フラッグシップワイヤレスイヤホン「Jabra Elite 10」を過酷な状況で試してみた!

  by 古川 智規  Tags :  

今や数多くのワイヤレスイヤホンが安価で発売されているが、デンマークを本拠とする業務用ヘッドセットブランドJabraを展開するGN Audio A/S社の⽇本法⼈GNオーディオジャパンは、高品質な通話性能とサウンドを実現する完全ワイヤレスイヤホン「Elite」シリーズから、Dolby Atmosに最適化された臨場感あふれるサウンドと、これまで以上に快適なフィット感を備えた、フラッグシップモデル「Jabra Elite 10」が発売された。
細かいことは置いておいて、この手の高級イヤホンに必ず搭載されている機能がノイズキャンセリング機能だ。フラッグシップというからにはどんな状況でもノイズをキャンセルしてくれるのだろうと期待して、過酷な非常にうるさい状況で試してみた。同社の「Jabra アドバンストANC」は従来の約2倍強力だと明かしている。ちなみにノイズキャンセリングの仕組みはイヤホンに取り付けられたマイクで周囲の音を拾い(人の耳に届く周囲の音と同義)、その音声周波数とは逆位相の音声を瞬時に作り上げてスマホ等から流れる音楽や通話相手の音声に重ね合わせて流すことにより、周囲の音を認知できなくする機能である。水の波の盛り上がりとは逆の波をぶつければ波が消失するのと同じ仕組みだ。理由は音は波だからだ。この仕組みを利用するとスマホ等から音楽を流さなくても、本機単体でデジタル耳栓になる。

仕組み上、マイクが必ず必要になるので通話用のイヤホンマイクとしても使用できるし、拾った音を増幅して同時に流すことにより周囲の音を積極的に取り入れる機能(ヒアスルーモード)も同時に実現できる。ヒアスルーモードは乗りなれない電車で乗り過ごし防止や、バイクでナビを利用する場合に必要になるので意外に使う機能だ。また、ヒアスルーモードで音楽を聴いていても電話がかかってきて受話すれば自動的にノイズキャンセリングモードに切り替えることもでき、その際にはクリアな音声「のみ」で通話ができる。強風時はイヤホン内部のマイクだけが起動し、耳の中を伝わる音声を拾い通話相手に送るのでどのような状況でもビジネスチャンスを逃さない。
なお音声圧縮技術であるコーデックは、最新かつ次世代のLC3とLC3plusにファームウェア更新で対応予定になっているが、残念ながら再生側の記者のスマホでは未対応なので省電力・低遅延の技を体感することはできない。

A321Neo

さて、もっともノイズキャンセリング機能が発揮されるのはやはり航空機内であろう。エアバスA321Neoのエンジン後ろ付近に搭乗して試してみた。

最新型の旅客機なのでそもそもエンジンは低騒音型なのだが、巡航中の対地速度1000km/hオーバーでも何も聞こえず、スマホからの音楽だけが耳元で鳴り響く環境下に置かれた。

ちなみに本機にはDolby Atmosに最適化し、アプリでDolby Head Trackingのオンオフができる。これは頭の向いた方向に音の位置をシフトさせる仕組みで、例えば前から聞こえていた音楽が、頭を右に向けるとあたかも左方向から聞こえているように感じる。航空機や電車の中でどちらかに頭を付けて寝る場合は頭を傾けるが、数秒間そのままの姿勢を保つと、その位置が正位置として記憶され音が移動するので違和感はなくなる。ただしバイクでこの機能をオンにしてしまうと、バンクさせて右左折したときに音の位置関係が一時的にずれてしまう。視覚情報と聴覚情報のズレは好ましくないので、できればバイク運転時はヒアスルーモードにして、Dolby Head Tracking機能はオフで装着したほうがより安全であろう。

バス車中

今度は高速バスの中で試してみた。最近のバスはエンジンのダウンサイジングで排気量を抑えてありずいぶんと静かになったが、それでも高速道路を走行するので騒音はある。ノイズキャンセリングモードにすると、車内放送すら聞こえず次の停留所がわからなくなるほどだった。

次に路線バスで試した。路線バスと言っても、都市高速道路を連続して時速60キロメートルで走行する路線なので路線バスタイプで高速バスと同様の走行しているようなものだ。こちらは最後尾の座席、つまりエンジンの真上に座って試してみた。このタイプのバスが高速走行をすると常にターボが効いて走るので高音のタービン音が響くのだが、それすらまったく聞こえなかった。試しにヒアスルーモードにすると、エンジンとターボの爆音が耳に入ってきたので、効果は確かである。

最後に小ささゆえの失敗例をお伝えする。バッテリーを兼ねるケースは開けやすく磁石で固定されているが、ふたを開けるときに指で触れてしまうと簡単に外れる。航空機の中で足元に落としてしまうと軽さゆえに後席の足元まで転がってしまい、LCCのような狭い座席で満席だと自力で取るのはもはや不可能。後席の人に声をかけて取ってもらうか、降機の際にしゃがんで回収するしかない。高価なイヤホンなだけにケースからの取り出しは十分に注意したい。

※写真はすべて記者撮影

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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