にしおかすみこ インタビュー「家族のことは、きれいごとだけではない」最新刊『ポンコツ一家2年目』に込めた想い

  by ときたたかし  Tags :  

お笑い芸人のにしおかすみこさんが、認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との日々を記した書籍、『ポンコツ一家2年目』を刊行しました。

タイトルどおり家族との同居から2年目を描いた待望の2作目は、連載15編に書きおろし4編、番外編1編とボリュームアップした単行本に!

にしおかさんに最新刊に込めた想いを聞きました!

●この書籍の内容は「FRaU web」で連載されたものだそうですが、その連載では一年前に家庭で起こったことを書かれているそうですね。

そうです。2021年の9月に「FRaU web」にて連載をスタートさせていただきました。毎月20日公開で、今も続いています。ざっくりですが、書籍の1冊目が実家に戻ったばかりの2020~2021年のお話。2冊目が2021~2022年。そしてweb連載の最新は2023年が中心です。たくさん笑っていただきたいと思って書いているので、どのエピソードから読んでも大丈夫です。箸休めになったら嬉しいです。

●今回の本書の中には「この連載で初めて、私は一線を越えた」とありました。家族について書くということに葛藤もあるわけですね。

あります。家族をネタに切り売りするということですから。まだ生きている家族の個人情報をどんな権利があって、私は世の中に出すのだろうと思います。尊厳もあります。家族が生活しづらくなるのも嫌です。わたしもポンコツなので、どこまで書くことが正解なのか、ラインが曖昧になってしまうことが多々あります。それでもわたしなりに後悔のないよう、ひとつひとつ考えながら書いています。

●もともと書くことがお好きだそうですね。家族のことを題材に本格的に書くことに向き合おうと思ったきっかけは何でしたか?

いくつかあるのですが、ひとつは生活費を稼がなくてはと思ったことです。書くことだけで食べてはいけませんが、少しでも仕事の幅を広げたいです。あとは好きなことを、今、しようと思いました。母と生活していると頭と体の両方が元気というのは、私自身いつまで続くのかわからないなあと。意外とそう長くはないのかもしれない。私は、今元気だし、書くことが好きだし、じゃあ今やろうと行動に移しました。あとは母姉父の誰から、どう倒れていくかわかりませんが、それを見守るとしたら、家でできる仕事があるといいなと思いました。書くことならPCがあればできるので。あとはやっぱり私が書いたものを読んで、特に悩んでらっしゃる方や疲れている方に笑っていただきたいなあと思いました。

●家族のことがみなさんに読まれて共感を誘ったり、さまざまな反響を集めているわけですが、実際に連載がスタートした時、手応えと言いますか、何か想うことはありましたか?

たくさんの方々に「笑った」とか「泣いた」「感動した」というコメントやお声をいただけて、私のほうが元気をもらってしまっています。第1回めの連載がスタートするときは公開寸前まで悩みました。家族のことを『ポンコツ』と表現していいのかと。私は自分の家族を愛を持ってそう書きますが、もし認知症の方、障がいのある方、見守るご家族の方々が自身のことをポンコツと思ってしまったらどうしよう。誰にも傷ついて欲しくないです。ただ私の書くことはきれいごとではないです。それに盛りたくもないです。ウチの家族が誤解されるのも嫌ですし、認知症の方、障がいのある方が、こんな言動をとるんだと間違った捉え方をされたくないです。その妥当な線が私の中で『ポンコツ』でした。皆さんのあたたかい反響にホッとしています。

●改めて読者のみなさん、ファンのみなさんへメッセージをお願いいたします。

今わたしはたまたま実家にいますが、それが良いとも悪いとも思っていないです。家庭環境は皆それぞれです。ご自身が一生懸命に考えて出した選択ですから。遠くから見守るのも、施設にお願いするのも、全部捨てて逃げるのも選択肢のひとつだと思っています。とにかく自分ファーストで。まず自分が元気で幸せじゃないと、誰も幸せにできないと私は思います。どうかご自身を大切にされてください。

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo