触媒に使われるパラジウムというレアメタルは、地金の価格が1kgで100万円以上もする。石油化学製品の製造工程で重要な水素化反応を進める触媒材料として使われているが、高価なことから、安くて反応効率のいい触媒材料の開発が求められていた。
理研とカナダ・マギル大学の共同研究グループは、パラジウムの代替となる触媒材料として、価格が1万分の1の「鉄」に注目した。効率のいい鉄触媒とするために、水や有機溶媒をスポンジのように吸収する小さな球状の不溶性樹脂に、ナノ粒子の鉄を付着する手法を採用した。
開発した鉄触媒を使って水素化反応をさせたところ、従来法の数百分の1という時間の1分以内で反応が進み、石油化学製品の原料物質として広く利用されているアルカンが効率良く生成された。また、鉄触媒はこれまで問題とされていた酸素や水による触媒活性の低下がなく、さらにエタノールやエタノール・水混合溶媒などの毒性の低いアルコールを反応溶媒として用いることで、安全性が高まる可能性も見いだした。