恐怖?インバウン丼の千客万来に安心して飲める立ち飲みスタイルの角打ちが!「米三角」取材レポート

  by 古川 智規  Tags :  

円安やインバウンドの観光客が押し寄せる観光地はオーバーツーリズムとしてたびたび報道されている。豊洲市場前にる千客万来もそのやり玉に挙がった施設の一つで、多くの飲食店が並び賑わいを見せる。今の一般の日本人からすれば非常に高価なメニューが並び、インバウン丼と揶揄されて大炎上したのも記憶に新しい。
しかし全店舗がそうなのかというと決してそんなことはなく、ごく一部の開き直ったと取られても仕方がない店舗の話であろうことは行けばわかる。

千客万来の多くの店舗のうち、日本人が安心して飲める、しかも価格帯だけではなく味も満足できる「米三角」を取材したのでレポートする。

同店は美味しい魚介類と日本酒のペアリングをテーマにした基本立ち飲みスタイルのお店だ。場所柄、昼間はインバウンドの入店も見込んではいるが、それだけではなく気軽に日本人観光客や宿泊者、近隣住民にも利用してもらうべく食材やお酒を厳選して独自のルートで仕入れを行っている。

立ち飲みは主に関西で言われる言葉で、関東では角打ちというのが一般的だ。しかしその語源は北九州工業地帯で多くの工場労働者が勤務後に酒屋の店頭で一杯飲んで帰るスタイルのことを言ったのが始まりだ。その後、労働者の関東への移動に伴って関東でも角打ちという言葉になったというのがもっぱらの定説である。

よって角打ちと名乗る限りはイメージとしては、高価であってはいけないということになる。インバウン丼はもってのほかということになろうか。写真の通り、立ち飲みスタイルが基本とはいえ、テーブルやいすは備えており、座って居酒屋スタイルで飲むことも可能だ。

そして飲む基本になる日本酒はプレミアムなワインのような吟醸酒から、日本酒らしいクセのある醸造酒までそろっている。もちろんビールやサワーウイスキーもあるので、ペアリングを意識せず居酒屋として入って構わない。

干物というと文字通り干からびた魚をあぶったものというイメージがある。一般的にはそういうもので、そういうものしか食べてきてないからだろうが、ここにはホッケのようなデカく厚い本物があるので安心していただきたい。

アジやサバの干物は何度も食べたことがあるが、外はパリパリで香ばしく中はふっくら脂がじゅわっと出てくる大きな干物は食べた記憶があまりない。

仕入れ状況にもよるのだろうが、普段は刺身で食べるような珍しい干物もあり、お酒を自分の好みで合わせていただきたい。同店の面白いところは、ペアリングと称している割には特に強く推奨している銘柄がないところだ。ある意味正しい姿勢で、酒の好みは千差万別で飲む人がうまいと思った組み合わせが最高のペアリングとなるはずだ。それを尊重してなのか、記者はスタッフに自分の好みの日本酒の味を伝えておススメしてもらった酒を飲んだが、これが最高の選択で一気に3合ほども飲んでしまった。ペアリングが正しかったから飲めたのだろうと酔いがさめてから改めて認識した。

さて、こういう干物を食べればご飯が欲しくなるのは必定だ。そもそも米三角という店名には「銀飯」「発酵」「熟成」を繫ぐという思想がある。銀シャリは同店の3本柱の一つなのだ。そのメニューで「本日のこぼれ海鮮おむすび」というのがある。どう見てもマスに入った刺身の盛り合わせだ。しかし刺身の下には大根のツマではなくご飯が詰まっている。海苔で巻いてもいいし、海苔をおつまみにしてもいいし刺身と手巻きにしてもいい。なんなら全部別にしてつまみとして酒を飲んで、別に注文した干物をおかずにご飯を食べてもいいのだ。これほど酒飲みの欲望を満たすメニュー構成はない。さらに最後にはのどぐろだしの塩スープもらってだし茶漬けにもできるという念の入れようだ。

酒を飲むためのメニューも豊富で、主要看板メニューは税込み980円からと、決してインバウンド価格ではないのも特筆すべきことだ。

「六白黒豚のトロトロ煮」は、味のしみた化け物のような大根のおでんに豚肉が乗ったものと思えばよい。日本酒によく合ううまみの詰まったあっさり+こってりメニューだ。

同店の醤油にもこだわりがあり、好みやメニューに合わせて選択して使う。特に刺身には醤油の味は大切なのだ。

立ち飲みスタイルでサクッと飲んで帰ってもいいし、仲間とゆっくりおしゃべりと酒を楽しむこともできる。何度も言うが、ペアリングを推奨しているが自分の好みがあれば細かく伝えておススメのお酒を選んでもらうのが、自分だけのペアリングを見つける早道なので、自分だけの美味しいお酒発見も楽しんでいただきたい。

インバウン丼と揶揄される千客万来ではあるが、そういう店だけではないことがわかれば、ちょっと行ってみようという気にもなるものだ。場所も豊洲市場前なので交通至便である。一度飲みに行くだけでも価値ある美味しさだった。
交通はゆりかもめ「市場前」駅直結の他、新橋から無料シャトルバス、ゆりかもめ新橋駅下にある東京BRT新橋バス停から豊洲市場前バス停下車で目の前が千客万来。

※写真はすべて記者撮影

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