琺瑯看板(ホーロー看板)の収集日本一と呼ばれ、マスコミや全国のレトロイベントから声がかかる佐溝力(さみぞちから)氏に、ホーロー看板と広告メディアの移り変わりについて話を聞くことができました。
佐溝力さん(サミゾチカラ)とは
ホーロー看板の収取を個人的に青年時代から行い、現在では『サミゾチカラコレクション』として自宅を改装した展示館に公開する活動をしています。ただ、コレクションするだけでなく、当時の背景などの情報も調査しています。
このため、看板に書かれている商品の紹介から当時の背景までを面白く紹介することができます。退屈な古物に関する展示も、彼の力にかかれば面白くなります。
自宅の壁にはホーロー看板のコレクションを展示。
佐溝さんを知っている人には大量の『太田胃散』はおなじみです。
ホーロー看板という広告は、ネットのバナー広告やSNSに近い
今主流のSNSを活用したバイラルネットワークによる広告や、バナー広告の貼り付けは、ホーロー看板のモデルと非常に似ています。
テレビ、ラジオ、雑誌、新聞(4マスと呼ばれる)の広告方法は、全く同じ広告を大勢に向って配信する方法です。一方、ネットのバナー広告は少ない閲覧数のブログやウェブサイトにも貼り付けます。もちろん、マスメディア並みに集客力のあるページにバナーが張り付けられることもありますが、ほとんどは小規模のページです。
ホーロー看板も同じく、生活圏内の住宅の壁に貼り付けられています。 その付近に生活している人に地味に商品購入を訴えかける効果があります。
ホーロー看板もバナー広告も、その場所では露出度が少ないですが、大量に貼り付けることにより全体の広告効果を狙っています。
面白いホーロー看板
ホーロー看板という広告メディアが主流であった昭和初期は単語単位でしか文字を読めない人も多く、強烈なキーワードを使ったものが多いです。 現代だとストレートすぎて誇大広告になりそうな内容のものも多いです。
「レコード石鹸」「レコード蝋燭」
商品名に「レコード」(record,記録)とつく物は長持ちするもの
「魔法焜炉」
魔法とは大幅なパフォーマンスアップのキーワード。魔法瓶は驚異的な保温力、魔法焜炉(コンロ)は高い火力をしめす。
「十年の光り頭も断じて生へる 高貴毛生液 ノーボールド」
今では考えられない大げさなキーワード。今では誇大広告だと言われそうなキーワードです。
SNSの機能としてのホーロー看板
ホーロー看板は実際の家の壁に貼り付けるため、その内容は家の持ち主の品位にもかかわってきます。納得できない商品の看板は張ることもありません。また、途中で評判が悪くなった場合は速攻で外してしまうため、看板が維持されていることは良い品という証明にもなります。
家の持ち主が地元の名士や力のある商店であれば、その商品の力は地元では強いのものとなります。これらの動きは小規模でありますが、SNSと同じようなネットワークを構築していると考えられます。
昭和初期に販売された自転車用の『ナショナルランプ』のプロモーショングッズ。店に掛ける看板と家でランプを保管するホルダが付いた看板。遊びに来た友人知人が、家の看板を見てナショナルランプを購入する流れは、“リツイート”に相当する効果があったと思われます。
ホーロー看板の衰退
ホーロー看板が衰退した理由は、商品のライフサイクルが短くなったためです。ホーロー看板は貼り付けたら、内容の変更や付け替えに労力が必要です。 このため、雑誌やラジオなどの「残らない」広告に移行していきました。
SNSやバナー広告はホーロー看板の悪いところをなくし、住宅地のワンブロックで行われていたことが全国レベルで行えるようになったからこそ、普及したと思われます。 さらに『Google AdSense』のような、広告内容が自動的に変わるものは絶対にホーロー看板では無理です。
2013年4月3日から展示会が開催されます
今回インタビューした佐溝力さんが監修した展示会『戦後昭和の暮らしの道具と広告資料展』が開催されます。また、5月4日には本人が解説を行うギャラリートークも開催されます。場所は愛知県豊川市民俗資料館(電話0533-93-3013)です。
取材後にリーフレットをもらいました。佐溝さんの地元の豊川市民俗資料館が保管している古道具と本人所有の看板とのコラボレーション展示が行われます(開催期間は2013年4月3日~6月30日)。ゴールデンウィークの5月4日には佐溝力さん本人によるギャラリートークが開催されます。
サミゾチカラコレクション-琺瑯看板 – YouTube
http://www.youtube.com/playlist?list=PLB12f_7c_0I6M1usVk42nI3ac40U5RQ6S[リンク]
佐溝力さんの公式Webサイト
http://www.ne.jp/asahi/teruo/i/samizo/tikara.html