誰か考察して! お弁当箱開封 →物理法則を無視したいなり寿司が混入 →なぜ? 青柳碧人の実話ミステリー

みなさま、物理法則をガン無視した不思議な体験をしたことはありますか?

私は自分がちょいちょい「アレ? 物理法則おかしくない? 記憶違いかな? でもそれにしてはなんか変だよな……」という経験をすることもあり、そういう話を聞いたり考察したりするのが大好きです。

先日、『むかしむかしあるところに、死体がありました。』 『浜村渚の計算ノート』 『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』『あかがみんは脱出できない(原作)』など大人気作品を多数執筆しているミステリー作家の青柳碧人(あおやぎあいと)先生から聞いた実話ミステリーがとても興味深かったのでご紹介します。

みなさまも一緒にレッツ考察!

物理法則を無視して時空を超えるお稲荷さん

青柳碧人は作家として独り立ちできるようになったある春の時期、早稲田大学の後輩から東京六大学野球の観戦に誘われた。

観戦の前日、青柳は家の冷蔵庫の中で食べきれずに半玉余ってしまっていたキャベツを見つけて、「そうだ、焼きそばを作ろう。そして明日野球観戦中に皆で食べよう」と思い、深夜にスーパーで具材を買い、お肉、キャベツ、そして油揚げを具にした焼きそばを作った。

当日その焼きそばを後輩たちにふるまうと、「先輩美味しいですね!」とみんな喜んで食べた。

特に「油揚げが美味しいですね!!」と好評だった。

しかし焼きそばの具に油揚げというのは珍しく、後輩の1人が「先輩の家では油揚げを入れるのが定番なんですか?」と尋ねた。

青柳は「違う違う。いつもは入れないよ。いやぁ、俺もなんでか分かんないんだけど昨日買って入れたんだよ」と答え、「なんで油揚げなんか入れたんだろ?」と自分でも不思議に思った。

その会話を聞いていた当時青柳と付き合っていた彼女が突然、「あーそうね、油揚げはそういうことあるよね」と言った。

「??? 何の話だ?」と青柳は思い、どういうことか彼女に聞くと、どうやら彼女の実家では、軽くだが、稲荷信仰をしているらしい。

そして「(青柳が焼きそばに油揚げを入れたくなったのは)私のせいだよ。たまに油揚げを食べなきゃいけない時があるの」と言う。

青柳は「何を言ってるんだこの子は……」と思ったものの、「まぁでも稲荷信仰をしていたら油揚げを食べなきゃいけない時もあるのかな」と、この時は軽く聞き流して終わった。

その後青柳と彼女は結婚し、男の子にも恵まれた。

青柳の息子は何事もなく健やかに成長し、小学校に入学し、2年生に進級する新学期に、新しいクラスのみんなでピクニックに行くという催しがあった。

ピクニック当日、青柳の妻はお弁当を作り息子に持たせて送り出した。

息子が帰宅すると妻は「お弁当どうだった?」と聞いた。

すると息子は「(量が)多かったよぉ。特にご飯の量が多いよぉ」と答えた。

妻はここでおかしな点に気づく。息子はご飯よりもパンが好きなため、このとき持たせたお弁当はサンドイッチで、ご飯類ではない。

「え? ご飯ものなんて入れてないよ? 誰かのお弁当を間違えて食べてしまったのかしら!?」と妻は焦り、急いで息子のリュックからお弁当のきんちゃく袋を取り出し、中を開けて確認した。

きんちゃく袋を開けるとまず見慣れない子ども用のフォークが目に入った。次いでハインツの小袋ケチャップとクシャクシャに丸められたサランラップが出てきた。

サランラップにはご飯粒がついていた。

さらにサランラップをよく見ると汁が付着していた。どうやらいなり寿司を包んでいたもののようだ。

これを見た妻は「誰かのお弁当を食べちゃってる……」と確信し、すぐに息子のクラスLINEで「すみません、うちの子どもがどなたかのお弁当を食べてしまったようなのです……」とクラスの親御さんたちに連絡をした。

するとMくんというクラスメイトのお母さんから「あっ! それ多分うちです」と返信が来た。

Mくんのお母さんは非常に几帳面な人で、朝作ったお弁当の写真を撮っており、それが送られてきた。

写真を見ると、まさに同じフォークとハインツケチャップの小袋、その下に(おかずが入った)ランチボックスと小さめのいなり寿司が3個まとめられて収まっているのが写っていた。

なぜ他の子のお弁当を食べてしまったのか? 息子に経緯を聞くと

「お昼ご飯の時間になったからきんちゃく袋を開けたらいなり寿司が入ってたんだよ! だから食べたんだよ!」

と言う。

Mくんも「開けたら(おかずが入った)ランチボックスしかなかった。いなり寿司なんかなかったよ」と言う。

Mくんはもともと少食で、いなり寿司がなくてもお弁当の量は十分だったのもあり「おかしい」とは思わず、また特段困ったことが起きたわけでもないのでトラブルに発展することもなく、この話はそれで終わった。

しかし不可解である。

ピクニック中のみんなの荷物はブルーシートの上に乗せられ一か所に集められていた。

だから誰かがイタズラでMくんのいなり寿司を青柳の息子のリュックの中に入れたと考えられなくもない。

しかしMくんのお弁当はバンダナに包まれていた。

入れ替えるにはMくんのお弁当のバンダナをほどいてフォーク、ケチャップ、いなり寿司を取り出し、そしてまた結び直してから青柳の息子のきんちゃく袋も開ける、などの工程を踏まなければならない。

子どものイタズラにしては少々手がかかりすぎてる気がする。

なによりもイタズラだとすれば、Mくんが困り、誰かがMくんに「お前お弁当少なすぎじゃん!」などと茶々をいれないと成立しない。

しかしMくんは困らなかったし茶化す子もいなかった。これらのことを考えると誰かのイタズラとは言い切れない気がする。

青柳が帰宅すると妻はこの話をし、「ね! またあったね! 油揚げの不思議!」と言った。

青柳は「(野球観戦の焼きそばのことを思い出しながら)いやいや、そんなのはこじつけだって!!」と返したが、「こじつけ」と口にした直後にあることを思い出して「あーーーー!!」となった。

その日、青柳の息子がMくんのお稲荷さんを食べてしまったのと全く同じ時間に、仕事場近くの回転寿司屋で食事をしていた。

その際なぜか滅多に注文しないきつねうどんを注文し食べていた。

考察

誰かのイタズラや手違いでMくんのいなり寿司が青柳先生の息子さんのお弁当に紛れてしまったと考えるのが妥当ですが……

奥様のご実家が稲荷信仰をしていることや、青柳先生もなぜか同時刻にきつねうどんを食べるなど油揚げとの因縁めいたものが付き纏っていることを考えると……

お稲荷さん!! お稲荷さんの仕業なの!?!?!?!?

「神様は人間の願いを叶えたりご利益を与えた際には、報酬としてその人の胃袋を使わせてもらい、好物を食べて味を堪能する」という話を聞いたことがあるので、もしかしたら……? と私は考えてしまいました。

でも青柳先生に「油揚げを食べる前後に何かラッキーなことはありましたか?」と聞いてみたところ「う~ん、あったような気もするけど覚えてないなぁ。覚えてないから大した幸運はなかったんじゃないかなぁ?」と仰っていたので、私の考察ははずれたようです。

謎は深まるばかり……

実は青柳先生はこのような不思議体験を他にもお持ちで、また無類の怪談好きなこともあり、最近は怪談本も出版されています!

2024年8月7日には短編の不思議な話や怪談を集めた新刊『踏切と少女 怪談青柳屋敷・別館』が発売されました!

「文字読むの苦手だよぉ……」という人でもサクッと読めますし、ところどころに青柳先生のユーモアが散りばめられていて、怪談なのにクスッと笑えるので、怖い話が苦手な人にもおススメです!

みなさまもぜひ『踏切と少女 怪談青柳屋敷・別館』を読んでみてください!

そして物理法則を無視したいなり寿司の考察があればぜひ教えてください!

トップ画
photo by 月舟 via AC
https://x.gd/jFRaw

青柳碧人公式X
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踏切と少女 怪談青柳屋敷・別館
https://www.futabasha.co.jp/book/97845755277660000000?type=1
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人智を超えた世界の神秘が好きです。