浅草でよく見る人力車に乗るといくらかかる?春におススメの乗り方を実際にやってみた!

  by 古川 智規  Tags :  

浅草を歩いているとあちこちでよく見かけるのが古風な日本伝統の乗り物「人力車」だ。古風というと「かご」にまでさかのぼるが、さすがにかごではない。人力車だ。人力車はかごが主流だった江戸時代から明治に変わると急速に普及し、その後に内燃車としての自動車が普及するまで、短・中距離の交通手段として活躍した。現在では交通手段としてではなく観光用としての用途で使用されるのが主だ。
浅草には4社の法人と多数の個人事業主が人力車での観光需要を満たしている。今回は春におススメの乗り方を検証してみたのでレポートする。

さて、今回検証したのは東京力車の人力車だ。「浅草には行ったことがあるけど人力車には乗ったことがない」という方は多い。その理由の一つとして料金がわからないというのが挙げられる。写真の通り、人力車はメータータクシーのような対距離制ではなく、時間制である。
もちろんタクシーのような「どこまで行ってくれ」というような交通機関としての利用もできるが、それでも時間制なので車夫に相談すればよい。利用する際にどこを回りたいのかということが地理に明るくわかっている場合は、ルートや場所を指定して回ることも可能だ。それでも時間制なのは変わりない。観光目的等で地理がわからない場合は、車夫に相談するとおススメのコースや必要な時間、料金を説明してくれるので、それをもとにアレンジするのもよい。
とにかく時間制なのでタクシーを観光目的で時間貸切するのと似ている。東京都の個人タクシーの場合、時間制運賃は1時間当たり5360円だ。それと比較するとずいぶん高いように見えるが、車夫の労力と古風な雰囲気に加えてオープンカー並みの風を感じることができ、アイポイントが高いため眺めが良いという点も考慮すればそうでもないと言えよう。
また大人2名まで乗車可能だが、人数により料金が異なるのも特徴の一つで、2名で乗車したほうが1名当たりの料金は格段に安くなる。

同社の社名にもなっている「リキシャ」という単語は人力車の別称だが、実は東南アジアで今でも利用され、英語にもなっている人力車に似た乗り物である「リキシャ」または「リクシャ」は、日本語の人力車が語源の英単語だ。日本の伝統文化が海外に輸出された一つの例でもある。
今回の車夫(運転手・引手・担ぎ手)は新井里穂さん。なんと女性だ。英語が話せるので外国人観光客に対する案内もでき、人力車が面白そうで体を動かすことが好きなので、一石二鳥と半年程度の厳しい研修をパスして車夫になったという。古い乗り物なので残念ながら当時は女性の引手は皆無で日本語としては車夫(当時の表記は人偏に車)しか存在しない。よって女性だが車夫と呼称することをあらかじめお断りしておく。

さて、人力車の乗り心地だが、思ったほど悪くない。大きな車輪なので段差や悪路に強いという点はあるものの、なんと板バネが仕込んであり、サスペンションが効いているのだから乗り心地は悪いはずがない。
この乗り心地と「オープンカー」の特性を生かして、これからのシーズンではビール片手に人力車で夜桜見物や花見をするというのもOKだそうだ。

人力車は浅草雷門南バス停付近を出発して雷門前の前を通り、吾妻橋に進路を向ける。するとパンフレットでおなじみのスカイツリーが正面に見える。車夫は前を向いて引いているが、後方確認をする際に案内をしてくれる。しかしそもそも原動機(エンジン)がないため、声はよく通り前を向ていても聞こえる。

今回のスタートは雷門付近だが、降車地は出発地でなければならないということはない。雷門で乗車して、帰りは東武だから東武浅草駅前とか、都営浅草線に乗るから都営の地下鉄入口付近とか、その後の予定に合わせて任意の場所を指定して降車してかまわない。

たまたま警視庁の白バイが前にいて形として人力車を先導する形となった。こうした偶然性もオープンエアである人力車の楽しみ方だろう。ちなみにすれ違った都営バスは今では数少ない貴重な西日本車体工業製の車両である。

同社人力車の料金精算は現金の他、クレジットカードやコード決済も利用できるため、あらかじめ同社窓口でチケットを購入するか、車夫に決済方法を伝えておくと準備してくれる。

隅田川沿いに人力車を進めると、いくつかの撮影スポットがある。よく落語で登場する大川はこれより南側(下流)の隅田川のことであり、さまざまな歴史的実話や落語の創作で出てくる話の舞台はこのあたりの隅田川両岸が多い。

さて、今回の取材で人力車に着物で乗ってモデルをしてくれたのが同社の広報担当で、現役の車夫でもある大利弥里さん。以前はタレントをしていたのだが、新井さんと同様に人力車の面白さと魅力にとりつかれて会社の広報と車夫としての二足の草鞋を履く。
シチュエーションとしては、女性が浅草で着物をレンタルして身にまとい、人力車で桜の名所やパワースポットを巡り、写真を撮るという想定だ。今回も大利さんには本当にレンタルの着物を手配してもらい、忠実に観光客の足取りを再現してもらった。

もちろん、希望すれば車夫も写真に入ってくれるので一緒に撮影することも可能だ。写真は東武鉄道が浅草駅に入線する車両をバックに撮影したものだ。桜やスカイツリーだけではない、実際に行ってみないとわからない新旧織り交ぜた被写体が多くあるのが浅草のいいところだ。

パワースポットとして今戸神社までやってきた。今戸神社は招き猫発祥の地として知られ、主祭神は応神天皇・イザナキノミコト・イザナミノミコト・そして七福神の一つである福禄寿だ。
参拝を前に手水舎で身を清めて拝殿に向かう。

ここで車夫の心遣いが炸裂する。レンタル着物で慣れない動きをする際にハンカチを出し忘れて困ることがある。車夫はサッと手拭いを差し出して乗客の便を図る。手をぬぐうのが本来の目的なので、手拭いを差し出すのは使い方としては非常に正しいのが面白いところだ。

今回は撮影のため二人で参拝してもらったが、イザナキとイザナミという神話上、日本で最初の夫婦にあやかり縁結びとしての御神徳も有名になりつつある。

境内にある招き猫をなでる写真は定番中の定番だ。ちなみに本物のネコも境内をうろついているので、出会えたらラッキーかもしれない。

まだ桜(ソメイヨシノ)はこれからで、咲いている品種は少ないが、4月になると、どこで撮影しても桜が入るので場所選びには苦労しないだろう。取材日現在は咲いている品種は2本だけだった。

絞り優先でF11程度まで絞って桜をバックに撮影すれば、人物も両方入る柔らかい画になる。明るいレンズで少し離れて望遠気味から絞り開放で撮影するとバックの桜はボケる。ボケ写真が好みの場合は、なるべくイメージセンサーの大きいカメラを使用するとよい。35mmフルサイズ>APS-H>APS-C>マイクロフォーサーズ>コンパクトデジタルカメラ>スマホの順でイメージセンサーのサイズが小さくなるので、お手持ちのカメラとよく相談して持ち出そう。

今回の撮影機材はCanonEOS1DXとEF24-105mmF4L IS USMの組み合わせである。スマホだと絞りの設定ができないので、できれば絞り優先AEが使えるカメラがおススメだ。日中の時間帯だと、それほどお高い明るいレンズは必要ないので、気軽にカメラを持ち出して春の撮影に挑んでいただきたい。

「桜の木の下で…」というテーマではこういうアングルも参考になるだろうか。

さて、人力車は日本では法律上、軽車両として扱われる。よって自転車や馬、リヤカー、交通標識にも描かれている大八車と同じ扱いだ。運転免許は必要ないが、人を乗せての運転技術は必要だ。発進時のトルクは人力なので人の脚力によるが、問題はブレーキだ。人力車には制輪子等の制動装置(ブレーキ)はついていない。よって車夫が慣性に反して確実に止めなければならない難しさがある。そして質量の大きいものは慣性も大きいので二名乗車時は人力車そのものの重量を含めて、止めるのはなかなか大変だ。

トップ写真はスカイツリーと今戸神社の鳥居と桜を全部入れたもので、この写真は望遠気味で桜を強調した画だ。左の緑樹はソメイヨシノなので、4月では全体が桜色の写真になるはずだ。

人力車は見てわかる通り、後方を確認する装置がない。バックミラーもサイドミラーもない。よって車夫が目視で確認する必要がある。車やバスが走る大通りを渡る際や、左側に路上駐車がある際には一気に確認事項は多くなる。通り慣れた浅草周辺の自動車は横断しようとする人力車を待って譲ってくれる場面もあり市民権を得た感はある。観光目的とはいえ前述したとおり軽車両なので、交通の状況にもよるが自動車で通行の際は気持ちよく進路を譲りたいものだ。

今戸神社を後にして、往路とは異なるルートで東武浅草駅前を通過して、雷門まで戻ってきた。取材での撮影があったので、所用時間は約60分だったが、通常のおススメ通りのコースで回るのであれば45分だったようだ。
浅草というと仲見世と浅草寺で完結してしまいがちだが、芸能の街である浅草六区や浅草寺の北側に当たる奥浅草エリアはあまり観光では行かないイメージがある。路地裏まで入っていける人力車だからこその風情と、徒歩では行きにくい隠れた名所を効率よく回るのに人力車はなかなか魅力のあるプレミアムな乗り物だと感じた。
その価値を享受できるのであれば、決して高くはない。リピーターが多いことや、車夫の指名制度(4月から指名料金1000円が加算される)があることも、その証なのだろう。
観光客はもちろんのことだが、東京在住の人こそ普段通り慣れている東京の足元と風を感じてみてはいかがだろうか。

※写真はすべて記者撮影

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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