「みんなの声聞かせて!」-5つの光が交わった日~マジカル・パンチライン7周年ライブレポート

  by プレヤード  Tags :  

始まりは8年前だった。
2015年、フジテレビ発のアイドルグループであったアイドリング!!!が、9年間に渡る活動を終了した。
彼女たちのファンであり、ライブにもたびたび足を運んでいた私は、ちょっとした喪失感にとらわれていた。

基本的には、いろいろなアイドルグループのライブに行き、忙しく過ごしていたので、ひとつのグループがなくなったぐらいでは、生活に大きな変化はない。
ただ、数十人というメンバーを抱え、常にクオリティの高い楽曲とライブを提供してくれた彼女たちの存在は大きく、その思いを受け継ぐようなグループができないものかと、なんとなく思っていた。

そんな思いを抱えていた、2016年の1月。アイドリング!!!のメンバーであった佐藤麗奈が、新たなアイドルグループを立ち上げた。それが、マジカル・パンチライン(略称:マジパン)だった。

アイドルとしての佐藤麗奈の才能は、アイドリング!!!時代から十分わかっていたし、次々と発表されるメンバーも魅力的な子ばかりだった。
そして迎えた、3月26日、都内で行われたお披露目イベントで、初めて彼女たちに会った。
その日から、私の推しグループがひとつ増えた。

あれから7年、マジカル・パンチラインは、メンバーやコンセプトを変えながらも活動を続け、結成7周年を迎えた。
この7年間、すべてが順調だったわけではない。
リーダーであった佐藤を含め、5人が卒業、新メンバーの加入もあり、2021年1月から現在の5人体制となった。
現在は、最年長の沖口優奈が、リーダーとプロデューサーを兼務という形になっている。

また、当初メンバーは、「魔法使い見習い」という設定で、衣装も楽曲もそれに沿ったものが作られていた。しかし、プロデュースも担当していた佐藤の卒業や、レコード会社の移籍などを経て、現在は「世界中の毎日をキラキラハッピーにする!!」という意味の「キラハピ」を掲げ、活動をしている。

そんなマジカル・パンチラインが、2月18日、新宿ReNYで、7周年を記念したライブ「LiVE PARK 2023 7th Anniversary All Songs Show ~7転び→8起き☆~」を開催した。

当日は、マスクは着用ながらコールなどの声出し可ということで、いつになく会場も熱気を帯びていた。
実は、このような規模でのライブで声出しができるのは、彼女らにっとって約3年ぶりのことなのだ。

全曲披露、新曲もあり、もしかしてなにか新たな発表があるかも、といった期待もあり、「一体どんな時間になるのだろう」と思いながら、本番を迎えた。正直、想像がつかないことばかりだった。

開場とともに多くのファンが席を埋めていく。チケットもSOLD OUT。満員客席で今か今かと始まりを待つ。
会場のボルテージも高まる中、定刻の14時30分、SEがかかりメンバーが登場した。
そして始まるピアノのイントロ。

最年少の宇佐美空来がセンターに立つ。そして始まったのは『今日がまだ蒼くても』。
かつて、メンバー内でも圧倒的な歌唱力を誇った小山リーナのソロで始まる曲だ。
今日は宇佐美がそれを引き継ぎ、力強い第一声を放った。

曲中では、メンバーそれぞれのソロパートが続く。
改めて聴いてみると、5人のメンバーそれぞれのボーカルに独自の色が感じられる。
可愛らしい声、澄んだ声、パワフルな声、その色が混じり合って、5色の虹がかかっているかのようだ。

続いて始まったのは、『Melty Kiss』。
ポニーキャニオンからドリーミュージックに移籍して、最初のシングル曲。
この曲は、何と言ってもサビ後の「ヘイ!ヘイ!」というコールが聴きどころだ。
今まで声を出せずに、寂しい思いをしていた。それを取り返すとき。
期待を裏切らず、会場が一体となって「ヘイ!ヘイ!」の声が上がる。
そして、「また君に恋をする~」の後には「オレもー」の声。そうだった。一気にコロナ禍前の時間が戻ってきたようで嬉しくなる。

そして3曲目は『108煩悩BOMB』。
第一期時代のコンセプトで作られた曲。軽快なラップ調のリズムが楽しい。
この曲のくるくると変わる曲調に合わせて、山本花奈が次々と表情を変えていく。
こんなところが彼女の魅力だよな、と改めて思わされる。

山本花奈(やまもと はな)

山本がアイドルとなったのは、2019年、『ハコイリ♡ムスメ』というアイドルユニットのメンバーとしてだった。
当時13歳の中学2年生。愛らしいルックスと、どかか不思議なキャラクターが魅力で、これからどんな女の子に成長していくのかと期待が膨らんだ。
ライブに出るようになると、彼女自身、アイドルを楽しんでいる様子が伝わってきて、それがまた好ましかった。
しかし、彼女が活動を始めて1年後、ハコイリ♡ムスメは、メンバー全員卒業、活動終了となる。
彼女の中で、「アイドル」という存在は大きかったのだろう。その道を続けるために、マジカル・パンチラインの新メンバーオーディションに参加した。
配信の審査では、持ち前のガッツとユニークなトークを活かして人気を集め、見事マジカル・パンチラインのメンバーとなった。

続けて4曲目の『メロディーズ』。
今の彼女たちとも重なる歌詞。こういう素敵なメッセージソングが歌えるのも、7年間の積み重ねがあってこそだと思う。

5曲目の自己紹介ソング『マジ☆マジ☆ランデブー』が終わったところで、最初のMCに入る。
まずはそれぞれが自己紹介。
こちらも声が出せるので、コールアンドレスポンスが楽しめる。
ここでは、益田珠希が、髪を切りボブになったことを報告。
ファンにとっては大きなサプライズとなる。ライブ前に行われた公開リハーサル中も、フードを被って隠していたという徹底ぶりだ。

益田珠希(ますだ たまき)

実は彼女、当日のライブ前に「今日髪型どうしよう」というツイートをしていた。
当然ファンからは予想や希望のレスがあったが、これらはこの新髪型披露のためのフリだったのだ。
見事にしてやられた気分。でも、そんな茶目っ気が彼女の魅力のひとつだろう。

益田珠希は、2020年に開催された新メンバーオーデションを受けて、マジカル・パンチラインに加入した。
オーディションは、配信形式で行われたが、獲得ポイントでは1位になったのが彼女だった。
それだけ多くの人の心をつかんだのだ。
初めて生で彼女を見たとき、「こんな逸材がまだ眠っていたのか」と驚いた。
北国(新潟)出身らしい色白で美しい顔立ち、キュートな歌声、特典会でのファンサービスもバッチリ。
これまでも、アイドルグループのオーディションを受けて、かなりいいところまで勝ち進んでいたというが、マジパンファンからすれば、「マジパンに来てくれてよかった」という思いだ。

他のメンバーも、それぞれ自己紹介。そして、宇佐美空来からも発表がある。
「高校に合格しました!」との報に、会場からも拍手が起こる。
活動を続けながらの受験勉強は大変であったろう。アイドルとしての集大成とも言えるライブで、勉強の成果を発表したのは、本人にとっても嬉しいことだったと思う。

宇佐美空来(うさみ そら)

彼女も、山本、益田と同じオーディションで入った3期生だ。
私自身、配信審査をいろいろと見ていたとき、ウクレレを弾きながら歌っている姿を見て、聴き入ってしまった。当時まだ12歳の中学1年生だった。
既にウクレレシンガーとして活動実績があり、音楽の才能はピカ一だ。
彼女は、小学生の時怪我をして、動けない時期があった。その時に手にしたウクレレで、才能が花開いたのだ。
このエピソードからもわかるように、彼女には、逆境を武器にするような力がある。そして、常に上を目指し、自分の才能と闘っている。
そんな姿を見ると、応援せずにはいられなぃ。彼女にはたくさんの可能性が秘められているのだ。

最後に沖口優奈が、「25歳、沖口優奈です」と自己紹介。すると、すかさず吉澤悠華が、「アラサー!」とツッコミを入れる。もはやお約束のようになっているが、これもメンバー間の信頼があってのことだろう。

吉澤悠華(よしざわ はるか)

この関係を見てもわかるが、リーダー兼プロデューサーの沖口と、新メンバー3人の関係をうまくつないでいるのが吉澤の存在だと思う。
彼女は、2019年の2月にマジカル・パンチラインのメンバーになった。一緒に加入した吉田優良里は、2021年にグループを卒業、つまり吉澤はただひとりの2期生というわけだ。
ふわっとした可愛らしさと話し方から、女の子らしい性格を想像しがちだが、実は芯が強い。物怖じせずに発言するところなどは、ソロで出演した『ワイドナショー』などでも、遺憾なくなく発揮されている。
また、ステージ衣装をデザインするなどの才能も持ち合わせている他、ソロでプリクラ機のモデルも務めている。

自己紹介の後は、メドレーで、主にドリーミュージックに移ってからの曲をパフォーマンスする。
『ハルイロ』『渚のサーフライダー』『くっりっすっまっすっ』など、季節を感じさせる曲が続く。まるで、聴きながらマジパンとの1年を振り返っているようだ。

このメドレーの時間は、静止画撮影が可となる。これがファンにとってはとても嬉しいサービスなのだ。
ステージの様子を、自分だけの思い出として持ち帰れる。スマホの人もいれば、望遠レンズを構えている人もいる。
みな思い思いに、この瞬間を楽しんでいるようだ。

『Magical Zombie Night~イタズラしちゃうぞ♡~』が終わったところで、メドレーは終了。続いては、少し懐かしい『マジカル・ジャーニー・ツアー』。
これも、初期のマジパンを象徴する一曲だ。あの頃の魔法設定を思いながら懐かしく聴いた。

そして始まった『私が私を燃やす理由』。
なにかから飛び出したい、殻を破りたい、そんな苦しさも内包した曲。激しいダンスとともに、メンバーは髪を振り乱して歌う。熱いパッションを感じる。

続いての『ミカガミ・ラビリンス』で、会場を怪しい雰囲気に包んだ後、『カルミア』『Spotlight』とポップな曲が続く。
初期の曲と近年の曲では、コンセプトがまるで違うのに、それらをうまく溶け込ませるのがこのグループの奥の深さのような気がする。
『Spotlight』の最後では、全員が真ん中に固まってポーズをとる振りがあるのだが、沖口が手で「7」を作る。7周年の喜びを、随所に感じさせる演出だ。

ここで2回目のMCに入る。
沖口が、「最初のメドレーでは、ドリーミュージック時代の曲をやったが、次はポニーキャニオン時代の曲をやります」と宣言して、懐かしい曲のメドレーへ。
『那由多不可思議ソウルライブツイスター』に始まり、マーチ調の『パレードは続く』、「ハイ!ハイ!」という掛け声が楽しい『小悪魔Lesson 1・2・3♪』などへと続く。

メドレーからの流れで『謎から謎めくMystery』へ。
サビの部分では、客席も、メンバーに合わせて右を向いたり左を向いたりと、振りをコピーしている。
一緒に旅をしているような気分になれて楽しい。

続いては、昨年の夏にリリースされた、『キラッとサマラブ』、『あいわなびー』。
いきなり今に引き戻された気持ちになる。そして、このあたりの曲は、現体制で長くやっているので、安定感を感じる。

ここでステージ上にイスが出され、メンバーはそこに座って歌い出す。
まずは『ひとかけら』。未来への希望を歌った美しい曲。今、大きな未来を見据えながら歌う彼女たちの心に、去来するのはどんな風景だろう。
客席ではみんなが椅子に座り、それぞれの色のペンライトが振られる。
そして、続けてももう一曲、『ずっと…』。

じっくりと聴いたところで、曲の終わりに客席も立ち上がる。
『リインカーネーション』『やみー』『手のひらがえし』と、新旧織り交ぜて披露していく。
そして、『万理一空Rising Fire!』で会場の盛り上がりは最高潮に達する。
久しぶりの「ガチ恋口上」も聞こえる。

そして次に流れたイントロは、『名もなきヒーロー』。
ここでこの曲はエモい。エモすぎる。
最後の「ラララ」の部分で、沖口が会場にマイクを向ける。
そうだ、もう一緒に歌っていいんだ。
会場が一つになって、メンバーと一緒に歌う。

そうだよ、これがマジパンのライブなんだよ。
心が打ち震える、そして次の『もう一度』。
サビの部分では、全員で天に向かって拳を上げる。
宇佐美の瞳には涙が浮かんでいる。

「Wow wow Wow wow」の部分で沖口が会場に向けて叫ぶ。「みんなの声聞かせて!」
それに応えるように会場も精一杯の声で歌う。
そしてラスト。
「もう一度!もう一度!もう一度!」
ありったけの思いを込めた沖口のシャウトが、会場に響き渡った。

沖口優奈(おきぐち ゆうな)

沖口優奈は、2011年、アイドリング!!!5期生オーディションを受けている。最終選考まで進んだが、残念ながら合格するには至らなかった。
それから4年後、沖口の後にアイドリング!!!メンバーとなっていた佐藤麗奈とともに、マジカル・パンチラインの初期メンバーになった。当時沖口は18歳。最近のアイドルとしては、遅いデビューであった。
マジパンに入ってからは、持ち前のトーク力と、何事にもめげない根性で、グループを牽引し、リーダー兼プロデューサーを務めるまでになった。

彼女は一体、今まで何度「もう一度」という思いに駆られただろう。
アイドリング!!!オーディションに落ちたとき。
マジパンのメンバーとなり、佐藤麗奈がいなくなったとき。
ポニーキャニオンとの契約が切れ、解散かと思われたとき。
自分がプロデューサーとなり、新しいマジパンが進みだしたとき。
「もう一度始める」「もう一度頑張る」、そんな彼女だからこそ、この曲の思いを伝えることができる。
最初から現在まで、マジパンを全て見てきたのは彼女だけだ。マジパンの歩みは、そのまま彼女の成長の歴史だと言っていい。全身全霊で歌う彼女を見て、本当に感謝の気持ちしか出てこなかった。

そして、本編最後は『ぱーりーないと!!』。
この曲は、アイドルグループではおなじみの「タオル曲」。
みな、それそれの推しメンバーのタオルを掲げ、曲に合わせて回す。
気持ちがいい。最高に気持ちがいい。
これこそがマジカル・パンチラインのライブの楽しさだと実感する。

晴れやかな表情でメンバーが袖に下がる。
そして、会場からはアンコールの声が上がる。
「アンコール!アンコール!」
こうして声に出してアンコールをするのは久しぶりだ。
コロナ禍の途中に引退したアイドルや、解散したグループはたくさんある。
マジパンだって、活動が制限され、苦しいことはあったのだろう。
でも、こうしてまたみんなで一緒に歌うことができるようになった。
その喜びを噛み締めながらコールをした。

やがて、アンコールに応え、メンバーが登場。
おそろいのTシャツ姿だ。
そして始まる『ONE』。
この曲は、マジカル・パンチラインが、ドリーミュージックに移籍し、最初に発表した曲だった。
新しい始まりを強く意識させる歌詞。
7周年を迎えて、新たに始まるという決意表明のようだ。
この曲に続いたのは、『Magiかよ!?BiliBili☆パンチライン』。
こちらは、正真正銘、マジパンが始まったときの曲。
こうして、「始まりの曲」をつなげて披露したわけだ。
古くからのファンとしては嬉しい構成だろう。
自己紹介ソングだが、こちらは新しいメンバーのバージョンになっている。

そして、事前の予告通り、新曲の発表。
披露された『新しいw』は、タイトル通り新しさを感じるものの、しかし、しっかりとマジパンらしい可愛らしさもある佳曲であった。

アンコール4曲目は『これから、私!』そして『Shiny Shoes』。
こうして、全43曲、2時間半を越えるライブが終わった。
ここまで、歌い続けたメンバーの体力と気力はすごかった。そして、みんなやりきったといういい表情をしていた。

最後に沖口が口を開く。
「これまでもどかしい思いをすることもあった。それでも、一歩ずつでも進めてよかった」
メンバーの紹介で、会場の後ろを見ると、そこには卒業したメンバーの浅野杏奈と小山リーナの姿があった。
二人が立ち上がって、客席に頭を下げる。卒業していったメンバーにとっても、マジカル・パンチラインは大切な場所なのだなという思いで見つめた。

そして、ここで発表があるとのこと。
もしや、誰かの卒業では? そんな不安な気持ちが一瞬よぎる。
しかし、沖口の口から告知されたのは、「2024年2月24日Zepp Shinjukuでワンマンライブ決定」とのこと。
Zepp Shinjukuは、新宿歌舞伎町に作られる、1,500人規模のライブハウスだ。Zeppでのライブは、マジパンの目標のひとつでもあった。まだここでは満足しない。Zepp完売を目指す、との力強い言葉を聞いた。

最後は、全員で記念撮影をし、7周年ライブは幕を閉じた。
Zeppでのライブ開催決定は、本当に嬉しい。何よりも、1年後まで活動を続ける、というメンバーとの約束だ。
終了後の特典会も盛況で、その列は2時間経っても途切れることはなかった。

素晴らしかった。とにかく素晴らしかったんだ。
そして、そんなライブを見せてくれたメンバーを誇らしく思った。
私の推してるグループは、こんなに可愛くて、かっこよくて、パワーがあるんだぜって、みんなに言って回りたい気分だった。
7年間、マジパンは本当にいろんな景色を見せてくれた。
それぞれのメンバーにとって、それぞれの7年間があったはずだ。そして今日、それぞれの光が交わった。眩しいくらいの光景だった。

そりゃあ、世の中思った通りになんていかない。
でも、その時々の最高を作っていけたら、それはきっと素敵な世界ができような気がする。マジパンを見ていると、それを強く感じる。
今までの7年間も、今日のライブも、本当にありがとう。
そして、8年目もよろしく。

■マジカル・パンチライン公式サイト:http://magipun.com/
 公式twitter:https://twitter.com/MAGiPUNofficial

※画像はすべて筆者撮影

アイドル&美少女系ライター。 アイドルファン歴ももう30年。新旧問わずアイドルの魅力や素晴らしさを伝えていければと思っています。 モットーは「生涯一アイドルヲタ」「人生で大切なことはアイドルから学んだ」。 夢は、世の中の「アイドル」と呼ばれる人たち全てが幸せになることです。

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