真夏の甲子園の季節。
特に野球が好き、というわけではなく、野球を熱心に1回から見続ける、ということへの理解は正直言って低い。
それでも、プロ野球と高校野球、1試合の持つ意味合いが、それぞれどれほどに違うのか、ということについてはよく考える。
1試合での勝利がすべてである高校野球。問答無用に「負けたら終わり」の甲子園。とにかく、懸命さが痛いほどに熱い。
あの決勝戦
さて、最近とみに話題の楽天・田中将大投手(24)。なんと開幕16連勝を記録し(平成25年8月9日時点)、いまや日本野球界を代表するエースなのだという。
しかし、彼を見るたびに、どうしても思い出すのは、日ハムの斎藤佑樹投手。ハンカチ王子だ。
あの伝説の甲子園決勝戦。早稲田実業高校のエースとして、決勝で駒大苫小牧高校と対戦。対する投手は田中将大だった。
すでにハンカチ王子として注目を集め、マスコミに取り上げられていた斎藤佑樹は確かにさわやかだった。汗にまみれ、砂埃に汚れて当然の野球部員のはずが、なぜかすっきりとした顔ですずしげに汗をふいていた。
そしてあの決勝戦。延長の末に決着がつかず、37年ぶりの引き分け、再決戦というドラマチックな展開。
おもしろかった。
「僕が楽天を強くする」
その後、結局優勝したのは斎藤率いる早実。そしてマー君(田中)はプロ入りし、斎藤は大学進学を選んだ。
そのときのマー君のコメントが印象深い。
当時楽天は最下位が定位置の球団。しかし、彼は「僕が楽天を強くするので」と言って、堂々と球団入り。私は、一気に彼を好きになった。
せっかく指名を受けたのに「○○(球団)でないと嫌なんです」と、指名を断ってまで特定球団にこだわるケースを時折見る。マー君を見てごらん!こんなに潔い。
つまり、自分の実力を信じ、自信があればどこでも構わないということなのだ。
大切なのは野球をすること、だったはず。私はマー君に心のなかで喝采を送っていた。
マー君とハンカチ王子の分かれ道
そして今となっては楽天は優勝争い常連チームとなり、マー君は球団を代表する投手。
本当にすごい。
ただ、感嘆する。彼の今までの努力やチームの勝敗などには詳しくないけれども、入団時のあの決意は知っている。
その若い自信と努力、そして運とがうまい具合に絡まってつながって、ここまでやってきたのだ。
そして、マー君の活躍とあわせてどうしてもピックアップされてしまう斎藤投手。「持っている男」だったはずのハンカチ王子が、このように2軍で苦しむようになるとは…本当に人生何がどうなるかわからない。
確かに彼は、何年か前にはマー君より上のほうでキラキラ輝いていたはずなのだから。
そもそもの実力が違ったという話もあるが、本当にそうなのだろうか。
あのとき、同じマウンドに立ちまっすぐに対峙した彼ら。
その後、いろいろな選択が重なり合ってつながりあって、今の2人の位置へ導いていったのだ。