総合格闘家として知られているボブ・サップ氏が、内縁関係にあった女性A子さんに対して6年間にわたって暴力をふるっていたとされる出来事。その情報が『週刊文春』(文藝春秋)2017年12月28日号にて報じられ、多くの人たちを驚かせた。
ボブ・サップ氏が週刊文春を訴えた
その後、ボブ・サップ氏は「名誉を棄損された」「フェイクニュースに翻弄されて莫大な損害を被った」として週刊文春を訴える行動に出た。
『FRIDAY』(講談社)2019年6月14日号には「東京地裁出廷 ボブ・サップ DV報道・文春への怒りは頂点だ!」と題した記事が掲載。記者の取材に対してボブ・サップ氏は以下のようにコメントしている。
<ボブ・サップ氏のコメント>
「俺の怒りはもはや頂点に達している。フェイクニュースに翻弄されて、莫大な損害を被(こうむ)ったんだ。今日は俺に向けられた疑惑を明らかにするため、地裁という名のリングに来た」「日本のファンに伝えたいことは一つ。俺は誓ってDVなんてしていない! 元恋人とはアメリカでも裁判になっているが、警察にもDVはなかったと認定されているんだ」(FRIDAYデジタルより)
週刊文春が「ほぼ勝利」
2020年9月4日、ボブ・サップ氏が起こした裁判の判決が言い渡された。結果として「鎮痛剤を1日10錠以上も飲むなどして鎮痛剤の中毒症状を呈していた」とする部分は真実と証明できないとのことで、週刊文春にボブ・サップ氏に20万円を支払う判決が出たが、そのほかの請求はすべて棄却された。
週刊文春の記事がフェイクニュースだと訴えたボブ・サップ氏だったが、逆に暴行の事実が露呈するかたちとなった。
<請求>
1. 被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する平成29年12月22日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2. 被告は、原告に対し、被告が発行する「週刊文春」誌の表表紙に別紙1記載の謝罪広告を同記載の掲載条件で1回掲載せよ。
3. 被告は、原告に対し、被告が発行する「週刊文春」誌の目次掲載頁に別紙2記載の謝罪広告を同記載の掲載条件で1回掲載せよ。
<摘示事実 / 要約>
1「言いがかりをつけて罵倒した」
2「1.5メートルの高さから床に投げつけた」「体中を殴り続けながら衣類をはぎとり部屋の外に追い出した」
3「バリカンで髪を刈るなどの暴行をした」
4「全身を殴る蹴るなどの暴行をした」
5「俺はもう死ぬ、今大量の睡眠薬を飲んだなどと話し復縁を強要した」
6「日常的に暴行と脅迫行為をしていた」
7「鼓膜を破ったり、鼻を曲げたり、鋤骨にひびを入れた」
8「鎮痛剤を1日10錠も飲んで鎮痛剤の中毒症状を呈していた」
9「運転中に不適切な言葉を言ったりスピードを出したり急ブレーキを踏んだりするなどした」
10「7000通を超えるメッセージを送った」
11「いつでもお前を監視している、この熊のような手で人も殺せる、などのメッセージを送った」
<判決言渡 / 一部引用>
「摘示事実1~7及び9~11は、原告の交際相手であったA子に対する暴行、暴言等やこれに関連するメッセージに関するものであるところ、暴行については、少なくとも刑法上の暴行罪に当たり得るものであるし、交際相手に対する暴行、暴言等については、社会的に解決すべき重要な問題の一つであるDVに関するものであること、原告は、主に格闘家として活動するとともに、芸能人としてテレビCMに出演するなどしていた者であり、その格闘家や芸能人として社会に及ぼす影響力は軽微なものとは言い難いものであることに照らすと、公共の利害に関する事実であるというべきである。そして摘示事実8も、A子に対する暴行、暴言等の背景事情として取り上げられたものであるから、公共の利害に関する事実であるというべきである。また、本件記事は、その表現に過激な部分があることも否定できないものの、A子から直接取材を行うだけでなく、A子から、診断情報提供書及び診断書のほか、写真、メッセージ等を含む客観的資料の提供を受けた上で作成されていること等に照らすと、公益目的も認められるべきである」(詳細は記事の判決言渡画像をご覧ください)
A子さんとの裁判でも暴力が認められた
その裁判とは別に、2020年12月15日、A子さんがボブ・サップ氏を訴えた裁判の判決が出た。かつてA子さんがボブ・サップ氏から受け続けた暴行を訴えた裁判である。
<事案の要旨>
「本件は、原告が、内縁関係にあった被告から、内縁関係を解消するまでの約6年間にわたり繰り返し暴力を振るわれ、暴言を吐かれたことにより、身体に傷害を受け、脊髄変形の後遺障害が残った上、PTSDやうつ病に罹患したと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、逸失利益、慰謝料及び弁護士費用の合計3919万7853円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年1月6日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である」
<判決言渡 / 主文>
1. 被告は、原告に対し、3919万7853円及びこれに対する平成29年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2. 訴訟費用は被告の負担とする。
3. この判決は、仮に執行することができる。
<判決言渡 / 結論>
「原告の請求は全部理由があるから認容することとして、主文のとおり判決する」(詳細は記事の判決言渡画像をご覧ください)
A子さん「ボブがお金を払ってくれない」
A子さんに対して慰謝料や弁護士費用等の支払いを命じられているボブ・サップ氏だが、2023年8月29日の段階で、彼から1円も支払われていないそうだ。
裁判所は差し押さえ命令をボブ・サップ氏が携わっているブレイキングダウンほか複数の関係者に送っているが、支払いされる気配はいっさいないという。事実ならば、どうして支払われないのか? 筆者はこの件に関して、継続して取材を進めていく。
ボブサップ氏が日本人女性に暴行。約3900万円の支払いが命じられているにもかかわらず、いまだに支払われていない件に関して取材を進めているのだが、損害賠償請求で「差し押さえ命令が出ても差し押さえれない状況」があることがリアルにあり、被害者が二重にも三重にも苦しむ状況を目の当たりにする pic.twitter.com/N2MQmm7FdB
— クドウ@地球食べ歩き (@kudo_pon) September 20, 2023
ボブサップ氏が日本人女性に暴行した件を週刊文春がスクープ。ボブが怒って文春を裁判で訴えた。記事の精神薬に関する部分は事実と認められず文春に20万の支払いが生じたが、逆に「ボブサップが女性に暴行した」との部分は裁判所に認められてしまい、ボブには嬉しくない結果に。事実上、文春の勝利 pic.twitter.com/Cj1gNqCoVN
— クドウ@地球食べ歩き (@kudo_pon) September 20, 2023
※判決文等の記事画像はA子さんの許可を得て掲載