ナイツ・塙宣之「漫才を生で観るということを味わってほしい」 初監督作『漫才協会 THE MOVIE ~舞台の上の懲りない面々~』で届けたいこと

  by ときたたかし  Tags :  

ナイツ・塙宣之さんが初監督したドキュメンタリー映画、『漫才協会 THE MOVIE ~舞台の上の懲りない面々~』が現在、全国で公開中です(東京・アップリンク吉祥寺4月19日(金)より上映)。

2023年に漫才協会会長に就任した塙さんによる数々のバラエティー番組でのプレゼンなどで一般にも広く知られるようになった一般社団法人・漫才協会。その漫才協会に所属する芸人たちの悲喜こもごもを追ったドキュメンタリーには、漫才協会と芸人たちを知る塙監督だからこそ描くことができた、リアルな笑いの今が映し出されています。

初監督作品で何を届けたかったのか。塙監督にお話を聞きました。

■公式サイト:https://mankyo-the-movie.com/ [リンク]

●今回の映画は、漫才協会の認知拡大が目的で制作が始まったかと思いますが、映画化の理由はほかにもありましたか?

それももちろんあるのですが、一番の目標としては漫才協会だけで、たとえばテレビ番組制作など、そういうことができればいいなということなんです。それって実は歴代の師匠がずっとやりたかったことだとは思うのですが、今回たまたま映画ということでお話が来たので、漫才協会の宣伝になるとまずは思いました。僕は、会長職は宣伝部長だと思っているので、宣伝になることは何でもやりたいという想いがあるんです。

それこそM-1の審査員も、漫才協会の会長と必ず紹介してくれるじゃないですか。宣伝効果が抜群なので、そのためにやっているみたいなところはありますよね。前は漫才協会って言っても、みなさん知らなかったじゃないですか。やっぱり宣伝して知ってもらうことが一番大事なので、テレビや映画は何かやりたいなと思っていたんです。

●ドキュメンタリー形式は、最初から決まっていたのでしょうか?

ひとつのテーマを持ったほうがいいのか、それとももう何もないほうがいいのか、いろいろと考えて試行錯誤しました。最終的には舞台の上の懲りない面々ということで、ドキュメンタリーで辞められなくなってしまった芸人たちのありのままを見ていただきたいなと。浅草の東洋館は、漫才中毒の人が辞められなくなっている施設のドキュメンタリーみたいな感じて観ていただいてもいいと思うんです。なんとか辞めさせたいのですが、みんな辞めてくれないというね。

●それは冗談でおっしゃっていると同時に、お笑いの世界ではよく言う真理でもありますよね。

はい。若手にもよく言うのですが、スパン! と辞められている人のほうが、意外に社会に通用したりしている人が多いんですよね。見ていてけっこういます。スパン! と芸人辞めて、サラリーマンで活躍している。

でも、そういう人ばかりじゃなくて、僕らナイツもそうなのですが、なんで辞めないのかって言うと、いつか必ず大逆転するんじゃないかっていうのがどっかにあるんですよね。それがやっぱり面白いんです。今テレビに出ている人を観て、自分もいつかこうなるんじゃないかってどこかで夢見ている。もしかしたらそれが前世から続いてる人もいるんじゃないかなと。カルマ、カルマです。カルマだから、来世くらいで売れるんじゃないかなとか。本当にそれこそたまごですよね。

●そういう姿も収めたいという……。

そうですね、令和版カルマの法則だと思っています(笑)。

●そういうみなさんのありのままを映していますが、東洋館そのものはお客さんで賑わっているんでしょうか?

東洋館は賑わっていますよ。ただ、人によって差があり、知名度のある芸人が出ている時とそうじゃない時の差はありますよね。お客さんの数が少ないことがあるので、なんとかそこは東洋館自体がすごいパワースポットなんだっていうことにしたいっていう想いはすごくありますね(笑)。実際舞台に立つと、すごく元気になるんですよ。舞台には全員人気者が出られる日ばかりとは限りませんが、漫才を観に来てほしいということが僕の中にはひとつ、テーマとしてありますけれどね。

●お客さん自身も笑いでパワーをもらえるみたいな感じですかね。

そうですね。その面白さ面白くなさ、コンビのネタ云々ってなっちゃうと、それはもちろんお客さんが選ぶことになるのですが、ただ、漫才に触れるというか、漫才を生で観るということを味わってほしいですね。それは東洋館に限らず、寄席でも何でもいいのですが、そういうことこそ僕が伝えたいことなんです。漫才師って世の中にいっぱいいるのですが、ある漫才師がやる漫才はこうですよと、ちょっと触れ合う場所としておすすめですよ、ということですね。ぜひ気にしていただければと思います。

■ストーリー

浅草フランス座演芸場東洋館(通称:東洋館)を活動拠点に、漫才協会に所属する芸人たちが連日舞台に立ち続けている。
事故で右腕を轢断し、舞台復帰に向けてリハビリに励んでいる大空遊平。39年間コンビとして活躍し、相方を亡くしてもなおピン芸人として舞台に立ち続けるホームランたにし。離婚後も同居を継続し、コンビで舞台に立ち続けるはまこ・テラこ。結成3年の若手コンビ・ドルフィンソングなど、幅広い世代の芸人たちの横顔をカメラが追う。さらにナイツの師匠でもあり、最後まで舞台に立ち続けることにこだわった漫才協会名誉会長・内海桂子への思いなど、漫才協会に集った芸人たちの過去、現在、そして未来が描かれる。

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo