青春時代というのはみっともないものだ。つまらないことにこだわって身動きが取れなくなってみたり、大切なものに気付かずに後になって後悔したりする。映画や小説の多くは、青春時代の美しい部分を切り取って表現するが、現実は美しいことばかりではない。リアルな姿は時に醜く、気恥ずかしいものだ。
テレビ東京系のドラマ『みんな!エスパーだよ!』が面白い。
主人公の鴨川嘉郎(染谷将太)は、何のとりえもない高校生。そんな彼だが、ある日突然、他人の心の声が聞こえるようになる。「この力を使えば世界を平和にできるかもしれない」そう考える一方で、東京からやってきた転校生、浅見紗英(真野恵里菜)のことが気になって仕方がない。恋人はいるのか、自分はどう思われているのか、そして彼女は処女なのか。断片的に聞こえる彼女の心の声に耳を傾けながら、もんもんとした毎日を送っている。
同じ頃、嘉郎の周りには、同じように超能力に目覚めた人たちが現れる。テレキネシス、透視、サイコメトリー、瞬間移動。しかし、皆、その力を世界平和のために使おうとはせず、自分の欲望(主にエロ)を満たすことに使っている。
『愛のむきだし』の園子温監督、『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』の入江悠監督、『くそガキの告白』の鈴木太一監督といったそうそうたる面々が、そんな青春のみっともない姿を時にコミカルに、時に感動的に描き出していく。
圧巻だったのは、5月3日に放送された第4話「世界は黒かピンクでできている、大作戦!」。“処女の乳首はピンクだが、非処女のそれは黒い”そんな情報を得た嘉郎らは、透視能力を持った友人の力を借りて紗英の乳首の色を確認しようとする。はたして彼女は処女か、処女じゃないのか・・
ドラマの中で嘉郎は叫ぶ「浅見さんがセックスしたことあるかないかだけでもはっきりさせないと、世界は救えない!」
処女か非処女か、それはわずかな違いかもしれない。しかし、思春期の恋する男子にとってそれは、世界平和と同じくらい重要なのだ。崇高な存在である恋する相手が、自分以外の男性に“汚された”ということが許せない。そして、同時に自分自身の中にある、彼女を“汚したい”という欲望に気付き、葛藤する。
このドラマはそんな“みっともない”姿を隠さない。超能力を持った男たちがみな煩悩にあふれているのが象徴的だ。それらの行動は何も特別なことではない。未来ある若者たちはみな、あふれくる欲情を力に変えて前へ進んでいくのだ。
そして、ヒロイン紗英を演じている真野恵里菜さんが素晴らしい。これまでのアイドル然とした輝きを失わず、清純でありながら、心の中では周囲の人たちに毒づく役を見事に演じている。
嘉郎の恋に進展はあるのか、エスパーたちは世界を救えるのか、これから終盤へ向けドラマがどんな展開を見せるのか。目が離せない。
※画像は『みんな!エスパーだよ!』公式サイトより http://www.tv-tokyo.co.jp/esper/index.html