3月12日から、バチカンでローマ法王の選挙がはじまりました。法王選挙のことをラテン語で「コンクラーベ」と言うそうです。といっても、私たち日本人にとっては「根比べ? 何それ?」ですよね。
ローマ法王ってどれくらいスゴいの?
間違いなくスゴい人です。なにせ全世界に12億人いるキリスト教・カトリック信者の頂点にいるのですから。さらにスゴいことにバチカン市国の国家元首の地位も兼務しています。
バチカン市国というのは、イタリア・ローマの中にある世界最小の独立国家です。国土全域が世界遺産になっており、サン・ピエトロ大聖堂やシスティーナ礼拝堂などは観光地として超有名です。
つまりローマ法王は、教祖と大統領を兼ねているわけです。そんな人、他にいませんよね。
ところで「ローマ法王」なの? それとも「ローマ教皇」なの?
今回、選挙があることもあって、日本のメディアでも「ローマ法王」関連のニュースが多くなっています。ただ、「あれっ、世界史の授業では“ローマ教皇”って習ったような気がするんだけど……」と思っている人も多いのではないでしょうか。
実際のところ、「ローマ法王」なのでしょうか? それとも「ローマ教皇」なのでしょうか? この疑問に対しては、日本のカトリック教会の中央団体であるカトリック中央協議会が公式サイトで説明しています。
教会では「ローマ教皇」を使います。
以前はたしかに、日本のカトリック教会の中でも混用されていました。そこで日本の司教団は、1981年2月のヨハネ・パウロ2世の来日を機会に、「ローマ教皇」に統一することにしました。「教える」という字のほうが、教皇の職務をよく表わすからです。
その時以来、たびたびマスコミ各社に「ローマ教皇という名称を使ってください」とお願いしていますが、残念ながら実現していません。
なるほど、正式には「ローマ教皇」なんですね。ただ、日本のメディアは、カトリック教会からお願いされても、「ローマ法王」と使い続けています。なぜなんでしょう?
考えられる理由は2つあると思います。
1 日本政府による公式の呼称が「ローマ法王」だから
2 皇室を考慮して
日本とバチカン市国は、1942年に国交を樹立しました。当時の定訳は「ローマ法王」だったため、その名称で日本政府に申請し、バチカン大使館は「ローマ法王庁大使館」と呼称されることになりました。
その後カトリック教会は、「ローマ教皇庁大使館」への名称変更を日本政府に申請しましたが、「政変が起きて国名が変わるなどしない限り、一度登録した名称は変更不能」ということで却下されました。そのため、官報や外務省の文書に至るまで、日本政府による公式の呼称は現在も「ローマ法王」になっています。
加えて、日本では「皇」という字は主に天皇および皇室に使われる字です。日本のメディアは、皇室関連の記事にはかなり神経を使っているため、避けている可能性があります。
今回の選挙について
そもそも今回の選挙が行われるのは、本来は終身制の教皇位をベネディクト16世が2月末に退位したからです。生前退位はここ700年間、前例がなかったため、バチカンは上へ下への大騒ぎだったといいます。
さて、ベネディクト16世は退位の理由について「もう86歳と高齢だから」と発表していました。ただ、今回の有力候補を見てみますと、スコラ枢機卿(イタリア・ミラノ大司教、71歳)、シェレル枢機卿(ブラジル・サンパウロ大司教、63歳)、ウエレット枢機卿(カナダ法王庁司教省長官、68歳)、タークソン枢機卿(ガーナ法王庁正義と平和評議会議長、64歳)と皆さんかなりの高齢者です。高位の聖職者はどうしても高齢になってしまいますが、これだとまた近いうちに選挙があるのではと思ってしまいますね。
画像:サン・ピエトロ大聖堂(by air babble)
http://www.flickr.com/photos/intentional_accident/2377020879/