アイスマン(Iceman)というと、1991年にアルプスにあるイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷(海抜3210メートル)の氷河で見つかった、約5300年前の男性のミイラの愛称である。エッツィともよばれる。
長らく彼の死亡の原因は専門家の間でも様々な説が唱えられた。凍死説が有力であったが、2001年に放射線科医パウル・ゴストナー博士によるX線撮影調査で左肩に矢尻が見つかり、これが死因である可能性が高まった。ただし、死体の解剖分析は極めて貴重な資料を損傷するとして許可されないため実証することが難しかった。
2007年にスイス・チューリヒ大などの研究チームが行ったコンピューター断層撮影装置により、動脈付近の傷が詳細に分析され、動脈損傷による失血死であったことが実証された。右眼窩に骨にまで至る裂傷が認められ、更に後頭部に即死に至る量の脳内出血の痕跡があり、これは彼を殺害した者が彼に止めを刺すべく、矢を受けて倒れた彼の後頭部を石などの鈍器で殴ったと推測できる。