白石晃士監督による映画『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』が、現在全国順次公開中です。
今から11年前の2012年、白石晃士が放った『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』はブッ飛んだ世界観でカルト的人気を獲得したフェイクドキュメンタリーシリーズに。そして前作より8年間の沈黙を破り、集大成とも、新たな序章ともいえる最新長編映画が今回、満を持して登場しました。
呪われた廃墟で撮影された投稿映像には、不気味な祭壇と、全身血まみれの“赤い女”、そしてどこにも映ってない赤ん坊の鳴き声が収められていた…。白石晃士監督にお話をうかがいました。
■公式サイト:https://kowasugi.com/ [リンク]
●すでに言われているところもあると思いますが、「コワすぎ!」シリーズの新作としては8年ぶり、今の心境としてはいかがでしょうか?
「コワすぎ!」シリーズとしては今回が最後と考えていますので、一番は「コワすぎ!」シリーズから解放されるというホッとした気持ちではあります(笑)。ほかの作品を撮っている間も「『コワすぎ!』撮らなくちゃ」「『コワすぎ!』終わらせなくちゃ」と思いながら過ごしていましたので、今こうしてカタチになり肩の荷が降りたなという感じなんです。
●同シリーズ生みの親としての責任感みたいなものも感じられていた?
そうですね。自分で撮り、話を終わらせたかったんです。ただ、色々と現実の壁があってちゃんとは話を終わらせられないので、せめてシリーズのピリオドを付ける作品を作らなくちゃいけないと思っていて。なのでいろいろと放置している謎があるのですが、それはともかく(笑)、作品としてピリオドを付けられたことでホッとしています。
●ポスタービジュアルもそれまでとはイメージが異なると言いますか、新しい層を意識されていたのでしょうか?
新しく今回の作品を初めて観る方には、何も考えず、軽い気持ちで観てほしいですね。確かに、これが1本目で観ても楽しめるようにも作っています。過去作とのつながりはないわけではないので過去シリーズを観ていれば見出せることもありますが、世界線もはっきり切り離されていますし、直接的にものすごくつながっているわけではないんです。
●そしてもちろん、昔からのファンの方々も楽しめますよね。
作っている人が同じなので(笑)。それはもちろん何かしら踏襲してしまうところは当然出て来ます。手法的にも今までの総集編的な感じであり、キャラクターもそうなっているので、そういう意味では過去と同じ匂いがするということは、別枠で確かにあります。ただ、過去作を全く知らなくても、初めての方も楽しめるようになっています、ということですね。
●フェイクドキュメンタリーは、たくさんの人を魅了しましたが、その魅力については改めていかがでしょうか?
それでも手法によるのですが、観ているこちらの世界とスクリーンの向こう側に同じ世界があると錯覚させて、見てる間はその世界を信じることができる。その映画が自分のいる世界と地続きで、他人事じゃない感じ。その臨場感と説得力があると映画に没入できます。物語の入り方、カメラの捉え方が自然であれば、そう感じてもらえると思います。そこが魅力的ですね。
●今回のシリーズにピリオドを打ち、監督として次なるステージでは何に挑戦なさるのでしょうか?
映画で大金持ちになること、ですかね(笑)。いやでもそれは真面目な話、なかなか考えにくいことではあるのですが、最終形態があるとすれば、そういうことになってくるのではと思います。要は映画を作りたいので、映画を作る上で金銭的な心配をしなくていい、そういう状態になれることが理想ですかね。映画を撮るための余裕がほしいという意味です。
●ちなみに予算の心配がなければ、どういう作品を撮りますか?
フェイクドキュメンタリーで、世界であまりやられていないような作品を撮ってみたいですかね。たとえばフェイクドキュメンタリーで地底世界に行くとか、フェイクドキュメンタリーで異世界に転生して、そのままとか(笑)。フェイクドキュメンタリーで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』みたいなことも視点が変わって面白い。いくらでもできるんです。
●今日はありがとうございました。最後に一言お願いいたします。
今までシリーズを応援してくれた方も、今回初めてご覧になる方も楽しめるように作った作品です。途中からジェットコースター状態になりますし、しかも普通ではない、叫びまくるようなハイテンション・ジェットコースターなので、それに乗るつもりで劇場に足を運んでほしいです。ホラーが楽しいことを体感できる作品だと思っています!
■ストーリー
怪奇系ドキュメンタリーを作ってきたプロデューサーの工藤(大迫茂生)は、コロナ禍の影響もあって倒産の危機に喘いでいた。そんな中、工藤のもとに1本の投稿動画が寄せられる。それは3人の若者が心霊スポットとされる廃墟を撮影したものだった。 そこには、全身に返り血を浴びたかのような“赤い女”が仁王立ちでこちらを睨んでいる戦慄の映像が収められていた――。
撮影=塚本桃
公開中