映画『こわれること いきること』主演・吉田伶香インタビュー 「死と介護についてわたし自身も深く考えさせられました」

  by ときたたかし  Tags :  

東日本大震災で家族を失い、生き残った主人公・遥が、職場の介護施設での出会いを通して成長していく姿を描く、映画『こわれること いきること』が全国公開となりました。

天災や認知症、高齢化社会をモチーフにしつつ、人の生き方や人生の終焉で願うこととは何かを問う“人間の尊厳”に迫る命の物語。その主演の遥役を、「めざましテレビ」イマドキガールメンバーとして朝の顔となり、ドラマ・CMなどで活躍中の吉田伶香さんがひたむきに演じています。

この公開を記念して、ご本人にお話をうかがいました。

■公式サイト:https://koikoto-movie.com/ [リンク]

●いくつものテーマやメッセージ性が込められている作品だと思いますが、ご自身の第一印象はいかがでしたか?

東日本大震災についての物語でもあるので、まず重みを感じました。あの12年前当時、自分自身も経験したことではあったのですが、震源地に近い人たちはあのような体験をされていたのかと、脚本を読み改めて知りました。わたし自身は揺れや停電程度の体験でしたが、そのことも思い出しながら、自分とリンクさせつつ福島の方たちの体験を追っていきました。

●監督や製作の方たちから作品についてどのような説明がありましたか?

わたしが演じる河合遥かという役柄について、何度も話し合いを重ねました。一言のセリフでも、いい意味なのか悪い意味なのか、言い方によって意味が変わって来ることがあり、文字だけだとわからないこともありますすよね。わたしは遥ではないから分からないので、確認するというか、みんなで遥ならこう言うだろうと、人物象について固めて行きました。

●今思い返してみると、どういう女の子だったと思いますか?

遥は芯が強く、感情豊かな子だなと思っていて、かつ弱さもあるかなと思いました。人として強いのではなく、芯の強さですよね。一人で何でもやっていける強い子ではなく、普通の女の子かなと思うんです。それでも自暴自棄になり、震災後に人との関りを絶ってしまう。そういうショックなことばあれば、誰だって絶対そうなってしまうと思うんです。

●とても人間らしいキャラクターであり、共感も集めそうな子ですよね。

遥のような状態は誰がなってもおかしくない普通のことだと思うのですが、そこに向き合い立ち直るか、逃げ続けるか、たぶんその人次第の判断だと思うんです。彼女は向き合うことを選び、介護士として働いて、先生とも再会する。変わり果てた姿に動揺するも、それも受け入れて、彼女なりの強い性格がそこから見えるのかなと、改めて思っています。

●公開を迎え、本作からはご自身は何を感じ取りましたか?

介護について、死について、考えさせられました。わたしもいずれ介護をすることになると思うのですが、認知症の場合、正しいことを言いたくなるというか、「今言ったでしょ!」みたいな怒りの感情が芽生えちゃうと思うんです。でも、相手がわからないからこそ、合わせることも大事だなと思いました。

それと人はいずれ必ず死にますが、早いか遅いかで変わって来ると思うんです。たとえば死が早すぎて現実を受け入れられないとなった時に、変えられないさだめもあると思うんです。そこに向き合うことの勇気、当たり前って当たり前ではないなって。これは忘れがちだし、今は何もないから、改めて映画一本を通して思い知らされたところはあります。

●ところで21歳になり、区切りという意味で何か想いを新たにしたことなどは?

去年ようやく20歳になり、成人したばかりですが、21歳はまた20歳とは違うと思いました。たった1歳差なのに20歳と21歳はかなり変わりますよね。21歳はより甘えられないというか、厳しくなっていくのかなと思っていて、気を引き締めていかないといけないと感じているところです。自分が21歳になるのがまだ不思議なのですが、21歳らしさとはどういう感じなのかまだわからないですが、去年よりは1ミリでもいいのでレベルアップしたいなと思っています。

●今回の映画の主演はいかがでしたか?

出来た、よりは反省点が多かったですね。場数が自信を持って言えるほどまだないので、この経験を次に活かせたらと思っています。

●最後に映画を待っているファンの方たちへメッセージをお願いします。

東日本大震災の物語で、毎日の日常がどれだけ有難いか、映画などを観ると影響を受けて思い直すことってあると思うのですが、そういう方たちにも観ていただきたいですし、一度立ち止まった方も遥が向き合って奮闘して、最後まで努力していく姿を観ることで背中を押してもらえることもあるかと思うので、そういう方々にも観てほしいです。

■ストーリー

東京の介護専門学校に通う遥は、地元にいる従姉妹の結婚式に出席しなかった。
式当日の2011年3月11日、東日本大震災が発生。
海岸通りに面した式場に向かっていた遥の家族4人は、車で被災し亡くなってしまった。
一人だけ生き残った彼女は、深い贖罪の意識と喪失感に苛まれ、そして時間だけがすぎていった。
誰にも連絡をせず、人間関係を遮断しながら専門学校で学び、卒業後、地元の介護施設で働き始める。
わがままな老人たちの世話をしながら忙しくしているものの、遥の心の中は変わらずに虚しさで溢れていた。
そんなある日、高校の恩師で吹奏楽部顧問だった小田由美子が夫に付き添われて介護施設に入居してくるのだが……。

吉田伶香 藤田朋子 宮川一朗太 斉藤 暁 寺田 農
風祭ゆき 丸純子 兼次要那 福原稚菜 大野佑紀奈 神倉千晶 木村八重子 五頭岳夫 外波山文明

監督・脚本・編集:北沢幸雄

作曲・編曲:富澤タク エンディングテーマ「小さな声でも」(Toshie)
製作:三英堂商事/アイ・エム・ティ
配給:アイ・エム・ティ
配給協力:FLICKK
2022年/126分/ステレオ
(C) 三英堂商事/アイ・エム・ティ

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo