7月24日、女優の吉井怜さんが、デビュー15周年記念写真集『ここから』発売を記念し、福家書店新宿サブナード店で握手会を行った。
1996年、14歳から芸能活動をはじめた吉井さんは、1998年フジテレビの深夜ドラマ『美少女H』で、女優デビューした。これから世に出ていく若手女優を集めて、毎週単発のドラマを放送するという番組で、中でも『美少女H2』の第二話として放送された『Please Mr.tomorrow』は印象的な回だった。
まみ、かすみ、れい(番組では出演者の芸名がそのまま役名として使われた。他の二人は黒坂真美さんと中根かすみさん。)、3年H組の同級生三人は、ある夜“この世の終わりを生き延びるため”旅に出かける。旅の目的は、夜明けまでに『Mr.tomorrow』見つけること。
何者かもわからないMr.tomorrowを求めて闇の中をさまよう三人の姿は、まるで、女優への道を歩き出した彼女たちを暗喩しているようで、最後に『Mr.tomorrow』を見つけるシーンでは、彼女たち自身の中にそれぞれの明日を見出したような感覚を覚えた。
しかし、彼女たちを待ち受けていたのは、明るい明日ばかりではなかった。
このドラマから一年後、吉井怜さんは病魔に倒れる。 急性骨髄性白血病を発症したのだ。
当時彼女は17歳。その歳で病と向き合った彼女の思いはいくばくであったろう。
私たちファンは、彼女がどんな思いで病と闘っているのか、それを思いながら回復を祈るしかできなかった。
何度か復帰の報が流れたが、結局彼女が戻ってくるまでに三年の歳月を要した。
2003年、成人の日のスペシャルドラマで女優復帰。
三年の年月は彼女を幾分大人っぽくしていたけれど、ころころとした笑顔と幼い声は昔のままで、「吉井怜さんが戻ってきたんだ」と実感できた。
復帰後、女優として実績を積み、2006年、映画『LOVE MY LIFE』では同性愛者の主人公『いちこ』を演じた。
ラストシーン、“恋人”役を演じた今宿麻美さんと愛し合う彼女の体はとてもきれいだった。
この体にたくさんの針が刺されたのかと思うと胸が痛んだが、しかし、彼女が生きていてくれたことを改めて実感した。
今回の写真集でも、彼女はそのまぶしいような体を惜しげもなく披露。ところどころに挟み込まれるコメントからは、15年間仕事を続けられたこと、そして、今生きていられることへの感謝の念が伝わってくる。そしてそれらの思いこそが、吉井さんが輝き続ける原点であるように感じる。
握手会の前、インタビューに答える吉井さんの声が衝立越しに聞こえた。その声は明るく、楽しげだった。
握手会が始まり、自分の番が回ってきた。手を握ると、彼女のぬくもりが伝わってきた。嬉しかった。
※画像はホリエージェンシー、吉井怜さん公式ページより