内戦状態にあるシリアから、またしても衝撃的な動画がネット上にアップされた。例によって反体制派の兵士たちが「アッラーフ・アクバル!」と連呼しながら空に向かって射撃を繰り返しているのだが、彼らが標的にしているのはなんとパラシュートで降下中のパイロット。今月16日にトルコ空軍によって撃墜されたシリア軍のMi-17ヘリコプターから脱出したパイロットと見られるが、これはジュネーヴ条約第42条(遭難航空機から降下する者の保護)に対する明確な違反行為である。この時の命中弾によるものかどうかは不明だが、パイロットは反体制派によって殺害されている。
興味深いのは、反体制派兵士が“西側の武器”を使用していること。中東地域の紛争といえばカラシニコフ系小銃やドラグノフ狙撃銃など、いわゆる“東側の武器”が定番だが、この動画では『ゴルゴ13』でおなじみのM16(AR-15)系ライフルにスコープを搭載した狙撃銃を使用しているのだ。西側と東側の武器では弾薬の規格が違い、戦場で融通が効かないことから、ひとつの軍の中で併用されることはまれ。シリア軍はロシアから購入した武器を制式採用しているが、西側兵器を制式採用したという話は聞いたことがない。つまり、この西側狙撃銃は国外から流入してきている可能性が高い。アメリカのCIAが反体制派に武器の供給を開始したとの報道もあるので、米英からの支援ルートが開通しているのは間違いないだろう。
政権側にも反体制派にも正義はなし 終わりの見えないシリア内戦
欧米各国は、アサド政権が化学兵器を使用したと非難して反体制派への支援を進めているが、自由シリア軍をはじめとする反体制派も、この動画にあるように非人道的な行為を繰り返しているのが現実だ。さらに問題なのは、アル・カーイダなどのイスラム過激派の外国人兵士たちが続々と参戦してきていることだ。彼らはシリアにイスラム主義国家を打ち立てるためにはテロも辞さないという“ならず者”集団であり、キリスト教徒(シリア人口のおよそ10%)や政権を支持する一般市民へも攻撃を加えている。
そのため、当初は共闘関係にあった自由シリア軍(主に政権軍から離反したシリア人兵士で構成)とイスラム過激派との間では内紛も発生しており、現在のシリアは「シリア政府軍(世俗派)」「シリア人反体制派(世俗派)」「外国人反体制派(イスラム過激派)」の3勢力、さらにそれに北部クルド人勢力を加えた4勢力が終わりの見えない泥沼の戦いを展開している。
動画(LiveLeak)
Pilots of the downed chopper become target practise
http://www.liveleak.com/view?i=fe5_1379358778
画像:LiveLeakより