久間田琳加インタビュー「誰かの背中を押せる作品になれたら…」 白岩瑠姫(JO1)とのダブル主演映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』公開

  by ときたたかし  Tags :  

シリーズ累計発行部数55万部を突破した汐見夏衛の大ヒット小説を注目の新鋭・酒井麻衣監督が映画化した『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』が全国公開中です。

学校ではマスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜と、自由奔放で絵を描くことを愛する、銀髪のクラスメイト・青磁。正反対な性格のふたりが次第に距離を縮め、やがてふたりの過去が重なりあい、初めて誰にも言えなかった想いがあふれ出すストーリー。

その茜役を、「ブラザー・トラップ」(23/TBS)、『おとななじみ』(23)、「こっち向いてよ向井くん」(23/NTV)など話題作での主演やヒロイン役が続く久間田琳加さんが好演しています。ご本人にお話をうかがいました。

■公式サイト:https://yorukimi.asmik-ace.co.jp/ [リンク]

●今回のダブル主演作を含め、話題作・注目作への出演が続いてますが、この現況をどう受け止めていらっしゃいますか?

ありがたいことに充実した日々を送っているのですが、とはいえいつも不安と戦っているんです。お仕事をいただけていることはありがたいのですが、当たり前じゃない環境だと思うので、「これで大丈夫!」と思えたことはないんです。

●不安も時に感じるなか、ひとつひとつの作品にはどういう気持ちで臨まれているのですか?

たとえば現場でもひとつひとつ楽しむことが重要かなと思っていて、楽しめないと自分が表現したことも出しきれないと思うし、そこで出し切ってもしダメだったとしても、納得がいくと思うんです。

いろいろ出来なかった上でくよくよすることは仕方がないと思いますが、自分なりのものを表現していれば悔いはないなと。自分が楽しみながら、それを受け止めてくださる方がいればいいなと思いながらやってます。

●今回の現場は、どう楽しみましたか?

茜というキャラクターは、心情の変化が繊細だったんですが、それを自分でも感じ取りながらお芝居が出来た気がしています。それは青磁とのやり取りや、監督と相談しながらだったり、学生時代に感じたことがあるような感情を探すようなことだったり。その感情探しは楽しめたような気がします。

●どのように役柄を掘り下げたのでしょうか?

茜は最初本心を隠しているけれど、青磁と過ごすうちに徐々に感情を表に出すことができるようになっていくのですが、わたし自身が大きな声を出すことがなくなってきたので、学生時代を思い出す作業をたくさんしました。あとはマスクをしたままでのお芝居も今まで経験がなかったので、マスクが手放せない感覚になるってどういう感覚なんだろうというのを知るために、実際に女子高生の方にお話を聞いたりしました。

●その茜の変化を表現するために、一番大事にしたことは何ですか?

青磁との関係性です。彼のおかげで茜もどんどん変わっていくし、そこを軸としました。嫌いじゃないけれど、何か気になる存在から自分の中で変化をしていく感情は、常に持っているようにしました。ただ、茜になればなるほどしんどくて。我慢していることって辛いんですよね。クラスメイトはみんな、いい人たちなんです。でも嫌な人たちではないというか、みんなちょっとずつ仮面をかぶっている感じが、余計にしんどく感じました。とてもリアルな描写だったと思います。

●その青磁役の白岩瑠姫(JO1)さんは、世代も近いですよね。共演されてみていかがでしたか?

本作でご一緒することになって初めてお会いしたのですが、最初はわたしと同じでとても人見知りのようで、お互いインしてもまったく話せなかったのですが、勇気を出して話しかけてくださって、ありがたかったです。コミュニケーションの取り方がとてもお上手で、普段からグループで活動されていることもあると思うのですが、そういう能力が高くてすごいなと近くで見ていて感じましたね。

クラスでのシーンでもオフの時も中心にいるし、そういうチームワークを作っていく方ですね。わたしとは違うなと思いました(笑)。

●人見知りと以前もインタビューで言われていましたよね。

そうですね(笑)。直したいと思いつつ、ただ今回は、お話のスタートが青磁君と距離がある設定だったので、その時点ではどれくらい会話していたいものか考えると難しかったんです。前回の『おとななじみ』であれば共演者の方たちと仲良くしていてよかったのですが、今回は違ってお互いに「この人何なんだろう?」という状態のスタートだったので、自分から大きな一歩を踏み出すのは難しかったですね。

●このインタビューの冒頭で役柄の感情探しが楽しかったと言われていましたが、改めてお芝居の魅力は何でしょうか?

違う人になれることが楽しいです。今回はどちらかと言うと自分に近かったような気がするのですが。茜というキャラクターは、自分の想いが素直に言えないんです。わたしもなかなかストレートではないから、そこに親近感を感じました。言いたいことがあっても、遠回しに伝えたりしちゃうんです。そういうことを表現できることも醍醐味かなと思います。

●茜を演じることで、同じような悩みを持っている同世代の方へ寄り添う意味もありそうですよね。

茜のような学生さんは、少なくないような気がしました。わたしも学生だった頃、周囲の目を気にしたり、みんながどう思っているのかなと感じていたので、台本を読んだ時に心情がリアルだなと感じました。

●最後になりますが、映画をこれから観るファンの方たちへメッセージをお願いいたします。

今回はメッセージ性が強くて、誰かに寄り添える作品だなと確かに思います。自分も演じていて勇気がもらえて、茜の気持ちもわかるなと思いつつ、本当にちょっとずつでも歩んでいけばいいと、演じ切った後に思えました。一気に変われなくても、そういう気持ちを持つだけでいいのだと思えたので、誰かの背中を押せる作品になれたらいいなと思いました。そういうことが、スクリーンを通して伝わったらうれしいです。

■ストーリー

学校ではマスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。
自由奔放で絵を描くことを愛する、銀髪のクラスメイト・青磁。
何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手な茜だったが、
彼が描く絵と、まっすぐな性格に惹かれ、茜の世界はカラフルに色づきはじめる。

次第に距離を縮めていくふたりの過去はやがて重なりあい、
初めて誰にも言えなかった想いがあふれ出す――。

撮影=塚本桃

映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』

出演:白岩瑠姫(JO1)、久間田琳加
箭内夢菜、吉田ウーロン太、今井隆文、上杉柊平、鶴田真由
監督:酒井麻衣
原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版 刊)
脚本:イ・ナウォン、酒井麻衣
音楽:横山克、濱田菜月、主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
製作:『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース
配給:アスミック・エース

(C) 2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会

公開中

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo