フィリピン映画『FEAST -狂宴-』ブリランテ・メンドーサ監督インタビュー 「人を赦すことは簡単ではないが、できることだと教えてくれる作品に」

  by ときたたかし  Tags :  

フィリピン映画界の鬼才ブリランテ・メンドーサ監督の最新作『FEAST -狂宴-』が、2024年3月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開になります。

監督の新境地とも評される本作では、息子の罪を庇う加害者家族と、全てを失った貧しき被害者遺族を物語の中心に据え、フィリピンの田舎町で巻き起こった交通死亡事故から始まる当事者家族同士の心の機微と赦しをテーマに描いた家族ドラマです。

遺族を使用人として雇い始まった奇妙な共同生活の辿り着く先とは? 人はどう罪と向き合い、どう赦し、そして生き直せるのか? ブリランテ・メンドーサ監督に話を聞きました。

●今回、「赦し」というテーマの映画ですが、なぜ描こうと思ったのでしょうか?

許すということは世界的なテーマであり、誰であろうと、どこにいようと、どんな状況にいようと、誰もが共感できることだと思うんです。この作品は、赦すことは簡単ではないが、できることだと教えてくれます。

●もしも監督が被害者の妻の立場になったとしたら、加害者家族のことを許せますか? また、人は許すべきだと思いますか?

これは非常に難しい質問ですが、わたしは…そうすると思います。

人間はしばしば癒しを求めるもので、許さないことはナイフにしがみつくようなものだと思うんです。わたしの人生において、憎しみは常に、心に抱くべき恐ろしい重荷であることを学びました。忘れることはもちろん別の問題で、傷跡が記憶の奥深くにある限りは、わたしも忘れることはできないでしょう。

●また、映画に登場する料理がとてもおいしそうでしたが、何か特別な意図はありましたか?

どのように食べるか、どのような種類の料理を食べるか、どのように提供するか。それはあなたのルーツ、家族、地位、文化、感情を明らかにするものだと思います。たとえ暴力や不幸があったとしても、食べものは彩りをもたらします。そして、ここフィリピンでは、あらゆる問題に対して、生きるために食べるのではなく、食べるために生きると人々はいつも言いいます。

7,000以上の島があるこの国では、野菜、魚介類、果物など、自分たちで栽培することができるんです。わたしたちの郷土料理はとてもバラエティに富んでいて、異なる文化の影響を受けているため、地方から地方へと旅をすると、とても美味しくて異なる種類のものを食べることができます。

とはいえ今回の作品ではわたしの故郷であるパンパンガにスポットを当てたいと思いました。パンパンガはとても美味しくて豪華な食べ物で有名です。その言葉通り、わたしたちはいつも “饗宴 “を用意しています。

●まもなく日本で映画が公開されますが、日本のみなさんに向けてこの作品のどんなところに注目して観てもらいたいですか?

日本人はとても従順だと思いますし、悪いことをしたときにはとても反省しますよね。反省の示し方や、家族やコミュニティに対する義務の果たし方はそれぞれ違います。同時にわたしたちの国民性はとても寛容です(わたしがこれまで経験した限りでは)。

正直に言いますと、わたしは日本の食べものや人々が好きです。日本には柔らかな美しい色があり、わたしの国には違う美しい色があります。わたしたちは似ているけれど違いますよね。日本は自国の文化や過去を尊重することで知られていますが、わたしは自国の文化も紹介したいと思っています。

■ストーリー

息子が起こした交通事故の罪を被り、刑務所に収監されていた家族の長の帰還を祝う宴の準備が進められている。収監されている間、妻と息子は、協力しあって家族と家計を守り、亡くなってしまった男の妻と子供たちを引き取り使用人として面倒を見ていた。しかし、宴の日が近づくにつれて後ろめたさと悲しみが再びあらわれ、「失った者」と「失わせた者」との間の平穏はかき乱されていく…

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo