前田敦子インタビュー 藤ヶ谷太輔主演の『そして僕は途方に暮れる』は、「みんなが共感する部分を寄せ集めてひとりにした主人公。すごいのができましたよね(笑)」

  by ときたたかし  Tags :  

2018年にシアターコクーンで上演され、各所より絶賛を浴びたオリジナルの舞台を、脚本・監督・三浦大輔、主演・藤ヶ谷太輔の再タッグで映画化が実現した『そして僕は途方に暮れる』が、現在大ヒット公開中です。

藤ヶ谷さん演じる主人公の平凡なフリーター・菅原裕一が、ほんの些細なことから恋人、親友、先輩や後輩、家族…と、あらゆる人間関係を断ち切っていく、人生を賭けた逃避劇。

その藤ヶ谷さん演じる「逃げ続ける」主人公・裕一と5年間同棲している彼女・里美役の前田敦子さんに本作の魅力、近況などを聞きました。

■公式サイト:https://happinet-phantom.com/soshiboku/ [リンク]

●映画版はエンターテイメント感が増していて、先が気になる展開になっていると思いました。

そうですね。わたしも観ていて、どんどんスターが出てくると思って(笑)。お父さんかお母さんあたりになってくると、本当にすごすぎて面白かったですね。次はどんな人が出てくるんだろうって楽しめました!

●<共感と反感>が本作のキャッチコピーですが、主人公についてどう思いましたか?

人間誰もが持っている逃げたいなという瞬間を、全部集めたような主人公になっていますよね。すごく面白くて、モンスターみたいになっていますが(笑)、人間がそれぞれ持っている弱い部分がつまっていて、自分も絶対当てはまっちゃうなと思うところもあるんです。だから、彼のことを一方的に攻められはしないですよね。

●自分自身と必ずリンクする場面はありますよね。

なので完全に自分を棚に上げて本作を観られるのかと言うと、違うなと思うんです。どのパターンかで逃げたくなることが合致する感じのシチュエーションがたくさんあります。みんなが共感する部分を寄せ集めてひとりにした主人公なんです。すごいのができましたよね(笑)。

●ちなみに、ご自身は逃げ出したいと思うことは?

スマホから遠退きたいことは、要所要所でありますかね(笑)。

●去年の「ガジェット通信」の別のインタビューでも、バランスが大事みたいなことは言われていましたよね。

自分に無理なこといつまでも続けると、そのうち崩れちゃうと思うんです。人に迷惑かけない範囲で、自分らしくいられる状態を作っていきたいです。

●今回の里美役は、主人公が逃げ出す最初のきっかけを作る役ですが、どう理解して演じたのでしょうか?

彼女はとても優しい人なのですが、それでいて逃げて行くきっかけを作らなければならなかったので、すごく難しいなと思いました。でもたぶん、ふたりとも根は優しくて、いい人なんですよね。だから言いたいことも言えないまま、気づいたら5年経っていた感じなのかなと、そう理解しました。腐れ縁みたいな。向き合わないで長く続けているような人たちです。

●最近では出演映画がたくさん公開され、仕事が好調だと思いますが、現状をどう受け止めていますか?

自分の人生の中で、仕事を切り離せないんです。それくらい自分には必要なもので、働くことによって自分のバランスが取れているので、すべてがいい感じになっているんです。

いろいろな仕事を日々していると、進んでいく感じが楽しいんですよね。落ち込んだり悩んだりしても、あまり立ち止まりたくないタイプなんです。考えて止まることが苦手なので、進み続けていく仕事があることで人生を楽しめている感じはします。

●止まっていたくないという意味なんですね。

そうなんですよね。子どもを見ていてもそうじゃないですか。子育てしていて、次から次にやりたいことが見つかり、どんどんチャレンジしていく姿を見ていると、いいなと思うんです。体力の限界が来たら変わると思いますが、元気な限りはそうでありたいなと思っています。

●今年は新しい流れが生まれそうと前回インタビューで言われていましたが、どういう一年になりそうですか?

去年は自分の軸を作ろうと、いろいろな仕事をやろうと思っていましたし、独立して2年という大事な時期だなと思っていました。今年は映像のお仕事が集中する年になるのかなと思っているので、自分の中では新鮮な気持ちでいられる2023年になりそうな気がしています。もちろん自分だけでなく、観ている方も新鮮に映る自分でいたいなと思っています、

●今日はありがとうございました!

■ストーリー

自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年同棲している恋人・里美(前田敦子)と、些細なことで言い合いになり、話し合うことから逃げ、家を飛び出してしまう。その夜から、親友・伸二(中尾明慶)、バイト先の先輩・田村(毎熊克哉)や大学の後輩・加藤(野村周平)、姉・香(香里奈)のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、ついには、母・智子(原田美枝子)が1人で暮らす北海道・苫小牧の実家へ辿り着く。だが、母ともなぜか気まずくなり、雪降る街へ。行き場を無くし、途方に暮れる裕一は最果ての地で、思いがけず、かつて家族から逃げていった父・浩二(豊川悦司)と10年ぶりに再会する。「俺の家に来るか?」、父の誘いを受けた裕一は、ついにスマホの電源を切ってすべての人間関係を断つのだが――。

大ヒット公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C) 2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo