5人の身体が入れ替わる新感覚ラブコメディ映画『GONZA』 主演・上村 侑インタビュー「物理的に入れ替わったことで相手の立場になり、想いを痛感したことは大事な経験でした」

  by ときたたかし  Tags :  

絵に描いたような“普通”が代名詞の主人公・鹿島拓海が新人研修で奈良を訪れ、「人間が食べると罰が当たる」とされる鹿せんべいをつまみ食いしてしまったがために同じチームの新入社員5人の身体が入れ替わってしまう新感覚ラブコメディ、映画『GONZA』が全国順次公開中(別府ブルーバード劇場 7/28~8/3、青森・シネマ・ディクト9/30~ほか)です。

その主人公・鹿島拓海役を、映画『許された子供たち』(20)で主演に抜擢され、第75回毎日映画コンクールでスポニチグランプリ新人賞を受賞。昨年は日本テレビ系ドラマ「ファーストペンギン」出演や、映画『近江商人、走る!』(22)で主演を務めるなど、目覚ましい活躍を見せる上村侑さんが熱演しています。ご本人にお話をうかがいました。

■公式サイト:https://gonza-movie.com/ [リンク]

●5人の身体が入れ替わる物語はなかなかない設定でインパクトもありましたが、脚本の最初の印象はいかがでしたか?

もともと脚本を読むこと自体は苦ではないタイプなのですが、今回の脚本は誰がどうなったのかを理解するのに時間がかかり、セリフが分からなくなって気持ちが追いつかなかったですね(苦笑)。だいたい普段は1回読めば内容が分かるところ、元の名前に加えてコードネームもあり、1ページごとに確かめないといけなくて、けっこう大変でした。

●完成した映像を観ると、それを追う楽しみもありますが、文字上だと確かに大変そうです。

そうですね。映像だと関係図が分かりやすいので大丈夫だと思いますが、脚本上で文字だけで把握する作業は大変でした(笑)。

●そのことも含めて本作の撮影に入る前、何が一番楽しみでしたか?

脚本の難易度とは裏腹に、共演者のみなさんとの撮影が楽しみでした。実はインの前日に現場に前乗りをしていたのですが、その時に監督がみんなを集めて、「誰が主演かどうかではなく、お芝居を全員で競い合っていい」と言われたんです。一応自分が主演なので一瞬「どういうこと?」となりましたが(笑)、監督はあえてそう言い、僕らのモチベーションを上げてくることを仕掛けてこられた。自分としてはゾクゾクしました。

●ゲームしか取り得がなさそうな鹿島拓海というキャラクターは、どのように掘り下げて演じたのですか?

鹿島拓海という男の子は、平均点で大学を卒業した新卒の子です。あまり特徴がないので、どうやって特徴を付けていこうかと悩みましたが、逆に言うと周囲が特徴ありすぎなので(笑)、特徴がないのが特徴でいいのではないか、と思うようになりました。フックがないので違和感がないように、それをいかに演じ切るかが役作りでしたかね。

ただ、作品の中では身体が入れ替わる北嶋ナディア(坂巻有紗)の役作りのほうが大変でした。女性を演じる、文化圏が違う人を演じることが、僕には難しいんです。なぜなら、その人たちのことをすべて知れることはないので、自分の印象で演じてしまうことになりますよね。そういう意味でも観察と研究・勉強の連続でした。

●そこには多様性というテーマもありますが、身体が入れ替わることによって当事者になるという。

そうですね。物理的にと言いますか、相手の立場になりますからね。より、そのことを僕自身も痛感した作品ではあるかも知れませんね。

ただ、重い感じの言葉を言っていますが、基本はラブコメディなので、そこを意識しすぎずに観ていただければと思います。ラブコメで楽しい作品で、気楽に(LGBTQ やダイバーシティーなどの)社会的なテーマに触れられる作品になればいいなと思っているので、みなさんにとってそういうきっかけになればうれしく思います。

●また、今回の『GONZA』に参加して俳優としてよかったことは何でしょうか?

異性を演じることの難しさは、経験出来てよかったです。これまで入れ替わりものの作品が、そんなに頻繁にあるわけでもなかったので、今回実際に入れ替わり、誰かを演じながら、さらに誰かを演じる難しさは経験出来てよかったなと思います。

●最後になりますが、みなさんにメッセージをお願いいたします。

どんな映画でもみなさんの元に届いて、それぞれの感想をお持ちになって初めて完成するものだと思っています。これからどんどん劇場が拡大していく予定なので、みなさんの声が力になります。ぜひとも拡散だったりして感想を共有していただけたらなと思います!

■ストーリー

大のゲーム好き以外は取り柄がない鹿島拓海は、奈良で実施する新人研修に初日から遅刻してしまう。あわてて走り込んだ研修センターの廊下で、すれ違いざまに才色兼備な新人女性社員・北嶋ナディアとぶつかり一目惚れ!
5人が一組となり、研修最終日にプレゼン発表のミッションがくだる。拓海はナディアや英美里、王、イバンと同じチームになり、資料作りをしていると、予期せぬ出来事が!
神様のお供物・権座(GONZA)を口にした後、「人間が食べると罰が当たる」とされる鹿せんべいをつまみ食いした拓海のせいで、チーム5人の身体が入れ替わっちゃった!?
「僕の私の身体はどこ?」「秘密がバレてしまう!」「思うように動けない?」「そもそもなんで!!!」
LGBTQ、車イスユーザーなどごちゃまぜな状態に。
うろたえる5人に、研修担当社員・松永は、奈良観光気分を味わえるように開発されたゲーム「ファイ奈良ファンタジー」のヒントを出した。
入れ替わったことで、私ではない誰かの悩みやコンプレックスが浮き彫りになり、ハプニングと想いが交錯する中で徐々に見えてくる現実(リアル)。プレゼン最終日までに、果たして5人は元に戻ることが出来るのか?

配給:ベストブレーン
(C) 2023「GONZA」製作委員会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo