アイドルバラエティの理想形 乃木坂46・弓木奈於が塗り替えるアイドル番組の歴史

  by 田中周作  Tags :  

 
土曜よる10時といえば、地上波ではTBS系で『情報7DAYS ニュースキャスター』、日本テレビ系で「土曜ドラマ」、フジテレビ系では『IPPONグランプリ』などが放送される「土曜プレミアム」といった特番枠だ。

そんな激戦区にあって、NTTドコモが展開する映像配信サービス「ひかりTV」で配信されている番組が『乃木坂46弓木奈於とやみつきちゃん』だ。同番組は、乃木坂46・弓木奈於の初の冠番組。毎回さまざまなことに「やみつこう」という趣旨のもと、各分野の専門家が、弓木と乃木坂メンバーにその魅力を伝授するというものだ。そもそも、ラジオ番組はともかく、現在の乃木坂メンバーで、こうした映像系のプログラムに自分の名前を冠しているメンバーはそれほど多くない。

同番組はもともと、2019年から2021年まで、乃木坂の元メンバー山崎怜奈が担当していた枠だった。それを引き継ぐ形で、同21年6月から始まったものだが、この番組で特筆すべきなのは、弓木の立ち位置だ。大概アイドルバラエティというと、その看板はアイドルではあるものの、サポート役として登場する芸人が“裏回し”とも言うべき役割を担う。

だが弓木の場合は芸人と対等に渡り合い、まさに自分の番組にしてしまう。つまりは、まぎれもなくMC、マスターオブセレモニーであり、また番組を楽しむゲームプレイヤーでもある。

9月3日のオンエアではネットが「弓木 ざわわ」という言葉で沸いていた。この日は「怪談にやみつこう」ということで、占い師でもあり、また様々な怪談を披露することで知られる島田秀平が講師として登場した。

そこで彼が伝授した怖がらせるテクニックが、「効果音は絶対3回」というもの。その上で、例として「後ろから急にコツン、コツン、コツン……」と、“コツン”を次第に強めにしていった。このアドバイスを受けて進行役・かが屋の賀屋壮也から「じゃあ弓木さん、ちょっとやってみます?」と振られると、何と彼女は「ざわわ、ざわわ、ざわわ……」と、森山良子の『さとうきび畑』の出だしを歌い出したのだ。島田から「お前イジってるよな!」とツッコまれたのは言うまでもない。

9月17日オンエアでは、店頭によく置いてある「手書きPOPにやみつこう」ということで、先輩の鈴木絢音と挑戦。そこでは、手書きPOPライター・はりまりょうの指導のもと、弓木が初めて選抜メンバーになった30枚目シングル『好きというのはロックだぜ!』のPOPを描くことになったのだが、彼女が描いたのは、1期生から5期生まで、メンバー全員の可愛らしい似顔絵が描かれた、グループ愛に満ちたものだった。その真ん中には「この夏、乃木坂46をもっと好きになる!」と書かれていた。

そうしたバラエティにおける素質や人柄は、毎週金曜日の夜にアルコ&ピースと出演しているラジオ『沈黙の金曜日』(FM FUJI)でも存分に堪能できるが、いずれにしても彼女が乃木坂で果たす功績は、単なる「アイドル好き」がスライドして弓木のファンになるのではなく、純粋な「ラジオリスナー」や「バラエティ好き」が「乃木坂のファン」になるという、まったく別の層から“新規”を持ってくる力があるということだろう。

来週15日配信の『やみつきちゃん』は、弓木自身が企画・構成・演出するという異色のプロデュース回になるという。果たしてどんな内容なのか、これから大いに楽しみだ。

ライター。