある程度食べ進めたところで、飲み物を瓶ビールから「宇ち多゛」名物のうめ割りへと切り替えてみました。
うめ割りは焼酎を注いだグラスにうめシロップを入れてくれるというものなのですが、注文すると焼酎を卓上でほぼグラスいっぱいまでドバドバ注いでくれます。これ、うめシロップが入る隙間なんてないのでは……??
なんて思っていたら、容赦なくうめシロップも投入!
こうして表面張力と受け皿に甘えたうめ割りのできあがり。こんな割り方をしてるから実質ほとんど焼酎をストレートで飲んでいるようなものなんだけど、うめシロップも濃厚だから、濃縮された梅酒のような味わいで意外にも飲みやすい……!
しかもシロップの甘味の中に梅の酸味もほのかに感じられてサッパリ。この味が「宇ち多゛」のパワフルな串と見事にマッチ! いかん、これは食うのも飲むのもどんどん加速してしまう……!!
一糸乱れぬ連携プレイも見事すぎる!
その後もうめ割りをパートナーに迎えていろいろな串や、野菜が一切入っていないもつ煮込み(これもウマい!)などをいただきましたが、飲み食いしながら店内を眺めていると、厳しいとされている店内のルールもすべて計算されたものであることがわかってきます。
例えば、店内で静かにしなければいけないのは注文の声を通りやすくするためだし、「すいません」と呼びかけると怒られるのも注文にかかる時間を短縮するため。そのすべてのルールが店内の回転率を上げて、お客さんに手早く美味しい串を提供するということに繋がっているのです。
お客さんとスタッフが必要最小限のやり取りで、料理を提供したりされたりしている光景はもはや芸術の域。スタッフが職人なら、お客さんも職人だ!
一糸乱れぬ連携プレイも見事すぎる!
そんな雰囲気にうっとりしつつも、あれこれつまんでいたら入店から40分近く経過。「宇ち多゛」での楽しい時間も終わりが近づいてきました。40分と聞くと短いような気がしますが、料理は提供が速いし、酒は濃いのでバッチリ満足!
ちなみに個人的にMVPをあげたい串は2種類。ひとつは「アブラタレヨクヤキ」。ジューシーな脂身に濃厚なタレがよく絡み、めちゃくちゃコッテリしているところを炭火でこんがり焼き上げた香ばしさで引き締め。まろやかだけどほろ苦いようなバランスが絶品でした!
もうひとつは「シロタレヨクヤキ」。これもやっぱりタレの甘味と香ばしさのバランスが完璧。焦がしすぎだろってくらいの焼きっぷりがたまりませんね。メリハリが効いてめちゃくちゃウマいです。
もちろんこのほかにも串は美味しいものばかりだったし、「これ飲み過ぎたらヤバいだろうな〜」なんて思いながら飲むうめ割りも最高。店内の連携プレイも感動モノだし、最後にうめ割りをハーフで注文したら普通になみなみと注いでくれるようなところもたまりませんでした。
▲これがうめ割りのハーフ(笑)
長時間並ぶのは大変だけど、ぜひまた行きたい名店ですね! ごちそうさまでした!

