沖縄で大ヒットした『コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』中川陽介監督インタビュー 「お金ではなく芸事が本来持っている楽しさが伝われば」

  by ときたたかし  Tags :  

沖縄のR&Bの聖地と言われるコザを舞台に、再起を賭けたママさんバンドの奮闘を描く映画『コザママ♪うたって!コザのママさん!!』が、全国公開中です。沖縄では数週間に渡りロングランヒットを記録した注目作です。

かつて米軍の黒人たちを中心ににぎわい、ブラックミュージックが流れる繁華街だった沖縄市照屋地区。ノスタルジックなR&Bの聖地を舞台に、沖縄の現実を見つめつつもバンド活動でかつての夢を追う女性たちの魂を揺さぶる音楽映画です。

メガホンを握ったのは、自身も沖縄に居を移し、沖縄を見つめ続けている中川陽介監督。取材を始めた企画当初とは異なった物語になるも、地元の人々に称賛される作品になった背景について中川監督に話を聞きました。

■公式サイト:https://kozamama.nice-movie.jp/ [リンク]

●この作品を撮られた目的と言いますか、目指されたものは何でしたか?

映画で町おこしができないものかという出発点でした。町おこしと聞くとフードトラックを呼ぶ食のフェスティバルなどあると思いますが、コザ銀天街さんのほうから「映画はどうだろう?」と話が出たことがきっかけです。

そこで最初は探偵もの、サスペンスものを考えていたのですが、取材にうかがう間に、銀天街に隣接する照屋地区が昔は黒人街と言われていて、コザの中でも特にR&Bが流れていた歴史を知りました。やがて銀天街の中で子ども食堂をやっているオーナーの話などを聞いているうちに脚本がどんどん変わり、最終的に町おこしのために立ち上がるママさんの物語になりました。

●劇中にもそういう町おこしの議論のシーンがありましたが、沖縄で映画が公開された時の反響はいかがでしたか?

一番びっくりしたことは、沖縄で一番スクリーンを持っているスターシアターズという映画館が、四スクリーン同時に開けてくれたんです。この規模のインディーズ映画では破格の扱いなので、びっくりしました。『アベンジャーズ』とかやっているような大きな劇場さんなんです。

最初は二週間の上映予定が、おかげさまでお客様が途切れずに入ったことで、八週間以上のロングランになって。それが一番の驚きでしたかね。最初の二週間が宣伝効果、あとの六週間は口コミでしょうと。

●まさに映画に出て来る彼女たちの想いが伝わったことの証明だと思いますが、これほどまでに支持された理由についてはどう分析を?

沖縄は基地問題、戦争の傷痕などにクローズアップした作品が多めで、実際に沖縄に暮らしていますと、そういう映画はもちろん大事だと思うのですが、もう少し肩の力を抜いた、自分たちの街が舞台となった映画を観たい、楽しみたいというお客様も多かったのかなと思ったんですよね。

僕自身も一年の3分の2は沖縄で農業をやっているので、農閑期に映像を撮らせてもらっているんです。普通の労働者からすると、小難しいアート作品よりも、ある種の人間賛歌みたいなこういう映画でも観て、元気をもらいたいという自分自身の欲求がまずありました。そういうところも沖縄のみなさんに届いた理由かなと思っています。

●登場人物のセリフも本当に自然で、ある意味では沖縄のリアルが作品の中にあった印象を受けました。

これは自分で撮ってみて初めて分かったことなのですが、いわゆる「寅さん」のような映画を撮ることは非常に難しいことだと。なんでも許されるようなタイプの作品とは違い、ごく普通のお客様がお金を払って観てくれる作品を作ることは、なかなか難しいと思いました。セリフも上から目線の説教めいたものにならないよう工夫はしています(笑)。あとはストリーの核自体は沖縄に強く寄せなかったのですが、僕自身沖縄に14年住み、ようやくコザの文化、精神性は分かったような気がして作れたと思うので、ウソにはならないとは思えました。

映画の中で登場人物に言わせているのですが、沖縄の芸能はお金を儲けるものではなく、自分を高めていくためのものだろうと。たとえば歌、三線があるということを言わせているのですが、僕も今でも同じ考えをしています。僕もあくまで農業が基礎であって、前のように全部映画だけの生活にはもう戻らないと、今でも強く感じているんです。だからこそ撮れるものがあったとは思っています。

●とても説得力がありますね。自信を持って全国に送り出せるのではないでしょうか。

子どものようにかわいい作品です。舞台となった銀天街では6回試写をやったのかな。商店街の人たちがみんな泣いて喜んでくれまして、それはそれはいい光景でした。「沖縄は怖い映画が多いさ。今回は笑って泣いてよかったさ」と。その時届いたなと思いました。さっきも言いましたが、当然そういう映画があってよくて、あるべきだとも思いますが、どっこいそこに今生きている人たちもたくさんいるわけで、そういう人たちの想いが今度は全国に伝わるといいなと。

東京にいると芸事、エンターテインメント、それはいくらになる? それで食えるのか? ということが最初の基準になります。でも沖縄では普通の漁師さんが三線の名手だったりするんです。本来エンターテインメントが持っている楽しみは、誰でも普遍的に持っているもの。この映画を観たらもう一度ピアノをやってみよう、フラダンスをやってみようと思うはず。それお金になるの? はもうよくて、芸の持っている楽しさが伝わればいいなと思っています。

■ストーリー

高校時代に大人気を博したR&Bバンド『銀天ガールズ』。

20年を経て、それぞれ家庭をもつアラフォー世代となったメンバー4人が、地元の沖縄・コザの商店街「銀天街」の街おこしを目指して再結成!

街の不況や子供たちの貧困など、さまざまな事情を抱えながらも、⻘春と人生を取り戻し、コザの街を再び輝かせるべく、バンド活動で再起をかけることになるが….

(C) 2023年 SOUTHEND PICTURES (C) コザ十字路通り会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo