映画『MEMORY メモリー』リーアム・ニーソン インタビュー 「ヒットマンでありながら、いつかは自分の命を奪う病を抱えている。この設定はオリジナルだと思った」

  by ときたたかし  Tags :  

大ヒットした『96時間』シリーズなど、アクション・スターとして一時代を築き上げて来た名優リーアム・ニーソンが主演したタイムリミット・アクション、映画『MEMORY メモリー』が公開中です。

昨年70歳を迎えたリーアムが、アルツハイマーで記憶を失っていく殺し屋アレックス・ルイス役に挑み、「子どもは絶対に殺さない」という誓いの下、一生で一度の正義を貫く悪のヒーローを熱演しています。

『007』シリーズのマーティン・キャンベル監督との仕事、『L.A.コンフィデンシャル』のガイ・ピアース、『007 スペクター』のモニカ・ベルッチとの共演の感想、今後のことまで、ご本人にお話を聞きました。

■公式サイト:https://memory-movie.jp/ [リンク]

●先が読めない展開も見逃せないですが、本作のどこに魅力を感じましたか?

プロデューサーに本作の元になっている2004年のベルギー版を見せてもらい、とても出来がいいと思ったんだ。特にヒットマンでありながらいつかは自分の命を奪う病を抱えている、この設定はオリジナルだと。興味が湧いたし、認知症やアルツハイマーのリサーチもして参加したよ。

●そのアルツハイマーについて、演じる上で気を付けたことは何でしょうか?

とにかく誇張をしないことは意識していた。アルツハイマーという要素を抑えた形で演技していくことも意識していた。映画はアクション・スリラーというジャンルになると思うけれど、クライマックスに向けて盛り上がっていくことを求められるから、そのペースにも気をつけたよ。

●マーティン・キャンベル監督との仕事で、印象に残ったことはありますか?

彼の現場では皆が平等なんだ。時に俳優だけ特別扱いされる現場もあるけれど、彼の現場ではそういうことはない。そこが好きだ。監督は撮るシーンのビジョンを語ってくれるが、みんなの意見にもすごくオープンだ。僕もいろいろ提案したりした。ぜひまたタッグを組みたいと思ったよ。

●ガイ・ピアース、モニカ・ベルッチとの共演の感想はいかがですか?

ガイ・ピアースは『L.A.コンフィデンシャル』の頃から僕はとても好きで、役者が役者に惚れるタイプの男だよ。そして彼はシーンを撮っている時に不誠実であることが不可能なタイプでもある。モニカとは今回初めての共演だったが、『パッション』などの作品で知ってはいた。彼女も他の人のアイデアや提案にとてもオープンで、一緒に出来て楽しかったよ。

●最近では『96時間』などアクションのイメージがありますが、作品を選ぶ基準は何でしょうか?

僕の作品選びの基準は、いつも脚本の完成度だよ。どんな映画でも、基礎の部分は脚本にあると思っているからね。確かに『96時間』以降はアクション映画に出演して来たとは思うけれども、いくつ銃撃シーンがあろうとファイトシーンがあろうと、大切なのは人間的な側面がそこにしっかりと描かれているかどうか、それが脚本に強く出ているかどうかだと思う。

去年僕は70歳になったけれども、待機作のうち3本がアクションの要素がある。ただ、今後は少しずつアクションの要素が減っていくと思っているし、観客もそろそろそんな風になるのではないかと思っていると思う。常に自分の年齢に合ったアクションを演じて来たよ。70歳なのに30歳のアクションを見せようとは僕は思っていないし、観客をリスペクトしているからそういうことはしたくはないんだ。

今後は『裸の銃を持つ男』のリブートに参加することが決まっていて、できれば今年の秋に撮影が始まると思うけれど、コメディの世界に足を踏み入れることになるよね。

●ちなみにこれまでたくさんのキャラクターを演じられて来たと思いますが、どのキャラキターがお気に入りですか?

もちろん全部のキャラクターが大好きだけれど、マイケル・コリンズ(『マイケル・コリンズ』)が映画としてもそうだし、自分の心の中の特別な存在としてあり続けているかな。実在の人物としてご存じだと思うけれど、現代のアイルランド共和国の創立者のひとりであり、考えたら28年も前になってしまうけれど、アイルランドで撮影をした作品だ。

その頃、僕の長男が生まれマイケルとしたこともあり、自分にとっても特別な時間だった。ワーナー・ブラザースが製作にコミットするのに10年以上かかったけれど、というのも当時北アイルランドで戦争が起こり、そもそもマイケル・コリンズが昔も今もなお物議を醸し出す人物でもあった。とにかくいろいろな意味で、自分の心の中の特別な場所にこの作品はあるという感じがする。また監督のニール・ジョーダンとは『探偵マーロウ』という作品で再タッグを組むことが出来て、それも素敵な時間だったよ。

●主人公は自分の正義を成し遂げ、ご自身もたくさんのことを叶えていると思いますが、これだけは成し遂げたいことはありますか?

ふたりの息子にとっていい父親であり続けたい、これはとても重要なことだよね。ユニセフの親善大使も長年務めているので、もっといろいろなところに足を運び、何か問題があるところに自分が参加することで、より光りが当てられるのであれば、それもやっていきたい。僕の友人であるオーランド・ブルームがウクライナで子どもたちと遊んでいる動画を見たけれど、もっとそうしたいと思った。僕にももっとやれることがあると思うので、そういうことをしていきたいと思っているところだよ。

■ストーリー

完璧な殺し屋として、裏社会でその名を馳せてきたアレックスが、引退を決意する。アルツハイマーを発症し、任務の詳細を覚えられなくなってしまったのだ。これが最後と決めた仕事を引き受けるが、ターゲットが少女だと知ったアレックスは、怒りに震え契約を破棄する。「子供だけは守る」という唯一の信念を貫くため、独自の捜査を開始したアレックスは、財閥や大富豪を顧客とする、巨大な人身売買組織の存在を突き止める──。

『MEMORY メモリー』
公開中
(C) 2021, BBP Memory, LLC. All rights reserved.

配給:ショウゲート

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo