中村ゆりか&真山りかインタビュー「日々些細なことに感謝し続ける気持ちを持ち続けたい」 ゾンビアニメーション『死が美しいなんて誰が言った』

  by ときたたかし  Tags :  

画像生成AI「Stable Diffusion」という技術を全編に使用した世界初の長編アニメーション、『死が美しいなんて誰が言った』が公開になります。

そこで描かれる物語は、ゾンビウイルスが蔓延する世界。政府は治療可能な感染者のみを病院に収容。ゾンビ化した人間を巨大な壁の中に閉じ込めてしまう。治療を受ける詩人のレイ、妹のユウナ。2人を看る医師のリカ。3人は懸命に生きていたが、ある日、壁を越えてゾンビたちが襲来。病院は恐怖と混乱に包まれてしまい……。

絶望の中で生きる意味を問い直す、ゾンビアニメーションである本作。人が絶望の淵に立つ時、見えてくるものとは何か。医師のリカ役の中村ゆりかさん、レイの妹ユウナ役の私立恵比寿中学メンバー・真山りかさんにお話を聞きました。

■公式サイト:https://shibi.mocap.co.jp/ [リンク]

●今回の『死が美しいなんて誰が言った』ですが、声の出演が決まった時、率直にいかがでしたか?

中村:わたしはアニメーションのアフレコが初めてだったので、初めての経験をさせてもらえることがうれしかったです。映画に出て来るゾンビについては、普段からゾンビ映画をよく観ていたので、こうして呼んでいただけて本当に光栄でした(笑)。

真山:最初マネージャーさんに「すぐゾンビになっちゃうけれど、重要な役なんですよ」と言われました(笑)。率直にありがたいなと思いました。死を題材に膨らませた世界観ということで、どのように作品が彩られていくのだろうとわくわくしたので、早く演じてみたいなと思いました。

●よくある怖いホラー的なゾンビ映画とは違い、<絶望の中で生きる意味を問い直す>という、それこそ現代的な意味がある世界観ですよね。

中村:監督ともお話をしたのですが、監督が作りたかったゾンビものは、少年の時の夢が入っているとのことで、そこも魅力的だなと思いました。いろいろな要素が出てきて、ゾンビも怖いグロテスクな印象がありますが、この作品は繊細で美しくなっています。タイトルに死とありますが、いざ自分たちが直面した時どう生き抜くのか、そういうテーマも素敵で。

真山:台本での感想は、生きることに対してキャラクターたちがもがいていて、感情の起伏が激しい印象でしたが、映像を観た時にトーンが自分が思っている以上に低かったんです。アニメだと脚色されて描きがちだと思うのですが、リアルだったら苦しいようなことをあえて描いている。みんな葛藤していて、入りやすいストーリーだなと思いました。

中村:一方で、人は絶望を前に「もう死んでしまったほうが楽だ」と思うのかどうなのか、生と死の間をずっと考えさせられるような、とても深いテーマがある物語だと思いました。

●それぞれのキャラクターについては、どう理解しましたか?

中村:リカはウイルスに感染する前の、ゾンビ化する前の人を治療するために薬を開発したり、研究したりしているのですが、まだゾンビ化を防げる、回復の見込みがある人たちだけを病院に隔離して助ける側の役なんです。でも、主人公のレイやユウナは、ゾンビに怯えながら生きていくくらいなら、死んだ方がましだと思っているタイプです。リカは、そうはさせないと思いながら奮闘している女性です。

真山:わたしが演じたユウナは現代の若者っぽい子で、心情がずっと不安定なところがあります。心の闇も深い女の子で、いわゆる分かりやすい言葉で言うとかまってちゃん、メンヘラ的な感じです。パンデミックが起きた世界の中で、彼女は両親に会いたい気持ちと、早く楽になりたい気持ちが混在している。家族はレイしかいないのに、その兄にも思うことがあり、心の殻が強いタイプの女の子だから、観ていて共感できる人は多いかも知れないですね。愛情を持って観てもらいたいなと思っています。

●ソンビはコロナ化のパンデミックのメタファーのような意味合いもあると思いますが、おふたりはこの『死が美しいなんて誰が言った』と出会ったことで、改めて気付いたことや想いを新たにしたことは?

中村:何かと今、〇〇がないから生きにくいなど、些細なことでも思い浮かぶことがあるかと思うのですが、生きていること自体がそもそもすごいことだと思うんです。世の中にはこの夜の終わりだと生きているのも辛いと思う方がいて、このストーリーを読み、少しでもそういう苦しみが減るといいなと思いました。生きていればいろいろなことにも出会えるし、世の中の流れもひとつもの楽しみだったりしますよね。日々の生活の中で些細なことに感謝する気持ちを持ち続けたいと、わたしも思いました。

真山:わたしの場合、早目にゾンビになってしまうので、生きる死ぬに関しては、考えが変わることはなかったかなと思いつつ(笑)、ゾンビ作品、ホラー作品をこれまであまり観てこなかったので、ある種のパンデミックみたいなものは身近なものだと思いました。コロナ禍があり、制限された世の中が数年あったけれど、その中で自分がやりたいことをやり尽くすことはとても大切だなと改めて感じています。監督もコロナ禍がきっかけでこの作品を生み出したとおっしゃっていたので、作品をとおしてある意味で理想郷、自分の中の答えみたいなものを監督が生み出してくださったと思うんです。なので、作品の中だけでも理想郷が作れるなら、わたしもそういうことに携わってみたいなと思いました。それが学びです。

●今日はありがとうございました!

■ストーリー

政府は治療可能な感染者のみ病院に収容し、ゾンビ化した人間を巨大な壁の中に閉じ込めた。
治療を受けている詩人のレイ、妹のユウナ。2人を看る医師のリカ。3人は懸命に生きていた。
そんなある日、壁を越えてゾンビたちが襲来。病院は恐怖と混乱に包まれる。
リカは密航業者のタキシバの協力を得て「治療を受けるために国外へ逃げよう」とレイを促すが、「家に帰って死ぬ」と譲らないレイ。2人は隔離された土地に向かうが、そこは異形の者たちの地獄と化していた。
果たして、人が絶望の淵に立つとき見えてくるものとは!

出演:長江崚行、中村ゆりか、真山りか、山田ジェームス武
監督:中島良
脚本:都築隆広・本庄麗子
キャラクターデザイン:六角桂・横井三歩
配給:トリプルアップ
Ⓒズーパーズース

中村ゆりか
2012年俳優デビュー。近年作品では、「部長と社畜の恋はもどかしい」主演(TX・2022)同年には、念願の歌手デビュー。現在アルバム「Moonlight」発売中。

真山りか
10人組アイドルグループ私立恵比寿中学のメンバー。出席番号は3番。2023年6月、一般社団法人アニメツーリズム協会公認の「アニメ聖地88大使」に就任。

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo