映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』池川侑希弥&田代輝インタビュー 「広い世代の方に楽しんでいただける映画です」「映画から勇気を受け取ってもらえたらうれしいです」

  by ときたたかし  Tags :  

足立紳監督が20年がかりで念願の企画を実現させたという映画、『雑魚どもよ、大志を抱け!』が現在、全国公開中です。

主人公は7人の小学生男子たち。生意気ざかりでイタズラが大好きで、気の合う仲間たちと過ごす毎日はワクワクと興奮の連続……と言いたいところだが、人生は子ども相手でも優しくはしてくれない。誰もがコンプレックスや葛藤を抱えながら、何かをつかみ取ろうとするかけがえのない日々を、真正面から描いた青春映画です。

足立監督の十八番であり、分身ともいえる“情けない主人公”役は、関西ジャニーズJr.内のグループ「Boys be」のメンバーとしても活躍する池川侑希弥さん。日本版『CUBE』(21)に出演した田代輝などオーディションで選ばれた子役たちが自然体なアンサンブル演技で魅せてくれます。その公開を記念して、高崎瞬役の池川侑希弥さん、村瀬隆造役の田代輝さんの2ショットインタビューが実現しました!ご紹介します。

■公式サイト:https://zakodomoyo-movie.jp/ [リンク]

●オーディションはどのようなものだったのでしょうか?

池川:台本を渡されて、覚えるべきセリフを指定されました。あと、台本を読んだ感想文を提出するようにとも言われました。映画のオーディションが初めてだったので、感想文を出すのは普通だと思っていたのですが、取材などで感想文の話をすると驚かれることが多くて。オーディションで感想文を提出するのは珍しいということは、後から知りました(笑)。

田代:最初のオーディションは「笑って」「泣いて」「思いっきり笑って」「思いっきり泣いて」と、感情の表現をやるという内容でした。その後、瞬と隆三の掛け合いのシーンを覚えてくるように言われて参加したオーディションで、池川くんと一緒に演じました。実際の映画にもある二人のシーンだったのですが、最初に会ったときに「瞬だ!」って思いました。

池川:田代くんのお芝居を初めて見たときに、間の取り方が抜群にうまいと思いました。演技経験が少ない僕でも最初から「やりやすい」と感じるくらいに、引っ張られるというか。うますぎてやりやすいけれど、うますぎて嫌やなとも思ったりして(笑)。その日、家に帰ったときに「一人、ヤバい子おった」と家族に報告したくらい、別格のうまさでした。比べられたらヤバいぞと思ったけれど、一緒にできると決まったときはすごくうれしかったです。

●同年代の共演者が多い現場はいかがでしたか?

池川:小林(幸介)役の坂元(愛登)くんは、自分の撮影がないときにも現場に来ていました。自分の出演シーンがなくても現場に来て学ぶことの大切さを、教えてもらった気がします。

田代:みんなすごく仲が良くて。特に僕と、池川くんと坂元くんは一緒にいることが多かったです。ご飯もお風呂も毎日一緒で、すごく楽しい現場でした。

●演じた役に感じたこと、共感できたところ、理解しにくかったところなどを教えてください。

池川:友達関係での立ち位置は理解しやすかったです。僕はみんなをまとめるのが苦手なので、隆造についていく瞬の気持ちはすごくよく分かります。ただ、僕はどちらかというと明るいほう。瞬からは暗さを感じる部分もあって、分かり得なくはないけれど、自分とは違うなと思いました。

田代:僕は学級委員をやっていてクラスをまとめています。なので、隆造と共通点はあると思いながら演じていました。難しかったのは、孤独を抱えている隆造の気持ちを理解すること。そこは自分の中に似ている部分でなかったけれど、台本を読み込むことで理解するようにしました。

●ロケ地となった飛騨市は、昭和の雰囲気も残る素敵な場所だったようですね。

池川:飛騨市に行ったのは今回が初めてです。社会での授業で習ったあの「飛騨山脈」か…って思いました。4月でも雪も残っていてとても寒かったですが、飛騨市の方々が除雪などに協力してくださったり、たくさんの差し入れをしてくださったり。本当にありがたかったです。雪も山もとても綺麗な場所でした。

田代:すごく寒かったけれど、自然がとても綺麗でした。空気もとてもおいしくて、毎日がとても新鮮という印象が残っています。東京ではあまり見ることのない自然の美しさを堪能しました。

●物語でも重要なポイントにもなる「地獄トンネル」はどんな場所でしたか?

池川:周りに共演者やスタッフさんがいたので怖くはなかったけれど、実際に一人で行ったらかなり怖いと思います。奥が全然見えないし、廃線になっている場所だから、何が起きるか分からない、何が起きてもおかしくないという気持ちは正直ありました。奥が全く見えないから、僕だったら入らないです(笑)。

田代:映画ではとても重要な場所として描かれていますし、隆造はいつもあの場所を訪れてお願い事をしています。映画にとっても隆造にとっても大事な場所なので、確かに一人では行きたくないちょっと怖さも感じる場所だけど、僕の中ではとても印象に残っているスポットです。

●オーディションでのお芝居の印象についてのお話がありましたが、ご本人の印象についてはいかがですか?

池川:オーディション会場にいたのはほぼ同世代で、田代くんは1コ年上です。たった1歳だけど、すごくしっかりしていると思いました。周りがしっかり見れている、だけど、同い年のノリもできる、ちょっと面白い人だと思いました。隆造にリンクするところはありました。

田代:池川くんの印象は気配りのできる人。あと、すごく優しい人で、人として尊敬できると思いました。撮影を通してたくさん話す中で、物事の考え方などもすごく素敵だと感じることが多くて。話せば話すほど好きになるし、池川くんのようになれたらいいなと思っているくらいです。優しさに溢れる素敵な人です!

●今日は久々の再会とのことですが、印象に変化はありましたか?

田代:背が伸びたよね?
池川:前回、会ったときよりも1センチ伸びた。分かる?
田代:目線が変わったなって。
池川:田代くんは髪が短くなったよね?
田代:池川くんも前回、取材で会った時と髪型が変わってる。でも、中身は変わってないね。
池川:変わったのは髪型とか外見だけ。いつ会っても中身は変わらない。出会ったときの印象と変わってないところがいいところだと思っています!

●足立紳監督とのやりとりで印象に残っていることは何ですか?

池川:瞬は隆造についていく立場だから、常に隆造の後ろにいることを意識すること。決して隆造の前に出ることのないように、とアドバイスされました。ポジション的には隆造より弱いだけど、いじめられっ子のトカゲ(戸梶元太)よりは強いので、隆造がいるときは隆造任せな態度で、トカゲといるときは強めの口調で話すなど意識して演じるといった話をたくさんしました。

田代:隆造は常に一番じゃなくちゃいけないので、走るシーンでも常に先頭になるように頑張りました。自転車で走るときも、トカゲを後ろに乗せた状態でも一番じゃなくちゃいけない。結構きついなって思ったので、「あんまり本気で走らないでね」と池川くんにお願いしたこともありました。二人乗りで一番になるのは難しいので(笑)。でもそういう話し合いもしやすい現場でした。

●走るシーンはたくさん登場します。池川さんは酸素ボンベを使い切るほど大変だったそうですね。

池川:最初は1本で足りると思っていたのですが、予想以上に走って(笑)。僕の体力も落ちていたのか、最初に準備してもらってたものよりも大きめのサイズ、パッと見使いきれないだろうってくらいの大きさの酸素ボンベを用意してもらって、めちゃくちゃ走りました。走っては吸って、走っては吸ってを繰り返して。ほぼ1日かけて撮影したシーンです。すごく頑張ったので、注目して欲しいです。

田代:僕は、走らずに列車の中から池川くんの走るところを見ていました(笑)。かなりキツそうだなって。池川くんの走りにも注目ですが、僕の号泣シーンでもあるので、ぜひ見届けて欲しいです。感極まって本当の涙も溢れ出てしまった感動のシーンです。

●大人キャストとの共演シーンはいかがでしたか?

池川:隆造の父親、村瀬真樹夫役の永瀬正敏さんと一緒に雨のシーンを撮影しました。すごく寒い中での撮影だったのですが、ご自身もとても寒いはずなのに、僕の体調を気遣ってくださって。「寒くない?大丈夫?」「タオルもう1枚もらう?」と優しく声をかけてくださいました。役は顔にヤケド跡がある強面ヤクザでしたが、ご本人は超がつくほど優しい方。でもカメラが回った瞬間に表情がガラッと変わって、圧倒されました。見て学ぶことがたくさんある時間でした。

田代:昨年の東京国際映画祭でレッドカーペットを歩いたのですが、別の作品で映画祭に参加していらっしゃった永瀬さんが、わざわざ僕のところに声をかけに来てくださいました。覚えていてくださったことも、またご挨拶できたこともすごくうれしかったです。池川くんも言っていたように、カメラが回り始めて役のスイッチがオンになるとき、その切り替わりの瞬間は本当にすごくて。間近で見てすごく刺激を受けたし、永瀬さんのようなお芝居ができるようになりたいとも思いました。役としては複雑な関係なのですが、永瀬さんの胸を借り、思いっきりぶつかるいい芝居ができたシーンがあるので、注目してほしいです。

●良い刺激を受けた現場だったようですが、新たな目標や挑戦したい役などは出てきましたか?
池川:撮影当時の僕は演技経験がほぼないに等しかったですが、アイドルだけじゃなく俳優業もしっかりやっていきたいという思いが芽生えました。演じることの楽しさを味わえたのが、今回の現場での一番の収穫です。共演シーンの多い田代くんの影響はすごく大きかったと思います。「金田一少年になりたい」というのが僕の今の目標です。いつになるかも、本当にやれるかどうかも全くわからないけれど、「金田一少年になること」を目指して、ドラマや映画、お芝居の経験を積んだ先で辿り着ければいいなと思っています。すごい方たちが歴代やってきた役なので、僕もそこに続きたいです!

田代:足立監督ならではの撮影、長回しはすごく刺激的でした。自転車に乗るシーンもそう。すごく長いシーンでも、カメラを止めずにワンカットで撮影していました。台本はあるけれど、セリフはあまり書いてなかったので、アドリブが出るのを待っている感じでした。今まではアドリブを求められることもほとんどなかったので、すごく新鮮でした。長回し、ちょっとハマりそうです(笑)。

池川:ミスしたらカメラを止めてしまうと思うとかなり緊張するけれど、長回しじゃないと味わえない緊張感もあるなと思いました。

●昭和と今と時代は違うけれど、通じると感じたメッセージやシーンはありますか?

池川:仲間の一人が転校するときに、手紙を渡すシーンがあります。今ならスマホでメールやメッセージを送るけれど、手紙って一番気持ちが伝わりやすい気がしています。友達を思う気持ちに違いはないけれど、今の時代でも直筆の手紙を送るのもいいんじゃないかなと思ったシーンです。

田代:何かを競って勝ちたいとか、少しでも上の立場に立ちたいとか、自分の友達や親友が新しい友達と仲良くすることに嫉妬するとか、子どもにしかないような思いや悩みは、今も昔も変わらない気がします。瞬や隆造たちのそんな姿に「分かる!」と共感する部分もあるんじゃないかなと思っています。

●映画をきっかけに仲良しになったそうですが、再共演したいという気持ちはありますか?

池川:あります。すぐに共演したい気持ちもあるけれど、大人になって成長した姿を見せ合いたい気持ちほうが強いです。僕は人と比べてしまいがちで、撮影中は田代くんを勝手にライバル視していましたが、今は、仲間としてともに成長していきたいという気持ちになりました。もちろんいい意味でのライバルであり続けたいとも思っています。

田代:池川くんが大好きなので、またいつか共演したいと思っています。チャンスがあればすぐにでもとも僕も思っていますが、せっかくなら「成長したね」と言い合える頃に再共演できるのが理想です。

●今回は仲間を演じましたが、次回は敵同士とかいかがですか? それこそ、ライバル役などは?

池川:仲良くしたいから、仲間がいいなぁ。でも、あえての敵役もいいかもしれません。仲がいいからこそ、敵として本気でぶつかり合える気もしています。

田代:敵同士もおもしろそう!信頼があるからこそ、敵同士の役をやってもカットがかかった瞬間にまたいい関係に戻れるはずだし。切り替えが上手になりたいと思っている二人なので、敵同士もいい勉強になるかもしれません。

●最後になりますが、作品の見どころとメッセージをお願いします!

池川:広い世代の方に楽しんでいただける映画です。若い世代の方には「こんな時代があったんだ」という気持ちで、この時代を過ごした方には懐かしさを感じながら楽しんでいただきたいです。

田代:登場人物それぞれがいろいろな悩みを抱えながら、もがき葛藤しながら成長していく物語です。大人も子どもも楽しめる映画です。映画から勇気を受け取ってもらえたらうれしいです。

■ストーリー
地方の町に暮らす平凡な小学生・瞬(池川侑希弥)。心配のタネは乳がんを患っている母の病状……ではなく、中学受験のためにムリヤリ学習塾に入れられそうなこと。望んでいるのは、仲間たちととにかく楽しく遊んでいたいだけなのに。瞬の親友たちは、犯罪歴のある父(永瀬正敏)を持つ隆造(田代輝)や、いじめを受けながらも映画監督になる夢を持つ西野(岩田奏)など、様々なバックボーンを抱えて苦悩しつつも懸命に明日を夢見る少年たち。それぞれの家庭環境や大人の都合、学校でのいじめや不良中学生からの呼び出しなど、抱えきれない問題が山積みだ。ある日、瞬は、いじめを見て見ぬ振りしてまう。卑怯で弱虫な正体がバレて友人たちとの関係はぎくしゃくし、母親の乳がんも再発、まるで罰が当たったかのような苦しい日々が始まる。大切な仲間と己の誇りを獲得するために、瞬は初めて死に物狂いになるのだった。

(C) 2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo