フランスで同性間での結婚が可能に
2013年2月2日、フランス国民議会は新法案「みんなのための結婚(原語Mariage pour tous)」の第一条「結婚とは2名の異性間もしくは同性間で行われる契約である」を可決した。
249対97の賛成多数による可決。議長が投票結果を読み上げた瞬間、歓声と拍手が巻き起こった。今後の議会では主に、養子の親権が争点となる。現状フランスでは、同性カップルの場合、養子の親権を片親にしか認めていない。
同法案は、現フランス大統領フランソワ・オランド氏が大統領選出馬時に公約として掲げた中の一つ「結婚の平等」を具体化したもの。2012年5月に51%超の得票率で当選して以来、フランス国内では同法案に対する活発な議論が行われてきた。世論調査では、1月26日時点で63%の国民が同性婚を支持。特に18-24歳では、同性婚支持率は85%にのぼる(ル・モンド紙調べ)。
賛成派と反対派によるデモ合戦の様相
同法案の同性婚条項を巡っては、フランス各地で賛成派と反対派の双方がデモを繰り広げてきた。
反対派は女性タレントのフリジット・バルジョー氏をアイコンに、主に「結婚は神が異性間のものと定めた聖なるもの」とする宗教上の信念と、「同性婚は子供に悪影響を及ぼす」とする教育上の懸念を訴えてきた。特に1月13日にパリで行われた「みんなのためのデモ」には、警察発表で34万人、主催者発表で80万人が参加。
“一人のパパ、一人のママ。私たちは子どもに嘘をつかない”
“聖なる結婚に触れるな”
といったプラカードを手に、エッフェル塔を目指してデモ行進が行われた。これによりエッフェル塔前広場の芝生が踏み荒らされたため、パリ市長は内務省に100,000ユーロ(約1,200万円)の賠償を請求。オランド大統領は「反対派の意見を尊重する。しかし、デモは議論を妨げるものではない」との声明を出した。
賛成派は「平等」をキーワードに、主に「すべてのカップルに平等な権利を」と訴えた。特に、反対派デモの目の前で、女子学生2名が抱き合いキスをした「マルセイユの口づけ(原語Le baiser de Marseille)」は国内外のメディアで大きな話題となった。女子学生らは「自分たちはレズビアンではない上に友人同士だが、愛する自由を表現するためにキスした」と主張。最大の賛成派デモは1月27日にパリで行われた「平等のためのデモ」で、警察発表で12万5000人、主催者発表で40万人が参加。
“愛する自由、平等な権利、すべての人への博愛”
“私は同性愛者じゃないけど、自分の二人のパパが大好き”
といったプラカードを手に、バスチーユを目指してデモ行進が行われた。以前ゲイの政治家であることを理由に暴漢に刺されたパリ市長、ベルトラン・ドラノエ氏も参加者とともに行進。また「マルセイユの口づけ」になぞらえてか、同性愛者ではない国会議員同士がキスをするパフォーマンスで注目を集めた。
同性婚法制化が事実上確定したあとでもデモ合戦は止まず、すでに3月24日に次回反対派デモが企画されている。フランスでは以前にも、女性の投票権・死刑廃止・人工妊娠中絶の合法化などといったトピックをめぐって大規模デモが発生している。
また、デモのみならずネット上でも議論が続き、2月2日付フランス語Twitterでは「死んだゲイ(#UnGayMort)」「同性愛嫌悪に対抗する同性愛者と異性愛者(#GaysEtHeterosContreLHomophobie)」といったハッシュタグがトレンド入り。ラジオやテレビでも連日の討論が行われている。日本のマスメディアは2月3日現在大きく報じていないものの、日本語Twitterでは同条項可決を報じるツイートが6,000RTを越した。
国民議会ではひとまずの決着を得たものの、国民の議論はまだまだ続く様子のフランス。奇しくも2月2日、パリでは、性の多様性の象徴である虹がかかった。養子の親権をめぐる次回決議投票は、2月12日に予定されている。
スクリーンショット元(掲載順):
AFP.com – Le baiser de Marseille – Making of
http://blogs.afp.com/makingof/?post/2012/10/24/Le-baiser-de-Marseille
LePoint.fr – Frigide Barjot reçue par Hollande : “Nous l’avons ébranlé”
http://www.lepoint.fr/societe/frigide-barjot-recue-par-hollande-nous-l-avons-ebranle-25-01-2013-1620369_23.php