3DS値下げでも株価下落が止まらない任天堂の今後

  by 坂井・ボーノ・哲也  Tags :  

任天堂の株価の下落が止まらない。任天堂は先日、携帯型ゲーム機『3DS』の定価を2万5000円から一気に1万5000円にまで下げることを発表し、世間を驚かせた。そして新定価での発売日には、家電量販店に『3DS』を求めて行列が出来るニュースが話題になったが、それでも市場の見方は厳しいままだ。

そんな中、ブルームバーグによると、アメリカの投資家から、任天堂はアップルの『iOS』やグーグルの『Android』などのスマートフォン・プラットフォームに進出すべき、との圧力が高まっているという。確かに『マリオ』『ポケモン』シリーズなど、過去のゲームを提供するだけでも、いりなり収入の大きな柱のひとつとなりうる、大いなる遺産を任天堂は持っている。しかし、任天堂の岩田稔社長は彼が社長である限り、自前のプラットフォーム以外にゲームを提供する予定はないという。

ご存じの通り、アップルのiPhoneをはじめとするスマートフォンが、携帯型ゲーム機の市場を脅かしつつある。スマートフォンのゲームは、値段の安さや操作性などから、ゲーム一本一本を比較すると、まだまだ、携帯型ゲーム機のゲームのレベルには及ばないが、それでも単純ながらも通信機能を活かしたゲームが続々と登場している。そして、それらのゲームは、コア・ゲーマーではないライト・ユーザーのニーズに合致している。思い起こしてみると、『3DS』の前モデル『ニンテンドーDS』は、普段ゲームをやらない様なライトユーザーを取り込んで大いに成功を収めた。そうしたライト・ユーザーの支持なしに『3DS』の成功は望めない。しかし、そのライト・ユーザーをまるで『ニンテンドーDS』の時の様にスマートフォン・プラットフォームが奪っていっている。

今、任天堂は正念場にあると思う。『3DS』も『すれ違い通信』や『いつの間にテレビ』『ニンテンドービデオ』などWi-Fiによる通信機能で盛り上げようとしているが、やはり今の時代の携帯機に求められるのは、”いつでも”通信状態にあること。現状のWi-Fi環境ではそれは難しいため、結局、昔ながらの、ゲーム自体の魅力でハードを買ってもらう方法でハードの普及を目指すしかない。またスマートフォン・プラットフォームへのゲームの提供の可能性も限りなく低いだろう。それは任天堂ファンにとって、任天堂のひとつの敗北を大きく印象づけてしまうし、何より自前のプラットフォームへの打撃として跳ね返ってくる。

本体の値段も下げ、今、任天堂にこれ以上打つ手はない様に思われる。今年の11月に『スーパーマリオ3Dランド』、そして12月に『マリオカート7』が発売される。目立った大作ソフトが発売されない11月までにどれだけ『3DS』が普及するか。そして、ふたつの期待の大作の売れ行き。これらが任天堂、そして携帯ゲーム機の未来を大きく左右するターニング・ポイントになることは間違いない。

参考サイト:Mario Pressured to Jump to IPhone as Nintendo Wii, 3DS Slump – Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/2011-08-10/mario-pressured-to-jump-to-iphone-as-nintendo-wii-3ds-slump.html

画像:任天堂公式サイト

ウェブ・トレンドをやぶにらみしながらも、ほぼ脊髄反射的にリブログを繰り返すタンブリスト。現在、ウェブライターにありがちなオタクなイメージを払拭すべく、足繁くバッティングセンター、市民プールに通う。肉体的な成果はまだなし。

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